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中島みゆき「糸」に出逢う

 中島みゆきの1992年の作品「糸」がロングセラーを続けている。一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の2024年のJASRAC賞・国内作品(カラオケ)部門で8位を記録した。
 JASRAC賞とは、前年度のJASRACからの著作物使用料の権利者への分配額が多かった作品を項目別に顕彰するものだ。
 2020年にJASRAC賞の銅賞、2019年に銅賞、2017年には金賞、2016年には銅賞と毎年のように受賞してきた「糸」。
 中島みゆき作詞作曲によるこの作品では、縦の糸を「あなた」、横の糸を「私」にたとえ、出逢いを「織りなす布」としてその不思議さ大切さを歌っている。「逢うべき糸に/出逢えることを/人は/仕合せと呼びます」。
 美しい歌だ。30年以上も前に発表された作品が今日まで愛され続けている理由の一つには、2011年の東日本大震災・福島第一原発事故を境として人の絆の大切さが再認識されたことがあろう。
 「糸」は天理教(本部・奈良県天理市)のリーダーである中島善司氏の結婚を祝して、中島みゆきが贈った歌であると、筆者の取材に対して天理教総務部渉外広報課は説明した。
 中島みゆきは1977年、そして2017年4月から天理教の機関紙「天理時報」にエッセーを連載。
 天理教は1838年に中山みき氏が創始した神道教派の宗教団体で、110万人を超える信者がいるという。
 「糸」は1992年のアルバム『East Asia』を締めくくる一曲として公式に発表され、以降いくつかのベスト盤に収録されてきた。
 TBS系テレビドラマ「聖者の行進」の主題歌やCM曲として使われたことでも認知度が高まった。
 そして、岩崎宏美、中孝介、クリス・ハート、JUJU、福山雅治、柴咲コウ、平原綾香ら多くのアーティストたちにもカバーされている。
 「糸」は天理教との関わりから生まれた作品であることから、信者たちからの支持があることは間違いないだろう。
 だが、この歌がこれほどまでにロングセラーを続けている秘密とは、位置宗教への信仰にとどまらない、普遍的な人間の「心」を物語る作品にまで昇華しているからだと思う。
 不思議で優しく温かい歌である。

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