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藤田の猫作品を一挙大公開!
ネコ好きで知られる藤田嗣治の猫作品を一挙に大公開する展覧会が2025年3月6日(木)から9月28日(日)まで軽井沢安東美術館(長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10)にて開催されることになった。
「藤田嗣治 猫のいる風景」では裸婦の後ろで眠る猫が愛らしい同館初公開作品《天蓋の裸婦》(1954年 油彩・キャンバス)をはじめ、様々な表情やしぐさの猫に目を留めながら鑑賞が出来よう。
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猫好きだけでなく犬のファンたちも楽しめる展示となる。躍動感ある犬が描かれた《群犬》(1936年 水彩、墨・紙)や、空舞う雁やタヌキやキツネなどが描き込まれた作品も楽しむことが出来る。
藤田にとって猫は友であり、描く対象でもあった。猫のいる生活は藤田が渡仏してまもなくのこと。パリで足にまとわりついてきた猫を拾い上げ、自宅に連れ帰ったのがきっかけだった。
それ以降、藤田は身近な画題として猫を描き始める。1920年代、藤田は裸婦像に猫を登場させ、繰り返し制作した自画像にも猫を描き込んだ。藤田に寄り添う猫の姿は、まるで相棒のようでもある。こうして猫はおかっぱ頭やロイドメガネとともに、藤田を象徴するアイコン的存在となってゆく。
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1929年になると、藤田の猫はそれまでの脇役的な位置づけから抜け出す。「乳白色の下地」に通じる色合いとドライポイントやエッチング等を組み合わせた混合技法で、かわいいしぐさの猫ばかりを収めた版画集『猫十態』がパリのアポロ社から出版された。
1930年、ニューヨークのコビチ・フリード社から出版された版画本『猫の本』には、イギリスの詩人マイケル・ジョセフの詩とともに、ふんわりとした毛並みが特徴である藤田ならではの猫21匹が登場する。
ジョセフが全ての猫に名前をつけたことで、藤田が描いた猫たちはいっそう個性が感じられる存在となったのではないか。
1950年、アメリカで出版された『夜と猫』は小説家で詩人のエリザエス・コーツワースが綴った猫の詩に、藤田がまどろむ猫の素描を寄せた美しくも幻想的な絵本だ。この頃から藤田が描く猫には類型化が見られるようになり、『夜と猫』ではクリっと丸い目をした猫たちがページを飾っている。
《猫の教室》(1949年 油彩・キャンバス)では、擬人化された猫の先生と生徒たちが登場し、自由気ままに振舞う子どもたちと賑やかな教室の情景が描かれた。彼らは個性をまとい表情も十人十色だが、描き方には一定のパターンが見られる。1950年代以降、藤田が描いた少女たちが「想像上の子ども」だったように、猫たちも、長年猫たちを観察してきた藤田が創り上げた理想像だったのかもしれない。
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開館時間は午前10時から午後5時(入館は午後4時半まで)。休館日は水曜日(祝日の場合は翌平日)。観覧料は一般2300円、高校生以下1100円、未就学児無料。オンラインチケット購入の場合、100円引き。
(本展示は7月24日より一部展示替えを行い、「終戦80年記念 藤田嗣治 戦争の時代」展とその関連事業を開催する予定)
問い合わせ先は℡0267-42-1230。同館の公式サイトは https://www.musee-ando.com
(冒頭の写真:軽井沢安東美術館(左)《横たわる猫》(1929年 木版・紙)(中央)《猫のいる自画像》(1926年 コロタイプ・紙)(右)《夢》(1957年 リトグラフ(エリオグラヴュール、アクアチント併用:紙)