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映画「トランプの創り方」

 先の米大統領選挙で地滑り的勝利を収め大統領に返り咲くことになったドナルド・トランプ。トランプという男がどのようにして生まれたのか。どのようにしてトランプという人物が創られたのかを描いた映画がやって来る。
 破天荒な言動や行動で知られるトランプ。2度目の大統領としてどんな政治を行っていくのか、それを解くカギがこの映画にはあるような気がする。
 来年1月20日、トランプは正式に第47代米大統領に就任する。
 その3日前ー2025年1月17日(金)、映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」(2024年/アメリカ/123分/配給:キノフィルムズ)がTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開される。


 脚本は長年トランプを取材してきた政治ジャーナリストのガブリエル・シャーマン。監督はこれまで様々な問題作を手がけてきたアリ・アッバシ。
 青年トランプが当時のニクソン大統領とも交友があり、やり手の弁護士ロイ・コーンと知り合い、気に入られることからすべてがスタートする。
 トランプを一流の実業家へと育て上げるロイは勝利への3つのルールをトランプに伝授するーー①攻撃、攻撃、攻撃に尽きるということ②非を認めるな、否定せよ③どれだけ劣勢に立たされても勝利を信じろ。

© 2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.


 いかにも今のトランプではないか。
 ロイは60歳間近で亡くなる。トランプとは微妙な時期を経てはいたが、最後は表向きはかつての親子のような関係で終わった。
 ロイの死後、記者のインタビューに答えて、トランプは成功の秘訣として、かつてロイに授かった3つのルールを口にする。
 それはどうして学んだのかと聞かれ、トランプは「生まれつき勘がいいんだ」と答え、ロイの名を出すことはなかった。
 ロイは亡くなる前にトランプの「本当の素顔」に改めて気づき、それはロイの教えによるものでもあったのだが、それを好くは思わなくなっていた節がある。しかし、ロイはそれを表に出すことなく、亡くなっていく。
 当然、トランプはそれには気づかなかっただろう。そういう男だ。
 時代はレーガン政権。トランプタワーを建設した彼は時代の寵児となり、アトランティックシティにも進出し、けた違いの儲けが得られるカジノに進出するなど実業家として活躍を続けていた。

© 2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.


 この映画の主人公はもちろんトランプだ。だが、それと同時に重要なのはロイ・コーンという男だ。映画のタイトルに「アプレンティス(apprentice)」という文字がある。これは「徒弟」という意味だ。
 ロイを鏡に、そこに映し出されるトランプの姿がこの作品ではもっとも重要なポイントであり見どころだと思う。
 「トランプ自伝」(ちくま文庫)ではロイについてこう書いている「ロイは手ごわい男だったが、友人はたくさんいた。私もその一人だったとはばかることなく言える。彼は心底誠実な男だった。彼にとってそれは名誉の問題だったのだ。彼はまた非常に頭が切れたので、味方にすると心強かった」
 「たとえ個人的に見解が食い違っていても法廷ではベストを尽くして弁護してくれる。私を弁護することが彼にとって必ずしも有利ではない場合でもそうだ。彼には全く裏表がなかった」。
 また、トランプとイヴァカとの出会いや、その後二人が夫婦としてすれ違っていった様子なども映画では描かれている。
 さらには父フレッドら家族たちとの微妙な関係も見て取れよう。
 テンポがよく、娯楽作品としても上出来な映画だと思う。
 

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