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二胡奏者ウェイウェイを聴く

 午後5時半過ぎ、会場が暗くなり正面の幕に二胡を持つ女性のシルエットが浮かび上がった。そして流れてきたのは「Amazing Glace」。
 幕が上がると二胡奏者ウェイウェイ・ウーさんは高い台に乗って演奏していた。赤い衣装に身を纏って。
 クリスマスを控えているだけあって、後ろのスクリーンにクリスマス・ツリーの画像が映し出されるという趣向が凝らされていた。
 2023年12月16日(土)、東京都品川区のJR大井町駅前のきゅりあん大ホールで「ウェイウェイ・ウー二胡コンサート~無限の調べ~LOVE SONGS FROM SHINAGAWA」が開かれた。
 ステージが真っ赤に染まって始まったのは「Liber Tango」。
 演奏が終わるとウェイウェイさんが挨拶した。「このきゅりあんは私が主宰している教室が入っていますし、定期演奏会もやってきましたから、私のホームと言っても過言ではありません」。
 「リニューアルしてきれいになったホールで演奏出来るのを楽しみにしていました」と話した後、バンドメンバーを紹介したーバンマスでピアノが森丘ヒロキさん、バイオリンが吉田篤貴さん、チェロが関口将文さん、ギターがファルコンさん、ベースが芹澤薫樹さん、ドラムスが岡本健太さん。
 そして披露されたのは、ナット・キング・コールの歌唱などで有名な「LOVE」。観客に「L」「O」「V」「E」を手で表すよう促してから演奏が始まった。会場には一気に広がったより楽しいムード。

ウェイウェイさん


 「雨の日に妹と遊んでいて、濡れたので妹をハンカチで拭いてあげると、妹もじゃあお姉ちゃんも」と言ったのを思い出して作った曲です」と言って演奏したのは「Dance in the Rain」。後ろのスクリーンには幼いウェイウェイさんと妹のアミンさんの写真などが映し出された。
 次はウェイウェイさんを一躍有名にしたテレビドラマ「JIN」のテーマ曲。
 「この曲を通じてたくさんの人と出会って、この曲を通じて二胡を紹介出来て、うれしく思います」とウェイウェイさんは話した。
 続いては「家族の愛、友人同士の愛」が表現された「ゴッドファーザーのメインテーマ~愛のテーマ」。スクリーンには、映画の主人公ドン・コルレオーネが躍動していた時代のニューヨークのイタリア人街のような風景写真が写って演奏に華を添えた。
 前半の最後はロックバンドJourneyの80年代のヒット曲でスティーブ・ペリーのハイトーン・ボイスが冴えわたっていた「Open Arms」だった。
 後半のスタートはビバルディの「四季」からのクラシック・メドレー。
 その後、ロックバンドColdplayのヒット曲「Viva La Vida」だった。
 演奏が終わって、曲中でスクリーンに映し出されたメンバー一人ひとりの写真を「ネタ」にウェイウェイさんのトークが繰り広げられた。
 演奏に戻ってドボルザークの「新世界」。途中からギターバトルならぬギターと二胡のバトルも聞くことが出来た。
 そしてウェイウェイさんのオリジナル曲で「Tears」。二胡との出会いについてしばし語った。5歳の時にバイオリンを始め、15歳でメンデルスゾーンの第二楽章を聞いてそれを二胡で弾いてみたいというところからスタートしたという。「Tears。悲しい時の涙、うれしい時の涙、感動の涙、感謝の涙、いろいろな涙が流れます」とのコメントで演奏が始まった。
 続いて「木蓮の涙」。バッドフィンガーの楽曲をシンガー・ソングライターのニルソンが70年代初めにカバーしてヒットした「Without You」。
 「二胡は本当に女性の声に似ています。どこまでも歌心が伝えられるように奏でていきたいと思っています」。


 ウェイウェイさんによると、二胡の弦は2本。弓が間に挟まっている。昔は馬に乗りながら弾いたので弓が落ちないようにとのこと。以前は羊の腸から作ったガット弦だったが今はスティール弦。
 二胡の音域は2オクターブで、これはピアノの約7オクターブ半やバイオリンの4オクターブと比べても狭いとの説明もあった。
 「しかし、二胡の表現力は無限です」。
 ベートーベンのピアノソナタ「月光」が演奏されて、途中からロック調に変わり、ウェイウェイさんは再び台の上で演奏。
 ここで終演かと思ったが拍手が鳴り止まずアンコールに。
 映画「タイタニック」のテーマ曲「My Heart will go on」をしっとりと聞かせた。そして最後の最後はラプソディで幕を閉じた。
 この日はウェイウェイさんを先生と慕う学生たちが集まり、中国大使館からは陳諍公使が会場に駆け付けた。


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