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もしもおでんが平成ギャルゲーの攻略キャラだったら

石油ストーブの匂いが俺の胸を締め付けて仕方がないので、おでんが平成ギャルゲーの登場人物だった場合のキャラ設定を考えてみました。ご覧ください。


ここは私立コンビニエンス学園レジ前校。
転校生の箸田割雄(はしだわりお)はそこで個性豊かなおでん美少女たちと出会う。時には困難に立ち向かい、時には恋の予感に胸を踊らせ、そんな学園生活は騒がしくも切なく過ぎ去っていく_____
寒空に染み渡るような、だし香る青春群像劇。


【登場人物】


たまご

本作のパッケージヒロイン。ドジっ子の不思議ちゃん。「ほわわ〜」「〇〇なのです!」が口癖。気がつくといつも空を見上げている。
「お空から梯子が降りて、いつか誰かがわたしを迎えに来てくれるのです」

大根

女子バレー部の3年生。よく男子が練習を覗きに来る。かわいくて小さい子が大好きで、お気に入りはたまごとウインナー。
「あら、お姉ちゃんって呼んでくれないの?」

こんぶ

大和撫子を絵に描いたような黒髪の和服美人。料理研究会に所属しており、得意料理は味噌汁。大根の”ある部分”をちらちらと見ていることがある。
「やはり殿方はあれくらいあった方が……い、いえ……なんでもございません……」

もち巾着

常に宇宙服を着ている自称宇宙人。その正体を知ろうとがんもどきがいつも尾行しているが、神出鬼没でいつの間にか見失っている。学園有数の変人として知られているものの、素顔は人間離れした美少女。目のハイライトが星。素顔が明かされたときのスチルがガビガビの画質で転載されている(オタクがはてなブログに貼ったやつ)。
「メーデー メーデー 聞こえて いますか 
……あれ、奇遇だねぇ!キミも眠れないのぉ?」

はんぺん

保健委員長の3年生。柔らかい口調と温和な見た目から、生徒たちに聖母のように慕われている。面倒見がいい性格で雑用を押し付けられやすく、そんな自分を変えたいと密かに思っている。最近はストレス発散にと始めたコスプレにはまっているようだ。
「失望……したよね?そうよ。私ね、みんなが思っているほどいい子じゃ……ないの」

ウインナー

八重歯がチャームポイントの小柄なバスケ部1年生。お父さんっ子で将来の夢は重機の運転手。
よく大根にハグされ窒息しかけている。
R18シーンはバッドエンド√ でしか見られないが、シナリオは母親との確執が描かれ重め。
「ちっ、ちっさいってゆーなー!!」

牛すじ

小麦色の肌が印象的な陸上部の3年生。思春期と共に大きくなっていった胸がコンプレックスで、普段はサラシで潰している。家が貧しく、学費に充てるために牛乳配達のバイトをしている。さばさばした男口調で話すが、実は少女マンガが好きで乙女チックな恋愛に憧れている。
「わ、わりぃかよ!アタシだって白馬の王子様に憧れてもいいじゃねえか!」

さつま揚げ

太眉がチャーミングな空手道部の1年生。とあることがきっかけで主人公を「師匠」と呼び慕うようになる。恋愛に疎く、その方面の話になると赤面して黙り込んでしまう。
「ジブン、昔から小さくて体が弱くて……だからいつか師匠みたいに強くなりたいッス!!」

ロールキャベツ

ヨーロッパから転校してきた1年生。チア部・マンガ研究会所属。日本に来た理由は「Kawaii制服美少女に会えるから」。ぎんなんの布教により今はニチアサアニメに熱中している。スキンシップが多く誰にでも明るく接するため男子人気が高いが、一部のチア部員にはよく思われていない。
「スマイルプリ◯ュア最and高デース!!」

ぎんなん

マンガ研究会所属の2年生。知り合った人に変なあだ名をつけたり、やけに口数が多かったりとフランクな印象を受けるが、実は他者に壁を作りがちで自分の本心やありのままの姿を見せたがらない。最近はニチアサアニメの主題歌をきっかけにデビューした謎のアイドル、ちくわを推している。ロールキャベツに同人イベントの売り子をさせようと画策中。
「ところでキャベちゃん、コミケって知ってる?」

