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外苑再開発認可取り消し訴訟

 東京都に対する神宮外苑再開発認可取り消し訴訟の第6回口頭弁論が2024年12月12日(木)、東京地裁で行われ、再開発で近くに球場が建てられることになっている北青山一丁目アパートの住人が再開発によって起こることが予想される騒音や風害について懸念を表明した。
 都内の司法記者クラブで行われた記者会見で原告団長のロッシェル・カップさんは「神宮第二球場跡にあった大きなヒマラヤ杉も伐採されてしまった。そのあたりでは一番高い樹木だったこともあり、SNSで多くの人が悲鳴を上げたんです。大変残念です」と述べた。
 カップさんは「係争中であるにもかからわらず樹木伐採が進んでしまうことは非常に、非常に残念です。これは悲しいことですが、今回の(最初の伐採予定)70本は全体の10%に過ぎないので、声を上げ続けて、残りの90%を救うように努力したい」と力を込めた。
 昨年秋、神宮外苑再開発における樹木伐採の問題などが批判を招いたことから東京都は事業者ー三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センター(JSC)と明治神宮ーに対して伐採を中断するように要請した。

新宿区長認可で始まった樹木伐採
 今年9月、事業者は再開発計画の見直し案を提示し、東京都の環境影響評価(アセスメント)審議会はこれを了承し、計画が再び動き出した。10月27日には新宿区長が認可をし、翌日、樹木伐採が開始された。

樹木伐採が第二球場跡で開始された(2024年10月28日撮影)


 原告は東京都の同審議会の審議は「一回だけで不十分」であるし、そもそも住民に対する説明も不十分だと主張している。
 会見で農端(のばた)康輔・弁護士は「事業者が近隣住民に十分な説明をしていないのは大変大きな問題だと思う・・・説明を求める声に誠実に対応するのは当たり前の話だと思っています」と話した。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)傘下の日本イコモスは今年9月の再開発計画の見直しで伐採本数が減ると事業者が主張したが「樹木の本数のみの報告であり、都知事が要請された「緑の質」に関する検討が欠如している」と指摘。
 さらに日本イコモスは「イチョウ並木の衰退は水循環だけでなく、地球温暖化に伴う熱環境の変化が大きな要因であることの・・・検討が行われていない」とヒートアイランド現象悪化への懸念とともに述べていた。
 しかし、環境影響評価審議会はこれらの提言を顧みることなく、今日、樹木の伐採が続行されている。

イチョウ並木とヒトツバタゴ
 北青山一丁目アパート住人(港区)の原告は、明治神宮外苑の歴史とイチョウ並木そして、かつてはナンジャモンジャといわれた名木ヒトツバタゴについて意見を陳述した。
 イチョウ並木は「その背後にある森と数々の歴史を刻んできた建物とともに一体となってはじめて素晴らしい景観として眺められるのです。イチョウ並木を圧倒するような200メートルに及ぶコンクリートとガラスの建造物がそびえていては違和感しかないでしょう」。

神功外苑の象徴ともいえるイチョウ並木(2024年10月28日撮影)


 「神宮外苑には歴史と文化が色濃く残されており、他にはない多様な樹種が体をなすものとして存在している特別な森です。開発計画を立てるならば、いかにしてこの貴重な森を残すかをコンセプトの筆頭に掲げるべきです」とその原告は述べた。
 さらに外苑を象徴する木としてイチョウ並木と並ぶヒトツバタゴに言及、このイチョウ並木が誕生する80年以上前から存在していたヒトツバタゴ
は外苑にまだ150本存在しているが、「憂慮すべきは全体の三分の一にあたる50本ほどが開発計画地にあって、伐採または移植の対象になり、先人の努力もむなしく消滅しようとしている」と話した。
 裁判が始まっておよそ1年となる。そろそろ原告適格の判断がなされ、中身の審査に本格的に入っていくのではないかという。
 次回(7回目)の口頭弁論は来年2月19日(水)に予定されている。
 (冒頭の写真(左から)農端弁護士、長谷川茂雄弁護団事務局長、原告代表カップさん、山下幸夫弁護士)
 
 
 
 

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