パティ・ボイド写真展
【スピリチュアル・ビートルズ】元モデルで写真家のパティ・ボイド。というよりはジョージ・ハリスンやエリック・クラプトンの元妻といったほうが通りがいいだろう。「いとしのレイラ」、「ワンダフル・トゥナイト」、「サムシング」といったロックの歴史に残る名曲を生み出すインスピレーションを与えた「ミューズ」だ。
そのパティが撮影したエリック、ジョージ、リンゴ・スター、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジェフ・ベックといったスターたちの写真が一堂に会した「『Pattie Boyd: My Life in Pictures』~パティ・ボイド写真展」がタワーレコード渋谷8階のSpace HACHIKAIで開催中。
同写真展を2023年6月1日(木)に訪れた。入場料は500円。前日にオープンしたばかり。写真展は6月14日(水)まで開かれている。
約40点の作品が展示されている。一番目立っているのが「Pattie & George's Rose Garden」というカラー写真。真っ青なタンクトップのパティとジョージの後ろには真っ赤なバラ。1968年に撮影された。
他にも特に印象に残ったのは「George & Rainbow Panorama」という89年の作品。横長のカラー写真で、フライヤーパークにある森の上に虹が見事に架かっているのをジョージが眺めている姿を撮ったもの。
ビートルズ関係ではインドで撮影されたショットが目を引く。「Paul、Ringo & John」、「John and Paul with Super Eight」と題された2枚はいずれも68年に撮影された白黒写真だ。
ほかにもジョージのソロ作品『リビング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』のジャケット写真撮影時のカラー作品(72)やリンゴがハリー・ニルソンと一緒の写真なども興味深かった。前者は公式カメラマンが疲れて休んでいる時にパティが代わりに撮った一枚だという。
もちろんエリックの写真も多い。例えば、「Eric & Mick、Live Aid」という85年の作品。フィラデルフィアでのライブエイドの前夜、エリックとミック・ジャガーがホテルにいるところを撮ったもの。
そのほか、先日亡くなったジェフ・ベックを彼自慢の車「ホットロッド」と一緒に撮影した「Jeff Beck with his Hotrods」(2005)といった珍しい写真も展示されており、ファンならずとも見逃せない。
パティがジョージと知り合ったのはビートルズの映画「ハード・デイズ・ナイト」(1964)撮影中だった。パティは高校生役として出演していた。19歳だった。つきあうようになり、66年に結婚する。
パティはジョージの希望を入れて、結婚を機にモデルの仕事を辞める。だが、ジョージが東洋哲学に傾倒していったり、また彼の浮気癖などから、次第に2人の関係が冷えてていく。そこに現れたのがエリックだった。
エリックの激しく情熱的なアプローチに、彼のもとに行くことを決断したパティ。ジョージとは74年に事実上別れる。その5年後の79年にエリックとパティが結婚。だが、エリックとの結婚生活は困難を極めた。
パティの自伝「ワンダフル・トゥデイ」によると、エリックのアルコール依存症と女癖の悪さによるものだった。89年に離婚。
パティはジョージとはパーティなどの席で時々顔を合わせていた。パティは回想した。「彼(ジョージ)は私にとって兄のような存在になっていた。完全に安心していられる存在、何でも話せる存在になっていた」。
そしてパティは、ジョージの再婚相手であるオリビアや息子ダニーとも交友を持つようになる。「私たちは家族だった」とパティ。パティを巡っていろいろあったものの、ジョージとエリックの友情は固かった。
ジョージは2001年11月、他界した。その時パティはこう思ったという。「すべてが失われた気がしたのです。ジョージがいない世界を想像することなど、私には耐えられることではなかったのです」。
パティがジョージと最後に会ったのは当時サセックスにあった彼女のコテージでだった。ジョージが電話をかけてきて、リンゴと彼の再婚相手バーバラに会いにサセックスに行くので、パティにも会いたいという。
だが、パティはすぐに思った。「ジョージは本当は(パティの)暮らしぶりを知りたくてやって来たのだと」。そしてパティは今、こう思っているという。「最後に彼と、あんな風に会えて良かった」。