
ビートルズとストーンズ
【スピリチュアル・ビートルズ】「ビートルズは1970年に解散し、ストーンズは生き残る。とはいえ、僕は根本、基本的にはビートルズの方がお兄さん、ストーンズは弟。ビートルズのやっていることをストーンズは踏襲し、オリジナリティを身につけようという姿勢だったと思います」。
日本ローリング・ストーンズ・ファンクラブ(RSFC)会長の池田祐司さんは2023年8月6日(日)にBAUHAUS ROPPONGI(東京都港区六本木7-13-2アーバンビルB1F)で行われた「ビートルズから見たストーンズ ストーンズから見たビートルズ」と題されたイベントで語った。トークの相手はビートルズ研究家の藤本国彦さん。

池田さんは、ストーンズはミック・ジャガーがリードボーカルで踊りながら歌うので、「扇動者ミュージックだと思っていました」という。
ビートルズもストーンズも同じようなカバー曲がある。例えば、「マネー」、「オー・キャロル」、「ロール・オーバー・ベートーベン」とか「メンフィス・テネシー」など。「ストーンズはあくまでも先達のマディ・ウォーターズとかチャック・ベリーとか、そういう古い昔のブルースマンの音楽を職人肌で活かそうとしたバンド」だと藤本さんは言った。
「ストーンズが忠実にブルースを再現しようとする中、ビートルズはロニー・ドネガンとかのスキッフルとかロカビリーのような白人ロック(から入っており)、ビートルズは”なんちゃってブルース”みたいな、白人のロックンロール解釈みたいな」ことをしたバンドだと藤本さんは分析した。
RSFC会長の池田さんは「ポップス性やポピュラリティということではビートルズが上。ストーンズはマニアックなグループであって、当初、ブライアン(・ジョーンズ)はR&Bだと言っていて、そこらあたりに核心があるような気がします」と話した。
池田さんは続けた。「ビートルズのほうが4人でロックンロールをやるというレベルで、(ストーンズより)1,2年早くて、それにすごい世界的人気を早々と獲得していった。ストーンズは今でこそ並べて語られるが、(ビートルズは)並べて語ることの出来ないパイオニアだったし、後を追いかけたストーンズということで、同次元で語れないような気がします」。
「60年代のヒット曲に限っても、はっきりいって、僕はストーンズ・ファンなんですが、ビートルズさんには追い越せない。彼らは早々と解散してしまいますが、今でも語られるというのは凄いと思いますね」。

ビートルズの解散後、70年代のロックはより産業ロック化していく。「ストーンズはそれを生き残り今もやっている。ポール(・マッカートニー)は一人でやっている。ジョン(・レノンは)「なぜもう一回戻ってやらないのか」と訊かれて、「ライブを見たいのならローリング・ウィングスを見に行けばいい」とジョンらしい物言いで言っていた」と藤本さん。
ストーンズのそもそもについて池田さんは言った。「ブライアン・ジョーンズの発想としてはアメリカの黒人音楽をコピーして演奏して楽しむつもりだったのが、(マネージャーの)アンドリュー(・ルーグ・オールダム)が「稼げ、稼げ」っていうのでオリジナル曲を作るようにってキッチンに閉じ込められて一生懸命作った最初が「As tears go by」というバラードだった。それこそがブライアンの考えたことと最初から違ってきている」。
そしてストーンズは「Satisfaction」や「Let's spend the night together」といったヒット曲を出す。「リズムとギターコード進行からすると、ポップス寄りになっていく」。と池田さんは言った。そして一番の違いともいえるのはミック・ジャガーの存在だという。「歌って踊る。楽器は弾かない。ビートルズはみんな楽器を弾く。そこの違いだと思う」。
ビートルズの音楽の力、創作力にストーンズは今でもかなわないと池田さんは見ている。しかし、「ストーンズはむしろ努力家。持ち駒が少ないので深く同じことを頑張っちゃう。繰り返しの持続性が生きていると思う」。
一部の締めくくりとして池田さんは言った「音楽が今でもパワーを持っているというところで、この2つのバンドは凄いと思う」。そして、ストーンズのトリビュートバンド「The Beggars Banquet」の演奏が始まった。
テーマは60年代、ブライアン・ジョーンズがいた時期の曲がセットリストとなった。順番に「Route 66」、「Let's spend the night together(夜をぶっとばせ)」、「Roll Over Beethoven」、「Walking the dog」、「Lady Jane」、「Little Red Rooster」、「Talking about you」、「It’s all over now」、「Sympathy for the Devil(悪魔を憐れむ歌)」と「Satisfaction」。




そして2部が始まった。まずはビートルズからストーンズに提供された曲「I wanna be your man(彼氏になりたい)」について。藤本さんは「この曲をミックとキース(・リチャード)の間の前で書いたっていわれているけれど嘘だと思います。準備されていたと思います」と言った。
ジョンとポールの初期の楽曲「One after 909」もストーンズに提供する予定があったという。「それが「I wanna be your man」になったとジョンがゲット・バック・セッションで話していたので本当だと思う」と藤本さん。
池田さんは「I wanna be your man」について「彼氏になりたいってダサい歌詞だな」。藤本さんも呼応して「ポールがリンゴ(・スター)に歌わせたのは歌詞が簡単だから。リンゴは歌詞の覚えが悪いから」と語った。
池田さんは言った「「I wanna be your man」の謎をもっと真剣に考えた方がいいと思いますよ」。会場からは笑い声が起こった。
第1部でも話されていたが、藤本さんは「ビートルズは自分のところに引き寄せてやる。翻訳がうまい。一方、ストーンズは職人肌で同じことを繰り返していき深みにいく。ビートルズは幅を広げていく」と2つのバンドの楽曲へのアプローチあるいは姿勢の違いについて語った。
最後にビートルズのトリビュート・バンド「The Beatmasters」が演奏した。趣向を凝らして米国のテレビ番組「エド・サリバン・ショー」で演奏した曲でセットリストを構成した。順番に「All my loving」、「Till there was you」、「She loves you」、「This boy」、「From me to you」、「Roll over Beethoven」、「Please Please me」、「I saw her standing there」、「I wanna hold your hand」、「Act naturally」、「Ticket to ride」、「I feel fine」、「I’m down」そしてアンコールは「Help」だった。

