都知事選を通して陰謀論の仕組みを学ぶ
都知事選が現在行われており、おもしろいですね。
情勢だけを見ても小池氏VS蓮舫氏という当初の目論見とは外れて石丸氏が驚異的な伸びを見せていますし、候補者乱立問題に端を発した、選挙ポスター枠の売買、不適切ポスター、選挙の在り方などいろいろと議論したいテーマが話題に上がるようになりました。
個人的にいろいろと書きたいことはあるのですが陰謀論について思うことがあったので今日はそちらを書いてみます。
陰謀論とは?
まずは言葉の定義からです。
読売新聞の記事を引用します。
つまり陰謀論の例としてよく出てくる巨大な怪しい組織だけでなく、何かの現象を「これは○○(有名人や組織)によって引き起こされている」というのも十分陰謀論の範疇ということになります。
都知事選でみられる陰謀論
これは都知事選の中で私が特に追っかけているのが石丸氏であるために石丸氏周辺の情報に偏ってはしまうのですが、様々な陰謀論が観測されました。
例えば、
・石丸氏側には中国系の工作員がいる
・石丸氏を支援するドトールコーヒーは創価学会系であり創価学会が石丸を支持して動いている
・石丸氏について有名youtuberが言及するのはお金をもらって宣伝してもらっているからだ
・実は石丸氏の裏には自民党がついている
これらはいずれも「なぜ石丸ファンや石丸支持者が多いか」の説明として、裏になんらかの組織の計画があるという妄想ですので、陰謀論に該当するでしょう。
上記の陰謀論の定義にもあるように「容易に受け入れられない」ことに対してなんらかの理由を無理やり考えることで納得したいわけです。
今回であれば石丸氏が人気になっていることが受け入れがたいわけです。
常識的に考えてそんなこと起こらないと。
そのためやれ工作員だの、やれ金で雇っているだの、すべてをそういった理由にしたいわけですね。
そして自説に適合するような痕跡を無理やり見つけることで、自説の妥当性を勝手に信じてしまうというわけです。
石丸氏はなぜこんなにも話題になっているのか
ではなぜ石丸氏がこんなにも話題になっているのか。
これはあくまで私の見立てですが、大きく二つの事象が重なっています。
まず1つ目は単純にファンが増えているということ。
石丸氏の人気はyoutubeを起点として単純に好きになった人や支持する人が多いと解釈するのが一般的だと思います。
石丸市長のカリスマ性や既存の政治とは一線を画すスタイルは本当にすごいですし、つまるところ既存の政治にモヤモヤを抱えた人々や絶望した人々が一体となったものすごいうねりを起こしていると捉えてよいでしょう。
タリーズコーヒーの名誉会長が見返りもなく支持しているのだって単純にファンになったからと考えて不思議ではないです。
そもそも石丸市長のyoutubeライブで高額スパチャをするひとは初期からずっと観測されており、資産家や有力者が同様にファンになればそういった支援をしたいと思っても不思議はないですよね。
Vtuberがあれだけスパチャで稼ぐ時代ですから、日本を変えようとする石丸氏へのスパチャは大義名分にもなりますし、支持層が比較的お金を持っている世代ということもあり、それだけの支援がきても何もおかしくありません。
そしてもう1つは人気に便乗した広告稼ぎです。
皆さんご承知の通り、youtubeやX(twitter)はいまや広告収入を稼ぐ場でもあります。
そんな中において、「石丸伸二」「安芸高田市」というコンテンツは相当の集客力、すなわち換金可能性を持っています。
石丸という名前を出して動画を作る、石丸氏を褒めるコンテンツを作る、安芸高田市議会の議員を馬鹿にする動画を作成する、それだけでものすごい数の視聴者が付きます。
私だって石丸氏を扱うnoteを公開しただけでとんでもない数読まれています。(お金にはなっていませんが)
別アカウントで書いているnoteの記事の閲覧数と比べて破格なんですよね。
そのようにして、最初は安芸高田市議会の切り抜き動画がとんでもない数作成され、今は街頭演説をライブ中継するyoutuberが多数存在するほどです。
石丸ファンの力はすさまじく、そのような石丸関連動画を何度も何度も見まくります。
見たことがある内容でも何回も見るんです。
長時間の議会の切り抜きだってずっと見てます。
だから金になる。
ホリエモンと石丸氏の対談もありえないくらいバズってます。
ということは何が起こるかというと、思想信条に関係なく「金になるコンテンツ」として群がっている層もいるわけです。
一時期話題になった「クラウドワークスで石丸関連動画の切り抜き動画制作が依頼されている!」という話。
これも金になるからと考えればとても納得できる案件です。
依頼者は石丸氏を応援するかどうかに関係なく、動画を出せれば儲かるので動画の作成を依頼する。
広告収入で十分元が取れるからその金額で依頼する。
動画の作り方としては議会の切り抜きに字幕を付けるだけなんで簡単ですからね。
コンテンツを考える必要もなく、議会が提供してくれるコンテンツをただ動画にすれば儲かる。
単純にそれだけのことです。
一部の陰謀論者は石丸氏本人やその背後にある組織がバズを作り出すために依頼して動画を作っていると言っていましたが、そんなわけないわという当たり前の話です。
Xのトレンドがどうとか中国の工作員だいうのも同じでしょう。
金になるコンテンツにはいろんなところから人が群がってきます。
なぜ陰謀論に走ってしまうのか
陰謀論の考え方として「○○が怪しいのは明らかな事実なのになんでみんな気づかないんだ・・・それは気づいていないんじゃなくて騙そうとしている組織の側の人間だからだ!」というものが挙げられます。
工作員であったりお金を払って○○させているといった解釈がよく出てくるのはこのためです。
そうやって、「私にとって受け入れがたい行動」を多くの人が選択している理由を作り出して納得いるんですね。
しかしながら、根本的には「ひとそれぞれは違う生き物である」という意識が足りないことが問題ではないでしょうか。
まず感性や考え方が異なります。
例えば、僕が嫌いなAさんのことを好きなひともいるわけで、逆に僕の好きなBさんのことを嫌いなひともいます。
その人の感性や考え方はひとそれぞれですので、違って当たり前なんです。
私は石丸さんのことをうさんくさいと思ったとしても、絶賛する人もいます。
ほかの人がみんな自分と同じように思うわけないんです。
ひとそれぞれ。
自分が少数派になってしまったときに、なぜそこに疑問を持って「これは大きな力が働いている」となるのか、コレガワカラナイ。
そして二つ目には触れている情報が異なります。
youtubeでバズったとはいえ、見ている動画の数や種類は大きく異なるわけです。
全員がすべての動画を見ているわけでもないですし、全員が同じスタンスで動画を見ているわけではないです。
そのため、どのような感想を持つのかはひとそれぞれです。
そして今回に関して言えば、「金になるコンテンツという理解が足りない」ことも問題だと思います。
「中華の工作」や「怪しいアカウント」という指摘はすべてこれらで説明がつきます。
昨今のSNSやネットの世界は、自分に表示される情報のリスト自体が他人と大きく異なっていることが当然になってきました。
おすすめという名のアナリティクスで表示される内容はひとそれぞれで大きく異なるわけですし、フォローやブロックを活用すれば自分と似た思想のひとばかりの空間を作ることも可能になります。
そのような多様化して偏在化した情報社会において、「一般的な常識」を推し測るのはかなり難しくなっています。
そのような意識を忘れずにネット社会と向き合っていきたいですね。