白崎映美&白ばらボーイズ
文字通り歌い踊るショーだった。
歌うは「日本の歌姫、アジアの歌姫、世界の歌姫」白崎映美さん。元上々颱風のボーカルの一人だ。その表情豊かな歌声に定評がある。
楽器を奏でるはキーボード小林創、ベース田野重松、ドラムス熊谷太輔。そう、人呼んで「白ばらボーイズ」である。
踊るは瞳ゆりさん、門柳久代さん、うつみちはるさん。
エンターテインメントショー「リリアンガーデン」の9回目が2024年6月13日(木)、老舗ライブハウス「銀座TACT」(中央区銀座6-9-15タクトワンビルB1)で行われた。
定刻近く、幕はまだ上がらず。ただその前に椅子が置かれてそこに人形が据えられた。すると女性の声が会場に流れて来た。
「マスコットアイドルのリリアンちゃんです・・・これから楽しいショータイムが始まります」。期待が高まる。
そしてやはり映美さん。ド派手に始めてくれた。
銀色の衣装に身を包んだ映美さんが現れると大きな拍手。
ダンサー3人を従えて、まさに「女王」の貫禄だ。
ダンサー3人が揃うことは時々だ。それは次の場面に備えて少なくとも一人はきがえている必要があるからだろう。
フランス語が始まったのかと思うと、よく聞いていると山形は酒田語だと気が付かされる。そう、映美さんは酒田出身なのだ。
例えば「群衆」という作品。これはエディット・ピアフで知られるようになったシャンソンの名曲である。あるいは「ピンクのチャリンコ」。
白ばらボーイズ誕生も酒田との関わりからだ。映美さんの故郷、山形県酒田市に存在する白ばらというキャバレー復活物語から生まれたのだ。
昭和から平成にかけて営業していたそのキャバレーには、「長い時間をかけて息づいてきたその時代の美意識とエネルギーが今も充満している」(CD「群衆」のライナーノーツより)。
映美さんはそのキャバレーの空間が持つ圧倒的な存在感に胸を打たれてそこに大きな価値を見出す。
そしてそのキャバレーを復活させようと様々な挑戦が始まる。その取り組みの中から生まれたのが白ばらボーイズだった。
度々、映美さんもダンサー同様に衣装替えをする。
シルバーの次はピンクだった。
まず、映美さんが歌って、途中から客席に降りてきつつ、繰り返した歌詞が「あなたの隣に私、あなたの背後に私・・・」。
お客さんの後ろに回り込んだりして歌った。
ここで瞳ゆりさんから挨拶があった。そしてメンバー紹介だ。
うつみちはるさん:カンフー大好き。ジャッキー・チェン大好き。
瞳ゆりさん:6歳の時からバレエ。ある時SKDのレビューの素晴らしさに打たれ、高校にも行かずSKDに入り、そこを経てリリアンへ。
門柳久代さん:現代舞踊をずっとやっていて、日劇ミュージックの方のショーを見て素晴らしいと感動し、それから今の活動を。
ここで再びちはるさんが話した「宮城県の石巻に実家があります。小学校1年か2年の時、町にミュージカルがやってきました。坂上忍さんが主演の三銃士でした。素敵だと思って興味がわいたんです」。
「東京に出ました。ショークラブでバイトをしながら学校に入ります。オーディションがあっていろんなカンパニーがある中で、リーゼントなどちょっと変わったカンパニーがありました」。
「座長から呼ばれたんです。「お前はへただけど、もしよかったらメンバーにならないか」って。それで入れてもらったんです」。
「夜、みんなとお酒を飲んでいて、三銃士の話をしたら、実はそれをやっていたのは目の前のみんなだったのです。それを知らないで入ったのです」と不思議な縁の話をしてくれた。
ここで「日本の歌姫、アジアの歌姫、世界の歌姫」の掛け声とともに映美さんが再びステージに現れた。
「人生でこんな格好をする日が来るとは思わなかった。すみません、おじさんの女装みたい」と話すとどっと笑いが起こった。
「瞳ゆりさんとは長い付き合いなんです。250年くらいですよ」という冗談を飛ばしつつ「そしたらゆりちゃんが誘ってくれたんです」。
ここで楽器演奏者たちの紹介もあった。
休憩を挟んで後半がスタートした。
まずは着物姿での踊りだ。
それが終わるとピアノのイントロに促されるように映美さん登場。
ゴールドの衣装に着替えて来た。
ダンスを挟みつつ、映美さんは歌う。
例えば、ライザ・ミネリの歌唱でも知られる「キャバレー」。
あるいは「Sing Sing Sing」。
途中から衣装はゴールドから黒に代わる。
本編が終わる。アンコールで幕が再び上がる。
マイクスタンドが中央にある。
映美さんが歌うはベット・ミドラーの名曲「ローズ」。
しっとりと歌い上げるかとおもいきや、途中から歌詞がジョークのようになってゆく。「コンビニ弁当ばっかりし食べてちゃダメ」だとか「歯をちゃんと磨けよ」とか、ドリフか!と思う場面も。
いかにも映美さんだ。
マイクを一旦はスタンドに戻す。
しかし、一回引っ込んだ映美さんが再び中央に出て来てスタンドをわしづかみにして歌い始めた。「白ばらにて」だろうか。
お前は西城秀樹か!というようなマイクスタンドパフォーマンス。
最後は全員が横に並んで観客に挨拶をした。
惜しみない拍手が送られた。