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シャンソン・ファドを聴く会

 フランス語で歌を意味するシャンソン。そしてポルトガル音楽ファド。
 その両方を一回で楽しめる「YOKO Heartful Concert ーシャンソン・ファド 私の碧い時代(とき)ー」が2023年11月26日(日)、「小山台会館」(東京都品川区小山4-11-12)で開かれた。
 第1部はシャンソン。歌うはYOKO(古関陽子)さん。
 一曲目はパリをシャンペンにたとえた明るく軽快な「パリはシャンペン」。二曲目は1964年に岸洋子さんがヒットさせた「恋心」。「恋は不思議ね」で始まり「恋なんて何になるの」が印象的に繰り返される歌だ。
 三曲目に歌われたのは「半ダースのバラ」。YOKOさんは「ボサノバのようなリズムが心地よいこの曲が気に入ってます」と話した。69年にミーナが歌ったイタリアのカンツォーネである。
 四番目の歌は「加藤登紀子さんの代表曲で、前の曲の6本から百万本にバラが増える「百万本のバラ」」(YOKOさん)だった。
 ここでYOKOさんはシャンソンとの出会いについて話した。「今から何十年も前になりますが、五反田文化センターに置いてあったパンフレットに「日本語でシャンソンを歌いませんか」とあったんです。それで地元の「品川シャンソネット」の門をたたきました」。

YOKO(古関陽子)さん


 ここで歌手が一時交代して、菅益代さんがステージに立った。唯一の生き甲斐だったあなたに去られた女性を笑わないでと歌い、離れていった人への想いを込めた「笑わないで」が菅さんの一曲目だった。続けて「日本でもとても人気があったイタリア人歌手ミルバの歌で「リコルダ」」だった。
 YOKOさんがここで戻った。ピアノを弾いているアルベルト田中さんがコーラスをつけて「男と女」を歌った。これは有名なフランシス・レイの音楽で、これがフューチャーされた同名映画もカンヌ映画祭でグランプリ受賞。
 次に登場したのは綿貫すみえさん。綿貫さんはまず「忘れな草」を披露した。彼女によると「ローマを舞台にした映画の主題歌でとてもきれいな曲」。そしてシャンソンとしても歌われていたがもともとはカンツォーネ・ナポリターナ「ルネ・ロッサ」。「私のお月さま」という意味。

ポルトガルギター


 ここでアルベルト田中さんのピアノ演奏。「1950年代のロシアのポップスで、日本では「モスクワの夕べ」として知られており、加藤登紀子さんやダークダックスの歌唱が有名な曲」との解説のあと、演奏された。
 「大好きなジャック・ブレルの曲で、今この瞬間世界のどこかで誰かが泣いているという「涙」という歌です」とYOKOさんが話した後にこの作品が歌われた。歌詞にこんなフレーズがある「私が泣くのは泣いているあなたの涙を見る時」。原題は「友が泣くのを見る」。
 第1部の最後は「レラー瞳の中に」。
 「ポルトガルのファド・ポップスで、絶大な人気があるルース・ポンテスが歌っています。彼女の何とも言えない歌の世界。終わってしまった恋人レラへの想いを歌っています」(YOKOさん)。

ファドの女王アマリア・ロドリゲス


 休憩を挟んで第2部がスタートした。ここから演奏はギターラ(ポルトガルギター)の飯泉昌宏(いいずみ・まさひろ)さんとクラシック・ギターの高柳卓也(たかやなぎ・たくや)さん。
 まずはYOKOさんからファドの説明があった。「ヨーロッパ大陸の西の端に位置する小さな国がポルトガルです。ギターの響きにのせて人生の悲哀を歌うのがポルトガル音楽ファド。ファドを通じてポルトガルの空、海、風、色などを感じてくれたらと思います」。
 YOKOさんはそう話すと「Maria Lisboa(マリア・リスボア)」を歌った。「マリアは魚売り あだなはリジュボア 彼女は夢と潮の香りを売る」。
 続く曲はオリジナルで「私のリスボン時代に、当時ファドを習っていたアルメニオ先生が私に作ってくれた曲」でタイトルは「O meu Pechincha(私のファド プシンシャ)」をYOKOさんは歌った。
 次は「ポルトガルで一番人気があるファド」で「Povo que lavas no Rio(川で洗濯する人々)」だった。YOKOさんは呼びかけた「ポルトガルの土の香りを感じてもらいたいのです」。

夕方のリスボン


 ここで高柳さんが歌うことに。彼は男性では珍しいファド歌手でもある。歌ったのは「Triste Sorte(哀しい宿命)」。悲しみが悲しいほど、ファドは深くなっていくと歌われる作品だ。哀しいではないか。
 ここで飯泉さんと高柳さんの二人でのギター演奏となった。
 ギター演奏が終わると、YOKOさんによるアカペラで、触れ合うこと、支え合うことの大切さを感じさせる「Don Solidon(孤独な人)」。続いて歌われたのは「Rosa caida(バラの花が落ちるよ)」。
 「ファドで歌われるテーマはさまざまで、まさに人生そのものを歌っているのです」とYOKOさん話した。そして「Cheira a Lisboa(リスボンの香り)」。この曲が流れると「陽気なリスボンっ子はすぐに踊り出してしまいます」(YOKOさん)。
 そして「Barco Negro(暗いはしけ)」が歌われた。これは1954年のフランス映画「過去を持つ愛情」の挿入歌で、帰らぬ夫を乗せた船を待ち続けるひたむきな女性を歌っている。
 このあとアンコールで、YOKOさん、飯泉さん、高柳さんにピアノのアルベルト田中さんが加わって4人でカンターラ「歌い続けよう」。およそ2時間にわたる楽しいコンサートはこれで幕を閉じた。
 会場の入り口ではアート・ラモによってポルトガルの小物が販売された。ポルトガルはコルク生産で世界一であることからコルクの絵葉書、ポシェット、ポーチ、長財布、小物入れなどが並んだ。

 


 また南のアルガルベ地方からは圧力鍋と仕組みが似通っている鍋が出品された。「魚介類をこの鍋でオリーブオイルと塩で料理する」という。
 さらにはオンドリをモチーフにしたモノも。というのは「バルセロナのオンドリ」という伝説があって、無実の罪に問われた男性がもし自分が無実であるならばオンドリが3回鳴くだろうと言ったらばオンドリが3回鳴いたという話だ。オンドリは幸運、正義、信仰のシンボルなのだそう。


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