反貧困ネット活動報告㊤
一般社団法人「反貧困ネットワーク」が2024年12月1日(日)、ワーカーズコープ池袋本部で活動報告会を開いた。生活困窮者の状況は前年と変わっておらず貧困の問題が「定常化」していることが次々と報告された。
瀬戸大作事務局長は「非常に困難な時代を迎えています。畑でピーマンを7点、ナスを11点盗んで警察に20日間拘留された人の対応をしていて、国選弁護人に呼ばれて法律事務所に行きました」という。
「一方で、自民党議員は裏金窃盗しても誰一人として捕まらない。そういう時代になってしまった・・・コロナ禍から5年経っても社会的排除の問題と闘い続けている」と瀬戸事務局長は話す。
例として①家がない人の生活保護申請に一緒に行って支援②外国籍の人が難民申請中に入管に収容されることへの対応ーをまず挙げた。
「地域で暮らす権利を奪われてしまっている。施設を作ることにカネを使うより地域で暮らすことへカネを使うべきだ」。
反貧困ネットワークは駆けつけ支援(アウトリーチ)を行っている。
「最近、女性からのSOSが増えています。9月はSOSの44%が女性からでした。かつては派遣村の日比谷公園の炊き出しに550人並んだうち女性はわずか5人だったんです。しかし今、女性の貧困が広がっている」。
また1000円以下の所持金の人からのSOSも多くなっているという。
「20代、30代の人からのSOSが60%です」。
駆けつけ支援の「先の支援」として生活保護申請の支援をしている。
「福祉事務所が施設に入れない人たちのためのシェルターの運営をしてます」と瀬戸事務局長。トータルで34部屋あり、現在の入居人数は49人でうち女性が23人、外国籍の人は19人だという。
また精神疾患の問題もあるという。
瀬戸事務局長によると、SOSを出してくる人の80%以上の人が統合失調症、うつなど精神疾患を抱えており、女性では9割以上だという。
日本全体でも精神疾患を抱えている人は増えており、2020年には614.8万人で現在はかなりそこから増加しているのではないかという。
「発症の理由は貧困、虐待、会社におけるパワハラなどで、社会が病んでいる実態が困窮者支援の現場に影を落としています」。
無料低額宿泊所に関して、瀬戸事務局長は「そこに入るとその施設からなかなか出ることが出来ない。だから我々が同行するんです。福祉施設とは名ばかりで、本人に渡されるのは生活保護費のうちの一部だけであとは施設に持っていかれるのです」と話す。
「悪質貧困ビジネスとの闘いです。福祉事務所が貧困ビジネスに丸投げしていることから問題が起きている」。
「施設収容主義ではなく地域で暮らすことを大事にしたい」と瀬戸事務局長は心構えとしてその点を強調した。
続いて「相談員に聞く日常伴走支援の難しさ」と題して原文次郎・理事(外国人支援チームリーダー)からの報告があった。
「日本人でも何人(なにじん)でも生活に困っている人のSOSに対して支援をしています」と原さんは語る。
「日本人は日本にいる許可をいちいち求められませんが、外国人は在留許可が必要で、それがないと支援につながらないのです」。
原さんは反貧困ネットワークでは次のような支援をしているというー①シェルター提供②家賃補助の支援③医療支援④食料援助⑤在留相談支援⑥高校生奨学金(高校以降の高等教育支援)。
まずは在留資格の問題。これが途中で取り上げられると審査待ちとなり短期の資格しかもらえず、何か問題があればいられなくなるという。
「住民票登録する場合でも6か月以上住んでいなければならないし、外国人の場合は6か月未満の在留資格だと住民票が取れずにいろいろなサービスが受けられないのです」と原さんは訴える。
外国人に比較的非正規労働が多いのはどうしてか。原さんは「仕事がなくなると在留資格を失います。仕事を続けられなくなる」という。
難民申請をした人について、「審査期間は平均3年で、その間は(生活を)どうするのか。そのうちに貯金もなくなってしまう。在留資格がないと仕事も出来ない。家族で来ている人は特に大変。野宿状態になっている外国籍の人が多く見受けられ、問題になっている」と原さん。
「シェルターもなかなか空かない。日本人ならば自立したらその後の道筋を描くことができるが、外国人にはそういう展望がなかなか開けないのです」と原さんは話す。
瀬戸事務局長は「経済的に外国籍の困窮者の支援はこのままでは止まってしまう」と危機感をあらわにする。
「今、政府はいっさい難民の人たちの支援をせず、民間の支援団体が被っている。それが潰れたらみんな路上生活者になってしまう」。
(続く)