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洋楽あれこれ:ローズ

 愛についてシンプルだが多弁な作品にベット・ミドラーが歌う「ローズ」がある。1979年公開の同名タイトルの米映画の主題歌として有名になり、翌年には米ビルボード誌のチャートで3位まで昇るヒット曲となった。
 「ローズ」は、人は愛をいろいろなものにたとえるという。例えば、川、カミソリ、渇望など。いずれもネガティブに捉えられているようでもある。「だが、愛は花だと私は思う。そして、あなたがその糧であると」と同曲では歌われる。
 「愛というのは幸運で強いものたちのためだけにあるものだと思うかもしれない。でも、思い出してほしい。冷たい雪の下には種があるということを。その種は春に太陽の愛をあびてバラを咲かせるということを」と同曲は締めくくられる。
 映画でジャニス・ジョップリンをモデルにした歌手ローズを熱演したベット・ミドラー。奔放にして繊細、あばずれにして純情なスター歌手ローズ。
 ドラッグとセックスとロックンロールを信奉する彼女の存在の根底には実は愛への渇望があるということが描かれた映画だが、最後にローズがステージ上で倒れた後に、エンドロールをバックに流れるのが「ローズ」という主題歌なのである。
 ベット・ミドラーはこの映画のローズ役でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得、また主題歌「ローズ」はグラミー賞を受賞する。
 作詩・作曲を手がけたのはカリフォルニア州出身の女性ソングライターであるアマンダ・マクブルーム。
 彼女のホームページによると、この歌が生まれたきっかけは、ある日の午後フリーウェイをドライブしていた時にかけていたラジオから流れてきたレオ・セイヤーが歌う「マグダレーナ」という歌の歌詞であった。

愛はカミソリのようなものではない
 この曲の「あなたの愛はカミソリのようなもの。私の心はただの傷跡」という歌詞が気にかかり、アマンダは「愛はカミソリのようなものではない」と思って、愛とは何かを考えたという。
 そして思い浮かんだ言葉を暗唱しながら、車を急いで家に走らせた。到着するや家に飛び込むとピアノの前に座り、10分後には「ローズ」という歌が誕生していたそうだ。
 ジャニス・ジョップリンを描いた映画の主題歌候補としてプロデューサーたちに提出されたが、彼らはこの歌を気に入らなかった。さえないし、賛美歌みたいだし、なにせロックンロールでないというのが理由だった。
 映画のスーパーバイザーだったポール・ロスチャイルドがプロデューサーたちに再考を促したが、結果はノー。
 最終的にベット・ミドラーがこの曲を気に入り、映画に使われることになった。一聴すると地味なこの歌の深みにはまる人が多かったのだろう。東西を問わず、この歌「ローズ」をカバーするアーチストは後を絶たない。

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