「心のなかの悪魔」なんていないから

くるりの音楽は時折厄介すぎて自分の心の内側に気付かぬうちに形成されていた歪みや溜まった澱みを露にする。
見たくもない奥底の真実を突き付けてくる。
ここ最近でもっとも悩んでいた自分の醜い部分を浮かび上がらせてきた。
それでも歌の力が優しすぎてその部分を目を逸らさせずに見せてくれる。

ここからは本当に恥ずかしい一人語りだから読まなくていいです。
自分の為だけに記す。

僕は小説が物語が書けない。
書きたいという意思があるのに上手く書けた試しがない。
その理由が分かっていたけど気付かないふりして無理矢理書き出してしまった。
最近の悩みはその事に起因している。

根本的に他人に、風景に、物質に興味が持てない。現実に目で見えるものにまるで興味が持てないどころか内心嫌悪感しか抱けない。吐き気すらするほど都会も田舎も受け入れられない時がある。人間に対しても見たくもない時が多々ある。
小説を書こうとしても障害になるのがいつも人間のことばかりだ。

子供の頃から人見知り・対人恐怖症と自負してそう称していたりもしたが内心は、他者への無関心と不信と絶対に口に出してはいけない嫌悪感に溢れていた。
攻撃されることを極端に恐れていたが本当は何もかもぶち壊してこんな世界から去ってしまいたかった。
同時に誰かに愛してほしくて仕方がなかった。
我が儘で醜い本心は奥底に押し込めても押し潰しても決して決して消えてくれはしない。
自分の悪魔は自分にしか見えなくても、どうにも自分に似合っていて離れられようもない。自己嫌悪と自己愛は対義するものじゃなくて同居している。
何が言いたいのか分かっているけどそれは言いたくないことだけどもここまで書いてしまってはいうしかないんだろうと思う。
くるりのせいで涙が溢れて仕方ない。やっと泣けた喜びに溢れて仕方ない。

小説が物語が書きたかったんじゃない。それは本心じゃないとやっと今日気付いた。

この自分にしか理解できない、見えていない地獄を誰かに見て欲しかっただけなんだ。

子供の頃から空想している時だけが幸せだったけど、それも限界がある。
たった一人で立って歩き続けられるほど強くはないから。
愛することも出来ない自分を他人を、イビツでも狂気でもいいから魅力的に描いて誰かに見て欲しかった。
誰よりも透明人間で生きてきてこれからもそうである人間の自己顕示欲を作品に表していくしか自分の根本の解決にならないと思っている。
醜い本心は一番隠しておきたいことだけど、一番隠しておきたいことほどもっとも共有していたいことなんだよ。
自分の為だけに書いているなんて嘘なんて書いてられるか。
そんなの嘘に決まってる絶対に嘘に決まってる。
そんな嘘は信じてやらない。知ってほしくて知ってほしくて知ってほしくてしょうがないんだよ、お前も俺も誰かに知ってほしくてしょうがないんだよ
この自分が見た地獄を天国を美しさを醜さを発見と打算と初々しさと老獪さと健全さと悪意と知っていることすべてと知らないことすべてをさらけ出して、こちらがわに来てほしいんだよ。ここに来て一緒に見てほしいだけなんだよ。誰かも知らないあんたがいつだって必要なんだよ。これまでさらけ出したこと、これから紡いでいく言葉全部知っていて欲しくてしょうがないんだよ。
どこまでも我が儘に走り出して血だらけの裸足に満足しながら全力失踪して心臓弾けて死んじまいたいんだよ。

どうしようもない化け物ばかりが僕の心を表しているから、書いているのには頭をもぎ取って屋根裏部屋と交換したがる少女がいて、地下室に隠れている母親を探して土を呑み込んでいく少女がいて、両手を食べきってくれた見知らぬ少女に恋する少年がいて、自殺した同級生と文通し続ける少女たちがいて、家族を社会を人間を捨てて猫になった男がいて、神様を許せなくて自殺して文句を言いに行く男がいて、殺人鬼の家族だからこいつもその内誰か殺すだろうからというだけの正義感で知らない人を平気で殺していく男がいて、心中するときにやっと自由になれて死にたくなくなったけど彼女のために気遣って死んであげる男がいて、どんだけ優しくされても人狩りを止められない少年達がいて、上品な偽物を憎む美醜のどちらも愛してくれる母親がいて、暴力を振るって去った父親に似ていく自分の居場所を見つけられない少女がいて、いつもしゃぶらされてきた口を噛み千切るために使うと決意した少女がいて、「今日」が死んだだけで明日になった瞬間に嘆き悲しむ少女もいて、母親が望む完璧な子供になりたくて自分が望む完璧な母親を探して取り替えていく少女がいて、時間が怖くなって空間に逃げ込んで永遠に時のない空間で静止した少女がいて、1億階段を下っていって月を追い越してしまう少年がいて、米粒ほどの月が落ちてきて地球は月になって月が地球になって自分が月の住人になったことに喜ぶ僕がいて、
過去の自分に会いに行って、首吊りロープを前に佇むあの頃の自分に「今日も失敗してもいいんだよ」という僕もいる。

全部僕らだよ、まだ近くにいるからな。
見捨ててやるもんか。

居場所のないきちがいばっかり。
こいつらのこと知ってもらいたくて全然勉強進まないじゃないか。
一度書いたけど今度は姿形は違えどもっともっと深く悲しく凛々しくてどこでもどこまでも笑う陰影が忘れられないように書いてやるからな。

未熟な腕へし折って、新たな腕を取り付けてまた書いてみせるよ。

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