11・13原子力規制委会見
関西電力高浜原発1号機(福井県)が運転50年を迎えることになり、来年6月には新たな規制制度が導入され60年超の運転も可能になるが、原子力規制委員会の山中伸介委員長は同13日の定例会見で、高経年劣化が問題になるようなプラントに関しては60年あるいはそれ以上は10年ごとの審査で基準に適合しているかを判断していくと繰り返した。
10年ごとの審査で安全性を科学的・技術的に判断できるのかとの福井新聞記者の問いに対して、山中委員長は「基準に適合しているかいないかが極めて大切な点で、適合していなければ原子炉を停止してもらう」と述べた。
高浜原発2号機では原子炉内の中性子を測定する機器にトラブルが起きて、現在、原因を究明中だという。
女川原発2号機でのナットの緩み
また、再稼働後に機器の不具合で停止していた東北電力女川原発2号機(宮城県)同13日に再び原子炉を起動した。機器トラブルの原因がナットの緩みだったことに関して、山中委員長はナットの緩みで計測器が外れてしまったと理解しているとし、今後審査の中で見ていきたいと話した。
同2号機は先月26日に再稼働したが、その日のうちに中性子の計測状況を確認するためケーブルにつないだ計測機器を原子炉内に入れたが動かなくなった。そのため、今月4日に原子炉を停止していた。
2011年の東日本大震災後、被災地の原発としては初めての再稼働となり、13年前に事故が起きた東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても事故後、初めての再稼働だ。
敦賀原発2号機の元々の許可を取り消すべき?
一方、日本原子力発電(原電)の敦賀原発2号機(福井県)に関して規制委員会が同13日、敷地内の断層の原電の判断に関し、原発の安全対策を定めた新規制基準に適合していないとの判断を正式決定した。
この再稼働を許可出来ないとの処分は「規制員会が発足して以来初めての判断で大きな判断だったが、科学的・技術的な観点から厳正に審査をして判断した」と山中委員長は話した。
同2号機の審査はおよそ8年という長期にわたり続けられ、最後は活断層の活動性と連続性に論点を絞っての異例の審査となった。その過程で、原電が提出した「申請書に非常に多くの間違いがあり、データの書き換えがあり、審査中に審査をしなければならないという異常な状態」だった。
原電は2015年11月に審査を申請した。中断を挟んで2023年に再開され、原子炉建屋の北側にある「K断層」をめぐって、その「活動性」と建屋直下まで延びているかという「連続性」に論点を絞った。規制委員会の調査チームは「活動性、連続性とも否定できない」と判断していた。
問題が多いプラントので元の許可つまり建設時の許可を取り消すべきではないかとの声もあがったが、山中委員長は「原子炉は停止しており、使用済み燃料も十分に冷却されていて、何かあっても対応できる」ので、そこまでの対応は必要ないと判断したと従来の見解を繰り返した。
もともとの審査が有効かと問われ、今回は「設置変更許可の審査」であって、元の許可の取り消しということになると別の法律の判断の問題になると広報が説明をした。
伊方原発1号機での電源トラブル
四国電力伊方原発3号機(愛媛県)での電源をめぐるトラブルについて質問があり、山中委員長は「外部2系統6回線のうち独立した2系統が持続できなくなる事象が起きた。外部の電源系統の不安定性が要因で1系統が使えなくなった」と説明した。
しかし、山中委員長はこうした電源に関することから指摘された「原発の脆弱性や不安定性」については否定し、稼働中の原発に関しては安全上課題があるとは考えていないとした。
原発では使用済み核燃料を冷却することが極めて重要で、そのため電気を使うが、外部電源の多様化を図り、発電装置も備えるようにしている。
能登半島地震で浮き彫りになった避難の課題
能登半島地震を受けて浮き彫りになった原発周辺での住民の避難・屋内退避の問題に関して石川県の北陸朝日放送の記者から質問があった。
同記者は北陸電力志賀原発(石川県)から30キロ圏内で道路が寸断されたのがおよそ30ヵ所、家屋の損壊が2万9千以上だったと指摘した。
山中委員長は「大きな教訓としては自然災害の防災強化が必要だったのではないかと理解している。自然災害と原子力災害の複合災害では自然災害の防災がきちんとなされたうえで、原子力災害への備えをしていくべきだと理解している」と述べた。
「複合災害に対する備えは自然災害に対する備えと連携したものでないといけない」と付け加えた。
先日、規制委員会の検討チームが原発事故時の屋内退避に関しての中間とりまとめを公表したが、屋内退避の目安を3日間とするなどした。同チームはその後、原発5~30キロ圏内の自治体から意見を募集した。
38自治体から約200件の意見が寄せられ、外出範囲や時間に疑問が呈されたり、また食料や生活必需品をどうやって確保するのか、屋内退避が出来ない場合にはどうするのかといった問題が提起された。
同チームは1月ごろに次回会合を開き、報告書をまとめる見込みだ。
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