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洋楽あれこれ:永遠の人に捧げる歌

 「君は3倍大きな女性だね」なんて言われて喜ぶ女性がいったいどれくらいいるだろうか。まあ人間としての器が大きいという意味ならばともかく、身体が大きいなんてことで言われたなら、その女性は傷ついてしまうだけでなく、セクハラとの誹りを免れないだろう。
 黒人男性グループ「コモドアーズ」の1978年のヒット曲「永遠(とわ)の人に捧げる歌」の原題は「Three times a lady」。
 直訳してしまうと「3倍の女性」となる。
 ではなぜ「3倍」が「永遠」になるのだろうか。
 作詩作曲を手がけたライオネル・リッチーは、この歌を妻に捧げるために書いたという。リッチーは両親の37回目の結婚記念パーティでの席で父親の妻への感謝を込めたスピーチを聞いて感動して書き上げたのだという。
 サビの部分はこうだー「You're once, twice, three times a lady, I love you」。この中の「three times」の「times」を「倍」という意味でとらえるならば「君はどんな女性にも匹敵しうる、いやその2倍、いやその3倍もの意味がある女性だ。愛している」という意訳も可能か思われる。
 しかし、「once」に着目すると、この言葉には「一度」あるいは「かつて」という意味もある。そして「twice」が「二度目」あるいは「今再び」、「three times」が「三度目」という解釈も可能だろう。
 すると歌詞はこうなるー「君は今までも、そして今も、そしてこれからもずっと、とても大切な女性だ。愛している」。未来永劫、愛するというのである。そうすると邦題「永遠の人に捧げる歌」とも合致してくる。
 私は何倍も愛している、という意味と、現在、過去、そして未来、すなわち永遠とを掛け合わせた素敵な歌詞だと思っている。
 コモドアーズの母体は1968年に結成された。71年からマイケル・ジャクソン擁するジャクソン・ファイブの前座を務めたことで知名度を上げ、72年にモータウンと契約するのである。
 彼らは70年代半ばから80年代にかけてヒット曲を量産する。「スイート・ラブ」「イージー」「スティル」「ブリック・ハウス」などである。
 中でも静かなピアノで始まり、ボーカルとともに次第に音が重なっていき、最後はコーラスが入り、高らかにフィナーレを迎える「永遠の人に捧げる歌」はコモドアーズ、そしてライオネル・リッチーの代表曲といえよう。
 78年のアルバム『ナチュラル・ハイ』に収録されており、「永遠の人に捧げる歌」は同年夏に全米ナンバーワンヒットとなった。

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