風の谷のナウシカと腐海と住宅のカビのはなし
高断熱・高気密住宅で起きる夏型結露とカビの大量発生からの考察
夏型結露で壁裏に大量のカビが発生したというを数多く聞いた今年の夏。この住宅内のカビの大量発生は、生態系の「バグ」だと考えています。
私たちの身の回りには、無数のカビや菌が存在しています。ある調査によると、キッチンスポンジには15億個もの雑菌が付着しているそうです。しかし、それらがすべて悪さをしているわけではなく、バランスを保ちながら共存している状態です。実際、キッチンスポンジを除菌せずに使っても、食中毒や病気になることはほとんどありません。
カビは自然界において「分解者」としての役割を果たしており、生き物の死骸や植物の分解を助けます。また、カビは食品においても役立つ存在で、お酒やパンを作る際に重要な役割を果たします。伝統的な醤油や味噌を作る工場では、「麹カビ」が神聖視され、祀られていることもあります。
しかし近年、夏型結露の影響で、住宅内でカビが大量発生することが増えてきました。これは「生態系のバグ」だと私は考えています。このカビの大量発生は、まるで『風の谷のナウシカ』に登場する「腐海」に似ていると思いませんか?腐海は広大で神秘的な場所で、劇中では有毒な植物が生い茂り、巨大な昆虫が生息しています。腐海の植物は有毒な胞子を放出し、人間にとって危険な環境となっています。そのため、人々はガスマスクを着けて腐海に入るのですが、この腐海自体は、実は地球環境を浄化する役割を持っていることが物語の中で明らかになります。
住宅内のカビの大量発生も、腐海と同じように、自然のバランスが崩れた結果として現れる「生態系のバグ」と考えられます。つまり、地球環境にある何かを分解しようと、カビが大量発生しているのです。本来の自然の循環が滞った結果として、こうした現象が起きているのです。
住宅内にカビが存在すること自体は、ごく当たり前のことであり、私たちは様々な種類のカビや菌と共存しています。私たちが暮らす家も、そうした微生物との共存によって成り立っています。しかし、近年の高断熱・高気密住宅では、こうした自然の循環が遮断されてしまい、カビが発生しやすい環境が作られているのです。快適な温度が保たれる住まいですが、それが本当に健康的な住環境と言えるのでしょうか。
温熱環境は健康にとって非常に重要ですし、最新の住まいづくりの考え方自体を否定するわけではありません。しかし、昔ながらの家づくりにも、自然と共存し、人間の本当の健康を考えた住まい方があるのではないかと思います。
ある研究によると、住宅内の微生物の多様性が多いほど、住んでいる人のQOL(生活の質)が向上するという結果が出ているそうです。これからの住まいづくりにおいて重要なのは、ただ気密性や断熱性を高めることではなく、地球環境と共存し、人間が本来快適に過ごすべき住空間を考えることだと思います。この夏のカビの大量発生をきっかけに、そんなことを考えさせられました。
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