【企業売却の舞台裏】 M&Aプロセスの詳細とその難しさ
企業評価と企業概要書の作成
⚫︎資料の準備
M&Aを行うためにはいろいろな情報を集めて資料の準備をします。
会社の詳細な概要や財務状況、人材についての情報、会社が所有する建物や設備などの情報など、非常に多くの情報を集めます。
これには多くの時間と労力が必要でした。
⚫︎会社のプロフィール作成(企業概要書)
これらの情報を用いて、企業の財務状況や成長予測、経営計画などについての詳細なレポート、すなわち「企業プロフィール」を作成します。
これは買い手に対して、企業の全体像を理解してもらうための重要な資料となります。専門家との繰り返しのディスカッションが必要となります。
⚫︎企業評価と株価の算定
次に、企業の価値を判断する「企業評価」が行われ、その結果が「株価算定」に反映されます。
上場企業の株価は市場の動向によって日々変動しますが、非上場の我が社のような場合、株価は企業評価に基づいて決定されます。
⚫︎適切な買い手の選定
M&Aのマッチングは、最も重要なプロセスです。仲介者は売り手と買い手双方が利益を得られるようなシナジーを生み出すマッチングを目指します。
特に、特殊な業務を持つ企業の場合、適切なマッチングを見つけるには相応の時間と労力が必要となります。
⚫︎マッチングプロセスの進行
意外なことに、当初は受け手が少ないと予想していた当社の特殊な事業に対して、思っていた以上に多くの候補が存在していました。
これらの候補企業は、M&A専門企業やM&A情報ネットワークに登録されており、新しい案件が生まれるとリストに掲載されます。
しかし、当社からは一部の企業をNGと判断しました。これらの企業との取引は適切でないと考えられたからです。
その後、買い手候補が興味を示すと、秘密保持契約に署名され、その後に当社の企業概要書が提供されました。
⚫︎適切な買い手の選定が必要
企業成長と従業員の福祉を考えると、どの企業でも良いわけではありませんでした。
重要なのは、双方に利益をもたらす「シナジー効果」をもたらす事ができる企業とのマッチングでした。
私が理想的だと考えるシナジー効果をもたらす可能性のある企業は以下の特性を持つものでした。
これらの企業には、企業概要書を基に詳細な提案を行い、最良のマッチングを実現できるように努力しました。
それにより、最適なマッチングを見つけるまでにはかなりの時間を要しました。
⚫︎進展の難しさ
その後も、いくつかの企業が興味を示し、実際に当社を訪問する企業も存在しました。しかしその後の進展がなく、状況は停滞していました。
「これ以上進まないのではないか」という不安な日々を過ごしました。
このような状況では、新たなアプローチや戦略を模索し、更なる努力を続けることが求められました。
情報管理の徹底
選考の段階では、買い手候補企業が秘密保持契約に同意した後で企業概要書が提供されます。その情報は当然ながら厳格な管理が必要ですが、それでも情報漏えいのリスクを考慮しておく必要があります。
仲介業者は情報の取り扱いに対しては慎重でしょうが、私個人の見解としては、そのリスクを十分に認識し、適切な対策を取っておくべきだと思います。取引先から「うわさを聞いたけど…」と問い合わせが来る可能性もあります。
そういった事態に対応するため、事前に考えられる対策を立てておくことが重要です。
トップ面談
大手企業とのトップ面談の機会がついに訪れました。
これは、約1年半の期間を経て、数え切れないほどの打ち合わせと、会社データの詳細な審査、そして書類審査を経てのものでした。
面談は会計事務所で行われ、初めに我が社の現場を視察しました。
相手側は三人、我々側は私一人。極秘に行動していたため、私の妻を連れて行くことを避けました。これは、私たち夫婦が常に会社にいるような体制をとっていたからです。
会議は自己紹介から始まり、事業の詳細、製品の特徴、取引先の情報などを紹介しました。これら全てを通じて約30分ほどで終了しました。
面談は、まるで縁談のような緊張感と期待感に満ちた雰囲気の中で進行し、それは一生に一度だけの非常に特別な経験となりました。