映画「香港 裏切られた約束」
1997年7月1日、香港の主権はイギリスから中国に返還された。中国政府は返還時に少なくとも50年間、2047年までは「一国二制度」の下で香港市民の自由は保障されると約束した。
しかし、その約束は破られる。
2014年、普通選挙を求める民主化運動「雨傘運動」が起こる。2019年、中国本土への犯罪人引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正をきっかけに民主化を要求する200万人もの香港市民の抗議運動が始まる。
ところが中国政府は、反中国的な言動を取り締まるため「香港国家安全維持法(国安法)」を2020年に施行。さらに「国家安全維持条例」が今年3月に施行されたが、これは国安法より厳しいものだ。
このドキュメンタリー映画「香港 裏切られた約束」(2024年/香港/
116分)は、トウィンクル・ンアン(顔志昇)が2019年6月4日、ビクトリアパークでの天安門事件追悼集会に撮影したところから始まる。
香港人の思いを伝えたいという一念でその時以来、香港民主化運動を記録した。そして逮捕を逃れるためロンドンに亡命し、映画を完成させた。5年目の節目に問うドキュメンタリーだ。
中国語タイトルは「因為愛所以革命」。つまり「愛ゆえの革命」とでもいうのだろうか。それについてンアン監督は「最後のシーンでペンキでこの文字が描かれています。タイトルをどうしようかと考えている時にこのペイントを見て決めたのです」という。
「行動、家族、友人、彼女・・・このタイトルはこの作品のすべてに通じると思ったのです。このタイトルにしたのは皆さんのおかげです。みんなで作った作品だということのタイトルなのです」。
ンアン監督は2024年9月5日(木)、アップリンク吉祥寺での上映後のトークショーで語った。中村航・テレビ東京記者・ディレクターは「香港のことをずっと取材してきたが、ずっと関心を持ってもらうことが難しい。でもそれゆえにやる価値があると思ってやっています」と話した。
さらに「若い人たちは自分たちのために、お年寄りは若い人たちのためにといって民主化運動をしていると説明していた。それを続けている香港の人たちに我々も関心を持たないといけないと思っている」と中村さん。
「映画の中で「香港人」という言葉が度々発せられている。かつて香港の人たちはエコノミックアニマルといわれていたが、今は香港への帰属意識が生まれており、それがないと続かないのではないかと思う」。
映画はノンストップで民主化運動と権力側との衝突を映しだす。闘争のやり方については香港でも意見が割れているとンアン監督はいう。
「モチベーションが下がるとしても、もっと平和的デモが出来ないかと考えている人達もいます」。
中村さんは「200万人の平和的デモがありました。香港の人口750万人のうちの200万人が街に出ましたが、政府は動かない。通用しないのではないかという気持ちがあったが、報道もある意味、過激なことばかりを報道するから」とメディアの問題についても言及した。