京都の橘色悪魔が凄い!
京都橘高校吹奏楽部のマーチングブラスバンドは国内で名の知れた強豪であるばかりか、その評判は海を越えて海外にも伝わっている。台湾での名称は校名とコスチュームの色から名づけられた「オレンジ色の悪魔」。
2022年10月10日、台湾の国慶節(建国記念日)に総統府広場で行われたセレモニーでは、およそ15分にわたってパフォーマンスを披露し、拍手喝さいを浴びた。蔡英文総統ら要人たちも総立ちだった。
訪台を歓迎して蔡総統がホテルに小籠包を差し入れしてくれる場面も。
吹奏楽部の高校生たちは地元マスコミから「橘色悪魔」と呼ばれたが、それはみなを魔法のように一瞬で魅了してしまったためだろう。
今年の12月に台湾を再訪した京都橘高校マーチングブラスバンド。台北と高雄でパレードをし、台北第一女子高校の記念式典にも参加して、そこで与党民進党首で現副総統、次期総統候補の頼清徳氏とも面会した。
「台湾では、のべ11万人の人たちが集まってくださいました。台北では大きな看板が出たり、高雄では電車のラッピングになったりしました」と顧問の兼城裕(かねしろ・ひろし)先生は振り返った。
米国民的行事ローズ・パレードに参加
また複数回にわたって、100年以上の歴史がある米ローズ・パレードに参加して拍手喝さいを浴びた。米カレッジ・フットボールの頂上決戦であるローズ・ボウルに先駆けて行われる世界一のパレードである。
世界中のマーチングバンドの精鋭だけが参加を許されるアメリカの国民的行事で、何十万人もの集客力を誇るイベントである。
京都橘高校のマーチングブラスバンドは2025年1月に予定されているローズ・パレードへの出演がすでに決まっている。
また、米カリフォルニア州アナハイムのディズニーランドでのクリスマス・パレードに参加して、パフォーマンスを披露したこともある。
チャーミングでエネルギッシュ。若さ溢れるパフォーマンスに感動させられる人は少なくない。何よりも自分たちが楽しんでいるところがいい。
自分自身が楽しんでいないのに人を楽しませることは出来ない。努力の結果としての素晴らしい団結力が美しい結果につながっている。
兼城先生はいう「音楽には人間性がすべて出てしまいます。ですから人間教育に力を入れています。人間的成長がクオリティの向上につながり、見た目の楽しさにもつながっているのだと思います」。
スランプからの復活
京都橘高校の吹奏楽部は「踊るマーチングバンド」として知られる。演奏するだけでも大変なのに、ましてや踊りながらそれをやってしまう高校生たち。彼らは全日本コンテストの常連で何度も金賞を受賞している強豪校だ。
だが、2020年に全日本コンテストがコロナで中断するまでの数年間は京都橘高校でも「スランプ」に陥ってしまっていた。
だが、復活を果たした。全日本コンテストが再開した2021年から23年まで同校として初めて3年連続して全国での金賞を獲得したのだ。
兼城先生は音楽好きで自らもトランペットを吹く。クラブ創設者で1961年から初代顧問を務めた平松久司先生の推薦で、2018年に、23年間その座にあった田中宏幸先生の後を継ぎ、第3代顧問となった。
田中先生は名物顧問だった。田中先生の指導法を紹介した著書「オレンジの悪魔は教えずに育てる」がダイヤモンド社から出版されているが、台湾でも昨年翻訳版が売り出され、台湾メディアでも取り上げられている。
兼城先生は田中先生の指導法を尊重しつつ微調整を加えているという。
田中先生の時代は生徒たちの自主性をかなり重んじていたこともあってタテ関係が厳しくなっていたという。上級生をもちろん尊敬しつつもコミュニケーションをより円滑に出来るようにすることで、本番での楽しさにつながってきたのではないか、と兼城先生はみている。
指導者は”地図”たるべし
「目標目的に進むのは生徒たち自身です。ぼくらが生徒たちを引っ張っていくのではなく、指導者はいってみれば地図のようなものです。生徒たちがそれを見て目的地にたどり着けるように、正しい地図であるように、そしてこの先に楽しい所があるというような地図になるよう心がけています」。
兼城先生によると、毎年3月の定期演奏会を含めて年間90回くらいのイベントがあるという。休みに入ると一週間に3,4回という計算だ。
「生徒たちは体力的にはともかく、それほど辛い練習をしているとは思っていないと思います。勉強との両立については、テスト前にはクラブの練習をお休みにするなど配慮をしています」。
京都橘高校は2000年に共学になった。現在、部員98名のうち男子は11名。兼城先生はいう。「男子は少ないですが女子と仲良くやっています。男子が入ることでクラブの雰囲気をさらに明るくしてくれていると思います」。