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「宮脇綾子の芸術」展

 身近なモノを対象として布と紙で美しく親しみやすい作品をつくり続けた宮脇綾子をひとりの優れた造形作家として捉え、約150点の作品と資料によって紹介する展覧会がやって来る。
 「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展が2025年1月25日(土)から3月16日(日)まで東京ステーションギャラリー(千代田区丸の内1-9-1:JR東京駅丸の内北口改札前)で開催される。

《切った玉ねぎ》1965年、豊田市美術館


 宮脇の作品はアプリケ、コラージュ、手芸などに分類されてきたが、それらはいずれの枠にも収まりきらない豊かな世界をつくり上げている。
 モティーフにしたのは野菜や魚など、主婦として毎日目にしていたもの。
 それらを徹底的に観察し、時に割って断面をさらし、分解して構造を確かめるといった、たゆまぬ研究の果てに生み出された作品は、造形的に優れているだけでなく、高いデザイン性と繊細な色彩感覚に支えられ、いのちの輝きを見事に表現している。
 彼女の作品には、生物の多様性が息づいている。ワラビやゼンマイの茎葉の巻き具合、イカの干物や干し柿などの色やかたちの微妙な変化を、宮脇の眼は見逃さずに捉えている。

 《鰈の干もの》1986年、個人蔵 
《ねぎ》1964年、個人蔵


 宮脇は素材にこだわった。好みの古裂を探して骨董屋や骨董市めぐりをしていた。業者から使い古された布を引き取り、またさまざまな布を持ってきてくれる知人も多くいたようだ。
 子どものころ貧乏だったことや、姑がモノを大切にする人だったことの影響で、どんなハギレも捨てられないと宮脇は書いている。

《いい形・いい布》1986年、豊田市美術館


 彼女の関心は、貴重な古裂だけでなく、レースやプリント生地をはじめ、洗いざらしのタオル、古くなった柔道着、使用後の布製のコーヒーフィルター、さらに石油ストーブの芯まで、あらゆる素材に向けられていた。
 宮脇はさまざまな柄や模様の布を作品に用いた。伝統的な吉祥紋から、藍染の縞柄や格子柄、紅型の大胆でカラフルな文様などだけでなく、プリントされた花柄や松竹梅の文様まで。こうした模様を巧みに組み合わせて、写実的な作品を作り上げることも珍しくなかった。

 《あんこう》制作年不詳、個人蔵
《鮭の切り身とくわい》1980年、個人蔵

 開館時間は午前10時から午後6時(ただし、金曜日は午後8時まで)入館は閉館30分前まで。休館日は月曜日(2月24日、3月10日は開館)、2月25日(火)。
 入館料は一般1300円、高校・大学生1100円、中学生以下無料。
 問い合わせは℡03-3212-2485。東京ステーションギャラリー公式サイトは https://www.ejrcf.or.jp/gallery/


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