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入院中心の精神医療”破綻”

 在院患者が減る一方の時代が訪れたことが明らかになり、精神科病院への入院中心の日本の精神医療政策が”破綻”しつつある。
 2024年1月の厚生労働省「病院報告」によると、在院患者は1991年のピーク時に比べておよそ9万人減少した。
 在院患者の大幅減少の背景には「在院患者が”新入院”と”長期入院”に二極化したことがある」と精神科病院に看護師として長年勤務した氏家憲章さんは話す。新入院患者、長期入院患者ともに減少し、認知症患者は半減。
 2013年に3万1822人だった新入院者は、今年1月には2万8114人へと減少。元日本医労連・精神病院部会長で元社会福祉法人理事長でもある氏家さんは「在院患者が増える要素がなくなった」と話す。
 それに伴い、全国の精神科病院の病床利用率も低下している。
 全国平均の病床利用率は80.9%。およそ2年前には83%台だった。
 47都道府県の内訳をみると、80%台が24都道府県、70%台が21県、60%台が2県(福島県、和歌山県)。

病床使用率の低下が経営を直撃
 これは精神科病院の経営を直撃する。
 氏家さんの分析では、病床使用率が95%以上なら「青信号」で経営安泰、90~94%は「黄色信号」で要注意だが経営はまだ可能だが、90%を切って80%台に突入すると「赤信号」で経営は危険ラインに突入するという。全国平均はすでに赤信号だということだ。
 そして全国の空病床は6万床に上っている。
 数字をみると、2004年に1兆4859億円だった精神科入院医療費は2020年には1兆3259億円に減少(厚労省の「国民医療費」)。16年間に1600億円減ったことになる。
 1980年代にこれは予期されていた。そして「それを地域ケア体制の構築に活用できる。入院中心から欧米諸国のように地域ケア中心の精神医療へ政策転換出来る転換の”チャンス”がくる」と言われていた。
 だが、現実には政策転換への動きが起きていない。

岐路に立つ日本の精神医療
 日本の精神医療は岐路に立たされている。
 入院中心から地域ケア中心の精神医療に政策転換していくには、長期入院者を地域に移してゆく必要があるが、この時に「経営問題」や「雇用問題」が生じる。日本は精神病床の90%が民間病院に偏っており、これらの問題への有効な政策がないと政策転換が進まないと氏家さんは話す。
 氏家さんは、袋小路に入ってしまった日本の精神医療が打開していくのには、同じく民間病院中心のベルギーの改革が参考になるという。
 日本は70年以上、安かろう悪かろうの精神医療を続けてきた。
 もともと、日本は精神科病院の病床数の多さ、入院日数の長さが国際的に問題視されてきた。精神科病床数は33万8000床(2014年)。人口1000人当たり2.7床で、諸外国に比べてとびぬけて多かった。
 例えば、ベルギーは同1.7床、ドイツは同1.3床だった。
 平均在院日数は274.7日(2015年)、すなわち約9カ月。
 韓国の124。9日、イギリスの42.3日、スイスの29.4日、ドイツの24。2日などとの比較でも、日本の平均入院日数は非常に長かった。


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