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未来永劫ではない原子力:金子

 外交評論家・元外交官の金子熊夫さんは「日本のエネルギー安全保障と国家安全保障を強化するために当面は原子力を推進すべき」との立場であるが、同時に「原子力時代は未来永劫続くわけではない」ともいう。
 その金子さんが2024年5月10日(金)、参議院議員会館会議室B102で講演を行った。主催は公益社団法人「福島原発行動隊」。
 エネルギー戦略研究会の会長である金子さんは、原発新設が陸上で無理ならば洋上浮体式原発を考えるべきだという。また、高レベル核廃棄物最終処分施設についても「日本列島の陸上に作るのは難しい。現在はNUMOが頑張っているが、いずれ行き詰る惧れがあると思う」という。
 「今の世代がOKといっても30-40年後どうなるかわからない。孫の世代で問題化するかもしれない。だいたい(高レベル核廃棄物については)万年単位で考えなければいけない問題だ」。

排他的経済水域(EEZ)に着目すべき
 そこで着目すべきは日本の国土の10倍以上ある排他的経済水域(EEZ)だと金子さんはいう。
 「例えば、南鳥島とか離島に最終処分場を作れば領海外なので地方自治体ではなく国として出来る。ところが日本は元来海洋国家なのにEEZの活用のための法整備が著しく遅れている。政治家も役人も甚だ不勉強だ」。
 「私は当面、おそらくあと半世紀くらいは原子力が必要と考えているが、原子力時代が未来永劫続くとは思っていない。どこかの時点でお役目終了となり、次のエネルギーにバトンタッチになると思う」。
 「核融合ってのもあるけど、実用化には時間がかかる。おそらく今世紀後半だろう。それ以前に再エネ、とくに太陽光、風力といったものを伸ばしていかなければいけない」。
 「ただ再エネでジャンジャン発電すればいいというものでもない。余ってしまう場合もある 「出力抑制」となれば電気を捨てることになる。いかにももったいない」。
 金子さんは「そこで必要になるのは大型の蓄電池」だという。
 今のところ蓄電池の大型化はコストがかかってしまうのでその実用化には世界的に悲観的な見方が有力だが、「もし将来リーズナブルなコストで出来るようになれば、太陽光、風力の有用性はさらに高まる」と力を込めた。
 「大型の蓄電池が広く普及するようになれば再エネは非常に有望、いずれ原子力は要らなくなる日が来るだろうと思う」と金子さんは話す。

国家・グローバルな視点から考えるべき
 金子さんは日本における環境問題の草分けで国連環境計画(UNEP)に4年半出向した経験もある。金子さんは第一次石油危機(1973)をきっかけとして環境派から原子力重視派へと転向した。
 金子さんはいう。「第一次オイルショックの時、私はちょうど国連(本部はスイスのジュネーヴ)に行っていて外から日本を見ていた。現在ではとても想像がつかないほど日本は悲惨な状況で苦しんだ。二度とあのような悲哀を味わいたくない、そのためには原子力に頼る以外にないと思ったのです」。
 個人的には、特に3.11の被災者は気の毒で、原発はもう真っ平御免だと思っているだろうが、エネルギー政策は国にとって極めて重要だという。
 個人レベルの問題とは別に国家・グローバルな問題でもあり、両方をうまくバランスをとって進めていく必要があるという考え方を金子さんは示す。
 「国家の安泰ということ。国家としての、民族としての安定を考え、大局的立場で原子力問題を考えていってもらいたい。原子力にはもちろんいろいろと問題はある。だからこそもっと客観的な視点に立った全国民的議論が必要です」。
 「特に原子力問題については科学技術的な知識に基づいた議論が大切だが、3.11以後原子力の知見のある科学者や専門家は大きい声でモノを言えない雰囲気になっている。マスコミも書かない」。
 「政治家も原子力は票にならないから言わない。原子力だけでなく太陽光、風力、地熱なども含んだエネルギー問題全体を俯瞰的かつ徹底的に議論するようになってもらいたい」。
 「また、大学などでも優秀な学生が原子力を含むエネルギー問題を勉強するような環境を作ってもらいたい。そのためには政府も業界も学者ももっと夢のあるエネルギー構想を打ち出すべきだ。現状のままでは、原子力を継続するにしても廃止するにしても、必要となる専門家が日本からいなくなってしまうだろう」。
 「そういう努力が今の日本には非常に欠けています。(そういう努力こそが)福島の復興にも役立つと思います」と金子さんは締めくくった。

 金子さんの主な著書には、「地球環境問題の歴史的発展過程~体験的環境外交論」(岩波書店、1998年)、「日本の核・アジアの核」(朝日新聞社、1997年)、「小池・小泉「脱原発」のウソ」(飛鳥新社、2017年)などがある。
 

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