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落語日記 小さなお手伝いだけど、伝わってくる気持ちは大きなお手伝いという落語会

三朝・和泉の小さなお手伝い(第14回)
3月15日 落語協会2階
春風亭三朝師匠と弁財亭和泉師匠が開催している被災地復興支援落語会に、今回が初参加。東日本大震災が発生した2011年から、年一回のペースで開催されている。木戸銭は全額被災地への支援金に充て、募金箱を置いて募金も募っている。
東日本大震災以後も、各地で災害が発生していて、この支援活動も継続されているようだ。今年は正月早々に能登半島地震という大きな震災が発生し、現在も復興活動の真っ最中であり、そんなタイムリーな時期での開催となった。
毎回、和泉師匠はXで募金額を報告している。今回は、木戸銭と募金の合計金額が22,930円となり、諸経費が0円なので全額を落語協会を通じて震災他復興支援の義援金として寄付するとのこと。小さな活動だが、自分達で出来ることから支援活動を行っていこうという、見えない呼びかけのメッセージが強く伝わってくる。

オープニングトーク 春風亭三朝・弁財亭和泉
まずは、この会の趣旨説明から。震災の被害に対して小さなことだが自分たちで出来ることから支援活動を行おうという気持ちで始めた会。経費削減のために広告宣伝費にお金をかけない。そのためチラシも作らず、落語協会のサイトと東京かわら版とツイッターでの告知くらい。木戸銭は全額寄付にまわし、来場者から募金も募る。会場使用料も、協会の好意で無料にしてもらっている。唯一の出費は、三朝師匠が終演後に和泉師匠にご馳走することぐらい。
出演料無しで開催しているということは、交通費などの持ち出しも当然にある。被災地ではボランティア活動が盛んに行われているが、お二人の落語会開催も充分ボランティア活動と言える。
告知と言えば、落語協会百年記念のユニクロとのコラボの話題。三朝師匠がオーダーで作ったトレーナーを紹介。私もTシャツを作ったが、柄として人気なのが江戸家猫八先生のイラスト。三朝師匠のトレーナーも私が選んだイラストと同じもの。やはり、人気のイラストのようで、皆さんが選んでいる。

春風亭三朝「太閤の白猿」
マクラでは、刑務所でのお仕事の話。刑務所では被収容者の教誨(きょうかい)を目的として、神社関係者による大祓式(おおはらえしき)が行われている。神社本庁の知り合いから、その刑務所での大祓式の後で落語をやって欲しいとの依頼があったとのこと。その際の経験談を、面白可笑しく伝えてくれた。三朝師匠の魅力は、経験談を楽しく伝えてくれるマクラにもある。
この会のエピソードとして、募金してくれた人に対する感謝の気持ちで、以前に行っていたお礼の品の話。和泉師匠が持参したお礼の品のなかに、大きなこけしがあった。元々、大師匠である先代圓歌師匠の家にあったものらしいが、人気が無く、だれも貰わなかったという思い出。大きな置物と言えば、以前どこの家にもあったのが北海道土産の木彫りの熊。確かに、我が家にも木彫りの熊はあった。懐かしいアルアル話だ。
本編は、昨年の11月に開催された「酒と噺を楽しむ会」という三朝師匠の独演会で披露された演目。この歴史を題材とした噺をすっかり自家薬籠中のものとされている。楽しい噺なので、三朝スペシャルとして磨いて行って欲しい。

弁財亭和泉「冷蔵庫の光」
まずは、ご自身のお話。最近、スマホの機種をアンドロイドからアイフォンへ変更されたとのこと。使い方が、まだよく分かっていない。そんな体験談も、我々世代には納得の話。
本編は、和泉師匠作の新作落語。冷蔵庫で保管している食品をめぐる夫婦の会話で描かれるのは、日常生活からあぶり出される可笑しさだ。
夫婦の会話のみで進行する噺。まずは、冷蔵庫に何本も入っている使いかけのドレッシング。それなのに、お買い得だからと買ってくるドレッシング。倹約しているようで無駄遣いしているという女房の矛盾を亭主が突く。配偶者がいる者なら、みな思い当たるシチュエーションだ。
何でも冷蔵庫に入れておけば安全安心、と思い込み信じ込む女房。冷蔵庫に対する信仰といってもいいような女房の思い込みが可笑しい。亭主が消費期限と賞味期限の違いを説明するが、消費期限を過ぎても自分と冷蔵庫を信じれば大丈夫だと言い張る。この不思議な理屈には、客席は爆笑。
賞味期限切れの食品が満載という冷蔵庫アルアルは、我が家でも思い当たる。そんな女房に対して、果敢に破棄していこうとする亭主の抵抗。そのせめぎ合いが楽しく、見せ場となっている。思わず、亭主頑張れと心の中で応援せずにはいられない。主婦としての家庭生活の経験と観察眼が活かされた見事な新作。
切っ掛けは、お二人の震災に対する支援活動ではあるが、お二人の職業の本分を充分に発揮されて、観客を楽しませてくれた充実の落語会だった。

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