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神宮外苑伐採強行!

 2024年10月28日(月)、午後1時過ぎ、東京の明治神宮外苑の再開発に伴う樹木の伐採が、23万人以上もの多くの人々の反対署名などにも関わらず、第二球場跡で開始された。
 警備員らが立っている同球場跡のゲート近くのクレーンが動き出し樹木の太めの枝を伐採し、それを吊り下げる光景が見えた。
 樹木の伐採はゲートの前の道を隔てて集まった反対派の人々の「樹木を守ってください」「伐採反対」「子どものため自然を守ってください」「100年の森を守れ」といった声の中、強行された。
 伐採が始まる可能性が高まったとして同日午前には「新宿区の外苑樹木の伐採許可に抗議する集会」が開かれていた。

抗議集会に集まった人たち


 三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センター(JSC)および明治神宮は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替え、絵画館前の芝生広場を会員制テニスクラブにし、2棟の超高層ビルを建てるなどの再開発を計画。それに伴い100年超の樹木を多数切る予定だった。

絵画館前芝生広場(2024年10月28日撮影)


 これに対しては強い反対の声があがり、東京都は一旦計画の見直しを事業者に対して指示していた。それからおよそ1年後の今年9月、事業者は樹木の伐採本数を減らすなどの見直し案を公表。
 その見直し案には多くの問題があったにもかかわらず、東京都の環境影響評価(アセスメント)審議会が10月21日、そのまま受け入れた。そして同25日午後5時頃、新宿区が伐採を許可した。
 ちなみに神宮外苑は新宿区、渋谷区、港区にまたがっている。
 新宿区の伐採許可は今回で3回目。過去2回の許可に対していずれも裁判が起こされており、「それらが係争中なのに樹木を伐採してくるというのはとんでもないことだ」との声が上がっていた。

移殖されるといわれている秩父宮ラグビー場のアプローチにある18本のイチョウ(2024年10月28日撮影) 事業者の見直し案ではこのイチョウについては全く触れられていない


 集会に駆けつけた日本共産党の吉良よし子参議院議員は「23万人以上もの反対の声を無視して強行しないでほしい。怒りの抗議をしたいと思います。総選挙の真っただ中、この穴だらけの計画を了承した東京都、すぐに許可した新宿区は民主主義に反する行為だと思います」。
 「対話などコミュニケーションなしの再開発の見直しは容認出来ず、声を上げ続けましょう」と吉良参議院議員は述べた。

吉良よし子参議院議員


 パリに本部を置くイコモスを上部団体とする日本イコモスが専門的見地からの指摘を度々行い事業者らとの対話を求めてきたが実現せず。また住民説明会は極めて限定した形で行われたのみだった。
 イコモスは昨年、計画の撤回を求める「ヘリテージ・アラート」を発出。今年に入ってからは日本弁護士連合会、海外からは国連人権理事会が開発に伴うパブリックな意見聴取の欠如を問題としていた。
  イコモスは国連教育科学文化機関(ユニセフ)の諮問機関。
 この日、日本イコモスの石川幹子理事(中央大学研究開発機構教授)は「イコモスのヘリテージアラートなど、数々の要請に一切耳を傾けることなく、伐採を強行することは、民主的ではない」として責任者に説明を要請し、ゲートが閉鎖される前の早朝より現場でスタンバイした。

ゲート前の石川・日本イコモス理事(白い服)


 三井不動産責任者は正午頃に現れて「私有地なので退去してください」と通告すると同時に警察に通報。
 警官3名がきて石川理事を連行しようとしたが、「ここは私有地ではなく、関東大震災後、後藤新平らが『準公園』としたところで、通常の私有地ではありません。勝手に樹木を伐採することはできません。東京都のホームページを確認してください」と説明した。
 すると警察は「わかりました」といって、連行せず。
 石川理事は「警察のほうが、正論を、速やかに理解してくださったことは、驚きでした」という。
 その後、扉が閉鎖されないように、動かなかったため、三井は警備員5名を配備した。
 一方、道路を挟んで開かれていた集会に参加した福守純さんは「再開発の目的は古くなった球場とラグビー場を建て替えることだと言いますが、本来の目的は超高層ビルなんだと思います。伊藤忠はなかなか(東京本社ビルを)立て替えられずに怒っているし、三井不動産はガバガバ儲けようとしています」と話す。
 「野球場だって改修すると野球が(その期間)出来なくなるっていうけど、甲子園や横浜球場の例もすでにあるんです。オフシーズンの3か月もあるじゃないですか」と福守さんは問いかけた。

福守純さん


 ラグビー場に関して大林聖弥さんは現在の秩父宮ラグビー場の収容人数は2万2千人とされていますが、再開発後は「およそ2万人だといいます。しかしそれは客席1万5千にフィールドに並べるイス5000を足した数なんです。つまりコンサートなどイベントも目的なんです」と話す。
 日本イコモスは100年超の樹木が多数伐採されることになり伝統的な都会の貴重な森が失われると警告してきた。
 大規模施設が出来ることで熱環境が変わる、すなわちヒートアイランド現象が生じて樹木にさらなる影響が及ぶとの指摘もなされている。
 マリアン・ハラさんは「古いものを壊すとCO2(二酸化炭素)が出るし、新しいものを作ればCO2が出る。これらを埋め合わせるには80年もかかるんです」と話す。
 地球温暖化が問題になる中、世界では樹木をもっと植えていこう、緑を増やそうという動きになっているのに逆行しているという。

マリアン・ハラさん


 集会参加者である佐野二三子さんはこのままでは次に本格的再開発のターゲットになるのは日比谷公園や葛西臨海公園だと危機感を持っている。そして大阪でも2万本の樹木がすでに伐採されたと指摘。
 「外苑でこの動きを止めなければいけません。私たちの気持ちはまだ政府に届いていません。聞こえていても聞こえぬふりをしているようですが、主権在民であって、私たちが声を上げるのは権利なんです」と佐野さん。

 
すわ伐採強行ということで集まったメディア 
伐採が開始された



 

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