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ガザの画家たちの作品展
イスラエルによる侵攻が続いているパレスチナ自治区ガザのアーティスト7人の作品およそ40点を紹介する「パレスチナに明日はあるのか GAZA 七人の画家展」が2024年4月3日(水)までギャラリー絵夢(東京都新宿区3-33-10新宿モリエールビル3F)で開催されている。
パレスチナの人たちと交流を続けている「パレスチナのハート アートプロジェクト」(PHAP)の代表を務める美術家・上條陽子さんによる企画展。
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1993年にイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の間で結ばれたオスロ合意で翌年ガザ地区はヨルダン川西岸地区とともにパレスチナ自治区となった。パレスチナ南西端シナイ半島の北東に接し地中海に沿いに長さ45キロ、幅6~10キロ、面積は種子島と同じくらいで人口密度が高い。
ガザは周囲を高さ8メートル、幅2メートルの壁に囲まれ、前は海に面している。イスラエルによって封鎖されており、包囲された中でガザの人々は逃げる場もない。「屋根のない監獄」「屋根のない刑務所」といわれる。
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ガザはガレキの山となった。7人の画家が経営する画廊「エルチカ」も破壊された。ハワジリの親族10人が殺され、イサの母と姪も殺された。
2023年10月、ドローイング作品を送ってもらう予定だったが、イスラエルによるガザ侵攻によって叶わなかった。
ハワジリと妻ティナ、そしてイサの3人以外のソヘイル、アブザール、アジューリー、ダブスの4人は連絡も取れず、生死も分からない。
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この状況のなか、かれらはどう生き抜くのか。飢えと寒さをどう耐えるのだろうか。残酷すぎる。むごすぎる。
人殺しはやめて!戦争はやめて!
そういう思いから開催されている展覧会。
この日は上條さんと映像ディレクター原口美早紀さんとのギャラリートークが開かれた。まず原口さんから上條さんの紹介があった。
上條さんは99年にガザに初めて行った。エルサレムなどで巡回展をやったのだ。パレスチナを見たくて仕方がなかった。というのも大学がカトリック系でクラスが「パレスチナクラス」だったからだという。
それがそのうちにパレスチナ=テロリストといわれるようになって「おかしいなあ?」と思うようになっていた。
99年はオスロ合意のおかげで現地は落ち着いていた時期だった。
道路を隔ててこちらがパレスチナで向こうがイスラエルのような状況だったが、こちらのパレスチナ側は本当に貧しくて子どもたちは絵を描く機会もないくらいで「おかしいじゃないか」と疑問に思ったという。
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その後、原口さんが話をした。原口さんと上條さんとの出会いは2021年6月6日放送のNHKのEテレ「日曜美術館」で「壁を越える~パレスチナ・ガザの画家と上條陽子」の取材がきっかけだった。
「絵だけを見てもそこにどんな思いが込められているのか分からない。でも知りたいと思った」と原口さんは話した。
とりあえず「天井のない監獄」であるガザの取材はフェイスブックで画家たちと繋がることから始まった。現地ガイドのイヤド・アラスタール君と「二人三脚」でのリモート取材となった。
当日になって出たくないという画家もいたという。「みじめな状況を見せたくない」というのだ。急いで上條さんが説得をしたー「あなたたちの声がガザの現状を伝えるのに必要だ」と。
それから連絡が取れる画家たちが今どうしているのかを原口さんは映像を使って報告した。例えば、ソヘイル・セレイム。
ガザで初めてのギャラリー「エルティカ」は破壊されてしまっていた。ソヘイルは避難していたガザ旧市街から現在はディアバラにいるという。最近、ノートに再び絵を描き始めた。
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ハワジリは親がパレスチナ難民だった。妻と4人の子どもがいる。動物好きで以前はインコなど40羽以上飼っていた。
かつてパレスチナの人たちは家を建ててロバやヤギとともに暮らしていた。しかし、今いるガザは土地が狭くそうした暮らしは失われた。
ハワジリが描いているのは動物たちと暮らしていたかつてのパレスチナの光景だ。「現実から逃避するため動物を描いている」という。
続けて上條さんからの話があり、「バイデン(米大統領)は何もパレスチナのことを分かっていない。血も涙もないネタニエフ(・イスラエル首相)。イスラエルのヒットラーだ。それにアメリカは武器を与えている」。
「人間としての尊厳が守られていないパレスチナ人をどうして助けないのか私には理解できない」と上條さんは言う。
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ただし、「私はハマスのやり方は容認出来ない。(イスラエルに対する怒りの)マグマが爆発したのは分かるが、犠牲が大きすぎる」。
かつて日本に招いたガザの画家はこう言ったという「日本のこの自由をガザに持って帰りたい」と。その後、上條さんは「マグマ」という作品が自然と湧き出てきたのだという。
会場ではパレスチナ刺繍やビーズなどが販売されており、売上金はすべて寄付される予定となっている。
開廊時間は午前11時から午後7時(最終日は午後5時まで)。
入場無料。
(冒頭の写真の作品はディナ・マタール作)
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