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ヨルダン川西岸からの報告㊤

 「イスラエルのパレスチナへの攻撃がここまで過激化し、入植者たちがどうしてパレスチナ人に対して傍若無人に振舞えるのかといえば、国際法に基づく処罰が欠如し、説明責任が全くなされていないことによるのです」。
 パレスチナ農業開発センター(UAWC)のファッド・アブサイフ代表は2024年12月19日(木)に行われたオンラインセミナーで語った。
 このセミナーは特定非営利活動法人APLA(Alternative People's Linkage in Asia)とオルター・トレード・ジャパン(ATJ)の共催で開かれた。
 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、昨年10月以降、45000人のパレスチナ人が死亡し、10万6000人以上が負傷している。また、約190万人が避難している。
 しかし、こうした状況はガザでもヨルダン川西岸でも昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエルに対する攻撃そしてイスラエルの逆襲によって始まったわけではなく、イスラエルの占領はそもそも76年間続いているのだとアブサイフ代表はいう。

ファッド・アブサイフ代表


 「イスラエルののちの占領軍は76年前にパレスチナの土地を占領し、毎日のようにパレスチナ人が殺されている。そして毎日のようにパレスチナ人の建物などが破壊されている」。
 とはいえ、「昨年10月7日以降、イスラエル軍の西岸における攻撃は前代未聞の規模にまで拡大している。イスラエル軍による襲撃そして空爆が断続的に行われている」という。

ヨルダン川西岸に800もの検問所
 ヨルダン川西岸に限っても800もの検問所、ゲートが設置され、その全てでイスラエル兵士が監視をしているとアブサイフ代表はいう。
 「今まで検問所などがなかった小さな村や難民キャンプも含めほぼすべての町村に鉄のゲートが設けられてイスラエル兵によって恣意的に開けたり閉められたりしているのです」。
 「非常に恐ろしい場所で、家や学校などに行こうとして通り抜けようとした時に発砲される恐れがあって何百人も亡くなっています。西岸地域はそうした検問所やゲートで分断されてしまっています」。
 アブサイフ代表によると、1993年に米国の仲介でイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の間で調印された「オスロ合意」によって、本来はイスラエル軍は立ち入りが禁止されているパレスチナ自治政府が管理するA地区でも襲撃を行っている。
 西岸地区はA、B、Cに区分けされているという。
 そして昨年10月7日以前からイスラエル人は西岸でも入植地を拡大させてきて、現在900以上の入植地があるという。
 アブサイフ代表は「西岸の人達の生活は地獄のように変えられてしまった。恐怖が支配している。イスラエル軍によって完全に保護されている入植者による民族浄化が拡大している」と話す。

拡大する土地収奪
 土地収奪も拡大しており、過去1年間に数万ヘクタールの土地が接収され、入植地と前哨基地が新たに43設置されたという。そのためパレスチナ人家族は移住を余儀なくされ、農地を失った。
 入植者たちによるパレスチナ人への攻撃も激化している。過去一年間をみても1400件の入植者による襲撃が発生したという。
 「目的は明らかでパレスチナ人を追い出して入植者が住んで土地を奪うということだ」とアブサイフ代表はいう。
 「ベングヴィル治安相はテロを行う入植者に武器を供与し虐殺を呼びかけているのです。大臣の一人がパレスチナ人を殺せと呼びかけている、あってはならないことです」とアブサイフ代表は怒りを露わにした。
 国際法におけるイスラエルに対する不処罰が状況をさらに悪化させており、そのひとつは経済状況で「もともと脆弱だった西岸の経済は崩壊し、29%以上の事業が閉鎖されました」。
 「昨年10月以降、西岸では50万人以上の雇用が失われ、失業率は70%以上に達しています。ガザではほぼ100%の失業率です」。
 「非常に困難で複雑な状況に直面し続けています」。

 


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