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落語日記 年齢を重ねて熟成させた「妾馬」を聴かせてくれた馬治師匠

第26回 馬治丹精会
3月8日 日本橋社会教育会館 ホール
毎回、裏方のお手伝いをさせてもらっている金原亭馬治師匠主催の独演会。前回の開催からの間隔が短く、2ヶ月後の開催となった。今回も、来場者のほとんどが常連さん。ほんとうに有り難い限り。
この日も、受付で事務作業していて高座は時々覗き見しただけで、ほとんどロビーに流れるモニターの音声を聴くのみ。なので、感想も簡単に。
 
金原亭駒介「手紙無筆」
この会の前座は、弟弟子の駒介さんが務めてくれる。駒介さんでは初めて聴く噺。口跡も滑らかな一席。前座さんの進化のスピードは速い。
 
ダーク広和 マジック
この日は、いきなりゲスト登場。寄席でしか拝見できないザッツ寄席芸人のマジシャン。落語協会が誇る人気者。
寄席の色物さんとは、じかにお会いする機会はほとんどないので、今回は楽屋でご挨拶が出来て、ファンであることが伝えられた貴重な機会となった。楽屋では舞台と同じく、にこやかな表情で応対していただき、裏方冥利に尽きる時間だった。
脇の通路から覗き見した舞台は、いつもの寄席のように、いい手品なんです、と手品愛にあふれるマジックを披露。
 
金原亭馬治「お見立て」
仲入り前の一席は、十八番の一席。常連さんたちも何度も聴いている一席。まずは、得意の噺で会場の雰囲気を盛り上げる。
 
仲入り
 
金原亭馬治「妾馬」
後半の一席は、まずはゆったりとしたマクラから。ご自身の身辺の話題を率直に語られるマクラは、寄席では聴けず、独演会ならではの楽しみ。
この日、本編に繋がる話題として、馬治師匠が二人の歴史上の人物に会ったことがあるという話から。まず一人目、前座の頃に会ったのが、知らぬまに二・二六事件の反乱軍になっていた五代目柳家小さん師。ぎりぎり同時代に間に合ったということだろう。
そして、二人目。日本大学の生物資源科学部の学生だった頃、研究の手伝いに行っていた水産試験場で、その施設見学に訪れてきた皇太子時代の天皇陛下とお会いしたそうだ。陛下から直接に声をかけられて、二言三言の会話があったとのこと。その場面は今でもよく覚えているそうで、落語家らしく話にオチを付ける。そんな、身分違いの人物との対面のエピソードから、上手い流れで本編へ。
本編も時間をたっぷり使った長講となった妾馬。特に御屋敷に入ってからが、丁寧にじっくりと。八五郎と三太夫や殿様との遣り取りの楽しさ満載の一席。なので、兄妹や親子の情をあまり前面に強く押し出さず、根底に流れているような印象。6年ぶりに聴く馬治師匠の妾馬。年齢を重ねた分、その熟成の進化を感じさせた一席だった。

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