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落語日記 久々の主任興行も第6派のピークと重なり苦闘する馬治師匠 その2

鈴本演芸場 2月上席昼の部 金原亭馬治主任興行
2月6日
馬治師匠の主任興行は昼の部なので、行ける機会は全部行こうと思い、前日の土曜日に引き続き日曜日にもお邪魔してきた。出演者や来場者の皆さんの無事を祈りつつ、応援に向かう。
さて、天気は晴天で気分は良いが、世の中、オミクロン株による感染拡大で、寄席にとってはかなりの逆風が吹いている荒天の状況だ。東京都の新規感染者数は1月下旬から鰻登りに増加し、2月に入って一日2万人を超える日が三日間も記録。その後も高い数字で推移している。まさに2月上席の十日間は、感染者数のピークと重なっていた。おまけに、出演者である林家二楽師匠の感染が判明。他の出演者への感染拡大には至らなかったようだ。

そんな感染状況なので、予想どおりの来場者数。昨日土曜日は50人くらい、この日の日曜日は少し減って40人くらいの入りではなかったかと思われる。これは週末の昼の部としての通常よりかなり少ない来場者数だと思われる。当然、寄席のメインの観客である年配者はほとんどいない。
2月上席中の2月3日は節分で、例年、高座で豆撒きを行うので混雑する日なのだが、昨年に続き今年も豆撒きは中止。本来は、悪疫退散を祈願して厄払いを行う豆撒き行事が、悪疫のために中止となってしまうという皮肉。鬼も笑っているだろう。ちなみに、寄席での豆撒きの掛け声は「福はうち、福はうち」と言って、鬼も観客なので、追い出さないそうだ。
こんな状況なのだ、観客が少ないのは主任の責任ではない。それでも、顔見知りの馬治ファンが、両日とも来られていた。本当に有り難い限りだ。

ネット全盛時代、SNS全盛時代の昨今、これらを利用して宣伝広告を行うのは当たり前になっている。しかし、落語家がご贔屓さんへ寄席や落語会の案内の手紙やハガキを送ることは、現在も盛んに行われている。出演者から直に、手紙やハガキで案内をもらうと、これは結構嬉しいものだ。案内を受け取ると、律儀に出掛けるご贔屓さんも多いと思う。せっかくのお誘いなので、行かないと悪いような気がして、集客の効果は抜群なのだ。
馬治師匠も、以前から主任興行の度に、ご贔屓さんへ案内のハガキを出されていた。なので今回の主任興行も、本来であれば案内ハガキを発送するところ、この感染状況では、どうぞお越しくださいと言うのも憚られる状況であり、案内ハガキを出すことは止めたようだ。積極的に来場をお願いしづらいという状況での主任興行。久々の主任興行なのに、案内ハガキを断念された馬治師匠はさぞや悔しい思いだったことだろう。誰の責任でもない、辛い状況だ。
そんな中でも、この鈴本演芸場以外の定席でも通常の興行が行われている。主任をはじめ、顔付けされている出演者の皆さん、運営している寄席の皆さんは、この苦境のなかで、少しでも日常を取り戻そうと奮闘されている。観客以上に決死隊である出演者の皆さんたちに、寄席ファンとして敬意を表したい。

馬治師匠は、この鈴本での主任興行を終えた後も、定席での出演が続く。2月中席の国立演芸場、2月下席の池袋演芸場、3月上席の浅草演芸ホール、3月中席の末廣亭。馬治ファンとしては忙しくなる。
しかし、コロナ禍の終息もまだまだ見通しが立っていない。しばらくは、この状況が続くのだろう。そして、寄席や演芸家の皆さんたちの奮闘もまだまだ続く。
寄席の顔付けが続くのは馬治ファンとしては嬉しいが、寄席受難の時期を思うと、手放しにも喜べない、複雑な心境。

この日は、馬治師匠の十八番、渾身の「景清」の一席。この噺の主人公定次郎と同じ縞物の長着で、まさに盲目の定次郎になり切った馬治師匠。観客を高座に引き込んだ熱演だった。
この主任興行で行けたのは2日間だけ。SNS等で挙げられていた主任興行9日間の演目を参考までに記録しておく。主任に相応しい演目が並んでいる。馬治師匠の意欲が伝わるラインナップとなっている。
1 幾代餅 2 井戸の茶碗 3 芝浜 4 笠碁 5 文七元結 6 景清   7(鈴本定休日) 8 お見立て   9 らくだ 10  柳田格之進

金原亭駒介「道灌」

金原亭馬太郎「道具屋」

ストレート松浦 ジャグリング
中国独楽・棒

五明楼玉の輔「動物園」

桂三木助「夜の慣用句」

おしどり 音曲漫才
電子楽器のテルミンの演奏

柳家三三「時そば」

春風亭一朝「湯屋番」

すず風にゃん子・金魚 漫才
金魚ちゃんの髪飾りはバレンタイン

桃月庵白酒「代書屋」

仲入り

江戸家小猫 ものまね

三遊亭圓歌「やかん」

隅田川馬石「たらちね」

林家正楽 紙切り
相合傘(鋏試し)梅に鶯と小猫 落語協会の二ツ目 馬に乗った武士

金原亭馬治「景清」

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