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包括的反差別法を!㊤

 12月10日は世界人権デー。今年のその日、「包括的反差別法をつくろう!」という集会が衆議院第二議員会館の会議室で開かれ、労働法やジェンダー法の専門家である浅倉むつ子早稲田大学名誉教授が講演した。
 日本は差別解消を標榜する法律が個別にたくさんあるものの「それぞれが脆弱。いきなり包括的反差別法はどうかと思われるかもしれませんが、今それを作る意義はあると思います」と浅倉先生。
 個別の法律だとそれが対象とする人だけの関心事になりがちだが、包括的反差別法を制定すれば「差別の解消、平等の実現が全ての人々にとって共通の課題となって議論が出来るようになります」。
 異なる法律が入り組んでいる結果、「権利を求める人が法の谷間に落ち込むことがないようにして、法にアクセスしやすくする」必要もあるという。
 浅倉先生は専門の労働法を例に出して説明した。雇用関連差別の法規制が包括的でないことの課題として男女雇用機会均等法(均等法)や労働基準法など複数の立法がバラバラに存在することだと指摘。
 日本ではセクシャルハラスメントが性差別として禁止されていないし、均等法のセクハラ防止等に関する事業者の措置義務規定は「性的な言動」を対象とし、「女性はお茶くみ」といったジェンダーステレオタイプによるハラスメントはそこには含まれていないという。
 こうした曖昧さを解消するには包括的に差別を禁止することが有効だと指摘した。

「平等のヒエラルキー」を解消する必要
 また「平等のヒエラルキーをなくし、被差別者相互の対立を解消する」効果があると浅倉先生は話した。差別を受けている人たちが互いに足を引っ張り合わず、同じ目的へ同調させる効果を生むというのだ。
 さらに包括的反差別法の意義として浅倉先生は「いわゆる”複合的差別”を受けている人を救済しやすくなる」と話した。
 複合的差別とは、例えば、黒人女性が差別されているとすると、黒人差別と性差別の両面があって、それぞれに差別を立証する必要が今はあるが、包括的に差別を禁止すればそれは解消されるという。
 浅倉先生は海外で包括的差別禁止で先をいっている例としてイギリスの「2010年平等法」を挙げた。この法律は、それまで9分野に分かれていた差別禁止立法や規則を統合したという。
 なぜ統合が必要だったのか。
 ①複雑化した差別禁止立法を簡易化して人々が利用しやすくするため②複数の人権のための国内機関を平等人権委員会(EHRC)に統合するが、これは財政的にもプラス③ヨーロッパ人権条約とEU法を遵守するため④社会改革を実現して平等のヒエラルキーを解消するため。
 この英国の包括的差別禁止法である2010年平等法で禁止される事由(保護対象)は:年齢、障害、性別変更、婚姻、民事パートナーシップ、妊娠・出産、人種、宗教、信条、性別、性的指向。
 禁止される差別行為には、直接差別、間接差別、ハラスメント、報復などがあり、「直接差別」には、障害者自身を差別するだけでなく、障害者の面倒を見ている人などを差別する「関係者差別」や、外国人でないのに外国人だと思われて差別されるといった「認識上の差別(みなし差別)」も含まれる。また、障害者自身を差別するような「直接差別」でなく障害者の面倒を見ている人などを差別するとか外国人でないのに外国人だと思われて差別されるといった「間接差別」も禁じている。
 ちなみに日本には世界で180か国以上にある国内の独立した人権機関がない。国内人権機関は国際的な人権規準が守られているかどうかを監視し遵守させる機関だが、日本にあるのは法務省内の機関で独立性がない。
 浅倉先生は定年後、「女性差別撤廃条約実現アクション」(条約の選択議定書の批准を求める共同行動)と「国際女性の地位協会」という二つのNGOで共同代表として活動している。

 朝倉先生の講演後、集会に駆けつけた国会議員が紹介され挨拶した。

集会に駆けつけた国会議員

 写真左から。
 れいわ新選組の佐原若子参議院議員、社民党党首の福島みずほ参議院議員、れいわ新選組の上村英明衆議院議員、社民党の大椿裕子参議院議員、ここからは立憲民主党で川原田英世衆議院議員、水野素子参議院議員、有田芳生衆議院議員、打越さく良参議院議員。
 (続く)

 

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