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反貧困ネット活動報告㊦

 そして反貧困ネットワーク報告会は第二部となり、ソウル「貧困問題に立ち向かう市民社会の取り組み」報告会と題して、9日間韓国に実情を視察してきた平田聖子・生活相談員と事務局の加藤美和さんから話があった。
 まずこの研修旅行について瀬戸大作事務局長から説明があり「世代交代をしていくために日本だけでなくグローバルに、アジアでどういう問題が怒っていて社会をどう変えていこうとしているのか勉強してもらいました」と。
 「日本の社会はいろいろな運動がタテ型になっているが、それをどうやって横につなげていくかを学んでほしかった」。
 「支援をする側、される側を固定化させず、それをどうやって当事者にしてゆくか、韓国の実践を見てほしかった」。
 まず平田さんから報告があり、韓国では路上生活者などまず見かけることがなかったのが、「1998年のアジア経済危機の後、そういう人たちが増えて問題が可視化されたのです」と話した。
 韓国の露宿舎の8割がソウル市駅周辺に集まっているそうだ。
 韓国には「国民基礎生活保障法」があって生活保障を申請するにはまず住所が必要だという。ここでは日本のように生活「保護」ではなく生活「保障」とされている。これは支援はしてあげるものでなく、それを受ける権利であり、それを与えることは義務であるとの認識がそこには伺える。

平田聖子さんと加藤美和さん(右)


 そして二人が訪れたホームレス保護・支援のための「ヨンリンヨンソンセンター」とソウル特別市立「タシソギ総合支援センター」の説明があった。
 また、問題が長期化して困難度が高い人を対象とする「ソウル駅希望支援センター」について平田さんは「多くの当事者がスタッフとともに働く姿が日常の風景になっている」という。
 そして印象に残った言葉として「トンネルはいつか終わることになっている/1000人のホームレスに/1000個の事情と/1000個の立ち上がり方法がある/彼らはただトンネルを通っているだけです」をタシソギ総合支援センターのパンフレットから紹介した。

 ホームレスなどの社会復帰のための自活・リハビリ支援事業を手掛ける「開かれた女性センター」も視察した。
 予算の98%はソウル特別市から来ているという。
 ここでのキーワードは「ハウジングファースト」「オープンダイアログ」と「ハームリダクション」だ。
 「雇用促進カフェ・ハハハ」と「救世軍ブリッジ総合支援センター」も紹介された。後者は「ソウル市から駆け付け支援(アウトリーチ)を委託されたのです」と加藤さんはいう。
 加藤さんからさらに住民連帯・市民社会運動の観点から「東子洞 サラバンマウル住民協会」「冠岳区 冠岳住民連帯・共同行動」「ハッピーイン」「冠岳居住福祉センター」「ナヌム住民生活協同組合」の説明があった。
 東子洞とは約900人が暮らす韓国で5つあるなかで最も大きいドヤ街のこと。サラバンマウル住民協会は2010年に設立され、おカネがないことが一番の問題だとして「マイクロクレジット」を始めた。


 ドヤ街の住民ではあるものの返済率は93%(2024年)だという。
 「ハッピーイン」はお年寄りの一人世帯が多い高層マンション住民のためにお弁当を配布している。
 配達するのでなく取りに来てもらい、しばらく来ない人のための「健康管理アプリ」を導入しており、登録者は250-300人だという。
 毎日130-150人弁当を取りに来ると説明があったとのこと。
 「大学洞プロジェクト」が視野に入れているのは「生活権」「社会権」「居住権」「労働権」「健康権」だ。
 このあと参加者との対談に移った。
 最後に宇都宮健児・理事長(弁護士)からまとめの挨拶があった。

宇都宮健児・理事長


 反貧困ネットワークは「日本の社会から貧困や社会的困難抱えている人をなくしてゆくという目標をずっと掲げています。社会的な告発をしてきましたが、コロナ禍で変わり、現場で本当に困難を抱えている人への支援をするようになりました。踏み込んだ現場活動をするようになった」。
 「当初日本人困窮者が多かったが、外国人も生活困窮に陥っている。入管から仮放免にされる人が多く、助けを求めてくるようになりました」。
 「貧困の拡大に政治はほとんど対策を取ってこなかった。コロナ禍の後から(炊き出しに)並ぶ人が多くいると聞いて、もはやホームレスだけでなく、母子家庭や若者やいろいろな人が支援を求めに来る」。
 「日本は貧困の底が抜けているのに政治は何の対応もしていない。先ほどの総選挙では一般的に課題は政治とカネだったといいますが、実際のところは貧困・格差への国民の怒りが爆発したのではないでしょうか」。
 (終わり)
 

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