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特別展「はにわ」@東博

 埴輪(はにわ)とは、王の墓である古墳に建て並べられた素焼きの造形である。その始まりは今から1750年ほど前のこと。古墳時代の350年間、時代や地域ごとに個性豊かな埴輪が作られ、王をとりまく人々や当時の生活の様子を今に伝えてくれている。
 なかでも、国宝「埴輪 挂甲(けいこう)の武人」は最高傑作といえ、この埴輪が国宝に指定されてから50周年となる。
 それを記念し、全国各地から約120件の選りすぐりの至宝が空前の規模で集結する特別展「はにわ」が2024年10月16日(水)から12月8日(日)まで「東京国立博物館・平成館」で開催される。


 国宝「埴輪 挂甲の武人」はその勇壮な姿や気高い表情で埴輪の造形美の極致とされる。この埴輪には同一工房で製作されたと考えられる4体の兄弟のようなよく似た埴輪があり、国内外で別々に所蔵されている。
 本展ではこの計5体の「埴輪 挂甲の武人」を同時に公開する。5体を一堂に集めるのは史上初で、このうちの1体はアメリカのシアトル美術館が1962年に収蔵したもので、約60年ぶりに里帰りする。
 また国宝があわせて18点集結するのも見ものだ。
 さらには東北から九州にいたる約50ヵ所の所蔵・保管先から作品を集める。これほどの大規模な埴輪展が東京国立博物館で開かれるのは1973年の特別展観「はにわ」以来、およそ50年ぶりのこととなる。

 本展はプロローグ、5つの章およびエピローグから成る。
〇プロローグ「埴輪の世界」ーー埴輪は古墳時代の3世紀から6世紀にかけて作られた。日本列島で独自に出現、発達した埴輪は、服や顔、しぐさなどを簡略化し、丸みをもつといった特徴があって、世界的にも珍しい造形として知られている。ここでは「埴輪 踊る人々」を紹介する。王のマツリに際して踊る姿であるとする説のほかに、近年は片手をあげて馬の手綱を曳く姿であるとする説も有力だ。


〇第1章「王の登場」ーー埴輪は王(権力者)の墓である古墳に立てられ、古墳からは副葬品が出土する。副葬品は、王の役割の変化と連動するように移り変わる。古墳時代前期(3~4世紀)の王は司祭者的な役割だったので、宝器を所有し、中期(5世紀)の王は武人的な役割のため、武器・武具を所有した。後期(6世紀)は官僚的な役割を持つ王に、金色に輝く馬具や装飾付大刀が大王から配布された。このほか各時期において、中国大陸や朝鮮半島との関係を示す国際色豊かな副葬品も出土。

 


〇第2章「大王の埴輪」ーーヤマト王権を統治していた大王の墓に立てられた埴輪は、大きさや量、技術で他を圧倒している。天皇の系譜に連なる大王の墓は、時期によって築造場所が変わる。古墳時代前期は奈良盆地に築造され、中期に入ると大阪平野で作られるようになる。倭の五王の陵(みささぎ)として名高い、大阪府の百舌鳥(もず)・古市古墳群は世界文化遺産に登録されている。そして後期には、継体大王の陵とされる今城塚古墳が淀川流域に築造された。


〇第3章「埴輪の造形」ーー埴輪が出土した北限は岩手県、南限は鹿児島県。日本列島の幅広い地域で、埴輪は作られた。それらの埴輪は、当時の地域ごとの習俗の差、技術者の習熟度、また大王との関係性の強弱によって、表現方法に違いが生まれている。その結果、地域色あふれる個性的な埴輪も作られた。


〇第4章「国宝 挂甲の武人」ーー東京国立博物館所蔵の「埴輪 挂甲の武人」は埴輪で初めて国宝になった。今回、5体の挂甲の武人を史上初めて一堂に集め、展示する。なお、国宝「埴輪 挂甲の武人」は近年修理と調査研究が行われ、今回その最新の研究成果も紹介する。蛍光X線分析によって白、赤、灰の3色が全体に塗り分けられていたことが分かった。このたび実物大で彩色復元を行い、製作当時の姿を見ることが出来る。


〇第5章「物語をつたえる埴輪」--埴輪は複数の人物や動物などと組み合わせて、埴輪劇場とでも呼ぶべき何かしらの物語を表現する。ここではその埴輪群像を場面ごとに紹介する。例えば、古墳のガードマンであった盾持人、古墳から邪気を払う相撲の力士など。

 


〇エピローグ「日本人と埴輪の再会」ーー古墳時代が終わると埴輪は作られなくなる。しかし、江戸時代に入ると考古遺物への関心が高まり、埴輪がふたたび注目を浴びるようになる。ここでは近世以降、現代に至るまで埴輪がどのように捉えられてきたかについて紹介する。

 開館時間は午前9時半から午後5時。入館は閉館30分前まで。休館日:月曜日だが、11月4日(月)は開館、11月5日(火)は本展のみ開館。
 問い合わせは℡050-5541-8600(ハローダイヤル)。展覧会公式サイトは https://haniwa820.exhibit.jp/  

 特別展「はにわ」は2025年1月21日(火)から5月11日(日)まで九州国立博物館へと巡回する。



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