ちくわ

無名ながら圧倒的な歌唱力でデビューした正体不明のアイドル。

ちくわぶ

厚底の眼鏡をかけており、クラスメイトにも名前を覚えられていないような存在感の薄い地味な生徒。放課後にひょんなことから音楽室の前を通りがかった主人公は、漏れ聞こえてきた透き通るような歌声に惹かれ中を覗く。するとそこには_______
「あなたを私のマネージャーに任命するわ。いい?私の秘密を漏らしたら、殺すから」

しらたき

蒟蒻芋一族の令嬢であり、こんにゃくの姉。繊細で美しい銀髪が特徴的。病弱だが芯の強さがあり、学園の皆に敬愛されている。ストーリー終盤で実は3年前に死亡しており、今は人々の記憶の残滓として存在しているに過ぎない幻影であることが明かされる。自身の存在がこんにゃくの成長を妨げていることに気づき、少しずつ皆の記憶から消えていくことを選ぶ。
「ああ泣かないで、私のこんにゃく。これは決まっていたことなのよ。そう、3年前のあの日から_____ 」

こんにゃく

しらたきの妹。幼い頃からどこへ行くにもしらたきのそばを離れない内気な性格。しらたきが消えてしまったのは自分のせいなのではないかと葛藤する。しらたき√ クリア後に攻略対象になる。自分のほかに唯一しらたきのことを覚えており、しらたきに特別な感情を向けられていた主人公に嫉妬を露わにする。
「ああ、お姉様……お姉様……!!」

厚揚げ

いつからか校庭にテントを張って住み着いていたホームレス。アル中で身体がデカくいつもヨレヨレの薄着を着ている。主人公を「少年」と呼び、何かにつけて食料をせびる。エロすぎている。
「やぁ少年、また来てくれたのかい?おっ、いいもの持ってるじゃないか。まあ上がっていきなよ、何にもない家だけどさ」

つくね

主人公のクラスを担任する新人教師。生徒からは「つく姉(ねえ)と呼ばれ慕われる。男運がなく、婚活は連敗中。幼少期の主人公のお隣さんで、弟のように可愛がっていた。つくねの引っ越しのときに主人公が「こんやくゆびわ」として渡したおもちゃの指輪を今も大切に持っている。
「今日の宿題は倍にします。恨むなら既婚者なのに街コンに来てたアイツを恨んでね。フ、フフフフ……」

がんもどき(長文注意)

ぐるぐる目が特徴的なオカルト研究会所属。部員はがんもどきしかいないので非公認。もち巾着の素性を明かすため日常的に尾行しているが失敗続き。がんもどき√ に入るにはもち巾着とのフラグを立てたあとの全選択肢で「第三理科準備室に行く」を選ばなければならない。そのため友達はできず、成績は地を這い、薄暗い理科準備室とオカルト的儀式が主人公のキャンパスライフの大半を占めることになるももの、それだけに終盤の展開のカタルシスは随一。

オカ研に残された最後の調査対象であったもち巾着の転校が決定、さらに文化祭の出店のため理科準備室からの立ち退きを余儀なくされ、がんもどきは打ちひしがれていた。
「大きくて退屈な『現実』が……いつもわたしに言うんです。『ふしぎ』を捨ててつまらなく生きろ……って。わたしと一緒にオカ研を作ってくれた先輩は、調査書に書けないからって言って転部してしまいました。ほ……本当はわかってるんです。雪男も、ヒバゴンも、カッパもネッシーもシーサーペントもモケーレムベンベもリトルグレイも!い、いるわけないって!!……へへ。わた、わたしもこんな活動やめて、ふつうの劣等生やりますかね。焚き上げちゃった教科書も、買い直さないと……ですね……」
俺は、彼女にかける言葉が見つからなかった。文化祭に向けて活気付く学校もこの退屈な世界も、全部まとめてアブダクトされてしまえばいいと心から願った。
そのとき、ひとつの馬鹿げた考えが浮かんだ。

文化祭当日、俺は人ごみをかき分け彼女を探していた。時間がない、急げ。焦るほどに息は上がり、久々に顔を合わせたクラスメイトたちの好奇の目に足がすくむ。ようやく見つけたがんもどきは、校舎裏で小さくうずくまっていた。
「行くぞ、がんも」
「ふへっ!?は、箸田くん、なんで……行くってどこへ……」
「裏山だよ。ツチノコもビッグフットもいない、あの裏山だ」
がんもの手を引き裏山を駆けながら、俺は数日前に交わしたもち巾着との『約束』のことを思い出していた。


「あ、あああの、もち巾着、さん……」
「んー?あぁ!こないだのストーカー2号くんかぁ。どうしたのぉ?」
「ご、ごめんッ……実は、お願いがあって」


「ね、ねえっ箸田くん……!なんで、裏山なんかに……」
「UFOだ」
「へ……」
「お前に、UFOを見せてやるんだ」
「で、でもそんなのあるわけ……」
「ある。絶対だ。絶対にある。がんもは不器用で落ち着きなくて間が悪いから、たまたまあいつらを見逃しちまうだけなんだ。ほんとはいつもすれ違ってるんだ。あくびが出る現実とかふつうなんて、丸ごとブチ壊れるくらいの『ふしぎ』と!だから俺が会わせてやる!俺が、がんもに……!」


「お願いかぁ、悪いけどボクはもうじき___ 」
「帰還命令、ですよね。転校じゃなくて帰るんですよね、他の星に。」
「……キミは……」
「ば、馬鹿なこと言ってるのはわかってます。でも、でももう……信じるしかないんです。あなたの非現実を」
「……」
「お願いがあります。文化祭当日の19時ちょうどに、一瞬でいい、裏山から見える夜空を飛んで欲しいんです。あなたの、あなたたちのUFOで。19時には文化祭の締めの大花火が上がります。学校の周りの住民もみんな反対側の空に気を取られてます。高度を下げれば見つからないはずです。お願いします、どうか……あいつにUFOを目撃させてやってください。あいつの『ふしぎ』を、守ってやってください……!」
「……」


無茶苦茶なことをしている。
もち巾着が宇宙人であること、転校とはよその星への帰還を意味するカバーストーリーであること、そして彼女とその同胞が俺との口約束を律儀に守ってくれること。この3つが計画を実行するにあたって俺が信じなければならない前提条件である。無茶だ、馬鹿だ、酔狂だ。それでも、行動せずにはいられなかった。
がんもの眼は、世界の謎に至るための螺旋だ。
美しい暗黒のようなそれにつまらない偽物の光が灯ってしまうくらいなら、俺はどんな絵空事だって信じ抜いてやる。

「はぁ……はぁ……着いたぞ、がんも」
枝葉を掻き分け獣道を抜けると、ぽっかりと開けた空き地にたどり着いた。月光が夜露のひとつひとつを撫ぜるように優しく差している。
「は、箸田くん……なんで、わたしなんかのためにこんな、」
「好きだから」
「……ふへっ!?」
「あなたの瞳が、声が、体温が好きだ。ロマンへと伸ばす指先が好きだ。『ふしぎ』に捧げた心が好きだ。だからこれからも一緒に、未確認な生き方をしよう。友達がいなくても、うまく喋れなくてもいい。上手な生き方なんて忘れてしまおう。がんも、俺と____ 」

突如、俺とがんもの間を突風が吹き抜けた。
「あ、あああ……!は、箸田くん!!」
がんもの視線の先では、夜空に幾層もの赤いオーロラが形成されていた。視界が赤く染まる。
「来る!来るくるくるくる!!」
肩にしがみついたがんもの爪が刺さる。がんもの身体は恐怖と歓喜に打ち震えていた。
次の瞬間、山肌に切り取られた夜空に、煌々と光る飛行物体が昇った。背後では大花火が炸裂する。
世界は白く焼け、そこには俺とがんも、そして『ふしぎ』だけがあった。
「わたし。わたし間違ってなかった。あるんだ!いるんだ!UFOが!ラージノーズグレイが!リトルグレイが!!」
「ああ、ああ!!」
「目を閉じないで。これから先、もうなにも見えなくなっても!箸田くん、ここが私たちの、ランデヴーポイントだよ」

それは次の瞬間、音もなく消滅した。それでも俺たちの網膜には燦然と輝く光源が焼き付いていた。
抱きついたままの姿勢でどちらからともなく崩れ落ちる。
「箸田……くん……わた……しも、あな……たの……こと……が……」
薄れゆく意識の中で聞こえるその言葉の続き。
そんな分かりきった些末な『ふしぎ』は、ゆっくり解いていけばいい。
瞼の裏の残光に拐われるように、
俺は意識を手放した。


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