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バッタ男に3回も号泣させられたヲタクの話。

僕は長期シリーズもののファンになる時に何に対しても、「原点」ポジションだったり、所謂シリーズに於ける「黎明期」に該当するポジションのものが特に好きになる傾向があります。

例えば、プリキュアシリーズでもふたプリ~GoGoまでの初期を彩る作品群。平成仮面ライダーシリーズに於いても目立って好きなのはクウガ~555辺りの「平成初期」と呼ばれる作品達が大好きです。

そして、仮面ライダー1号。約半世紀前の日本に旋風を巻き起こした仮面ライダーの原点である彼もまた、僕の大好きなキャラクターの1人です。

2010年代に入ってからは平成ライダーも映画等で定期的に「客演」と称される形で過去のライダーがゲスト登場する事が増えました。とりわけ1号ライダーがピックアップされる機会は多く、アニバーサリーの時期にそれは顕著だったように思います。

40周年、45周年、そして50周年。それぞれの節目となるタイミングでバッタの改造人間はある一介のヲタクを必ず泣かせていました。

2011年公開「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」



藤岡弘、さんが1971年~1973年に演じられた本郷猛/仮面ライダー1号。
佐々木剛さんが1971年~1973年に演じられた一文字隼人/仮面ライダー2号。

彼等が「声の出演」という形で平成に入ってからの仮面ライダーに初めて客演したレッツゴー仮面ライダーは僕に大いなる爪痕を残しました。(終盤に風見志郎/仮面ライダーV3を演じる宮内洋さんも声の出演を果たしております)

物語の概要を説明致しますと、2011年(現代)を舞台とした所から始まるのですが、NEW電王/野上幸太郎と共にデンライナーに乗り込んだ映司とアンクの2人が過去で起こしたとある出来事により、歴史が変わり現代はショッカーに支配されたディストピアになっているというバック・トゥ・ザ・フューチャーのPART2を連想されるスタートでした。

絶望的な状況の中、歴史の修復の為に過去に戻るも、そこでショッカーの襲撃に遭い、少年仮面ライダー隊含む子供達が絶体絶命的な状況に陥る。

もう、ダメだ…全てを諦めそうになったその時、”彼等”は砂煙の向こうからやってくる!



これを初見で観た時、仮面ライダーを見ていて初めて「カッコ良過ぎて涙が出た」という現象を体験致しました。

それまでもWの終盤など、物語に心打たれて涙した事はあっても、もっと理屈を超越した「演出の力」で目頭が熱くなったのはこの時が初めてでした。

71年当時の初代ライダーはここまでアクションが洗練されていた訳ではない。それでも、”当時の子供達には絶対にこう見えていたんだ”と言わんばかりのハイキック、力強いアクション。流れるレッツゴー!!ライダーキックのアレンジBGM。(サントラで言う所の「正義の味方」)未だに全ての仮面ライダー作品の好きなシーンを1つ選べと言われた時に少なくとも候補には確実に挙がる程好きなシーンです。

このレッツゴーは該当シーン以外にも初代ライダーの精神性、本質的な部分を絶妙に突いてくるシーンが数多くありました。仮面ライダーとショッカーの騙し、騙され合う関係性。ショッカーの企みを高笑いするダブルライダー。それらはどれも71年当時の初代ライダーに数多く含まれていた要素でした。

終盤の息切れ感はどうしても否めない所も多分にあるレッツゴーですが、それでも未だに定期的に観返したくなる。そんなパワーを持った映画だと思っております。

2016年公開「仮面ライダー1号」



先述のレッツゴーは大変素晴らしい映画だったのですが、「春映画」と呼ばれる作品群は翌年以降、炎上商法紛いのヒーロー同士が対決し合う「~大戦系」の映画が毎年のように生まれてはファンが大荒れする状況が何年も続いておりました。

その中でも、2014年3月公開の「平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦feat.スーパー戦隊」は多くのオリジナルキャストが出演した事でも話題を呼び、本郷猛を演じた藤岡弘、さんも数シーンではありますが、「顔出しで」出演しておりました。しかし、71年当時の初代ライダーを観ていない人でも明らかに分かる「改悪」の被害者となってしまっており、完全に物語のヒールとして平成ライダー達の邪魔をし続ける訳の分からないポジションのキャラクターにされていました。

ライダー大戦含め、あの頃の春映画は部分的には良いシーンも色々あるのですが、それらを無茶苦茶な本筋が露骨な邪魔をして台無しにしてしまうと言った現象が数多くあったのです。僕は諸々の関係で時系列的には本来先に公開されているレッツゴーよりもこのライダー大戦を先に観たので、当時はライダー大戦を観て大きなショックを覚えましたし、大荒れしていた中でその後レッツゴーを観た訳なので「何故これが出来て、ライダー大戦はああなった!?」という疑問がどうしても拭えませんでした。

翌年の2015年公開の「スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号」でも多くの過去のライダーがモブキャラ同然の扱いを受けてショッカーの洗脳を施された敵ライダーにされてしまう中、数少ないライダーの生き残りとして孤軍奮闘していた南光太郎/仮面ライダーBLACKの活躍シーンを観た時は前年のライダー大戦の本郷の改悪も踏まえていた為、当時涙した事を今でもよく覚えております。

「過去のライダーが好きな事は悪い事なのか?」という普通は考える事も起こり得ない疑問を払拭するようにBLACK(物語終盤はRXに変身)は「観たい仮面ライダー」を見せてくれました。でも、だからこそ。やっぱり藤岡さんが演じる仮面ライダー1号にもリベンジの機会を与えて欲しい。当時はずっとそれを願っていました。

前置きが長くなってしまいましたが、そんな経緯を踏まえて公開されたのがネオ1号でした。45周年記念作品を謳うこの映画は世間では怪作扱いされたり、そもそも現在では殆ど話題にならない事の方がどちらかと言うと多いです。

まぁ、確かに変な所も結構ある映画なのは間違いないです。ガバガバに特別教師になれる本郷猛とか、戦闘シーンからの場面の切り替わりが雑だとか挙げれば色々ありますが…

ただこの映画、何が大事なのか。僕は劇場で再上映含めて19回鑑賞した程この作品を心から愛してるのですが、「何故、生命は大事なのか」という本郷猛の問いが根幹にあるテーマなこの作品の中に、本郷…もとい藤岡さんは「当たり前に言われてる事を、ちゃんと自分なりに吟味、咀嚼、解釈して自分の中にしっかり落とし込んでいるか?それらの本質を考えた事はあるか?」という事なのだと思ってます。


これは藤岡さん自身が著書で語ってた事なのですが、彼は著書の中で繰り返し「本質を見つめよう」と言った主旨の事を繰り返し主張されていました。上辺の薄っぺらい部分だけを消費する人間になるのではなく、その奥に見える景色に大事なものがある、と。

だから極端な事を言うと、藤岡さんが一番伝えたかったテーマは「生命は皆繋がってる」でもあるのですが、それと同じぐらい「考える事をやめちゃダメだよ」と言いたかったのだと僕は思ってます。(あくまで僕自身の個人的な解釈です)確かにガバガバで作劇としては粗が多い映画なのかもしれないけど、そこの面だけを見つめて非難するのはそれこそ「薄っぺらい」のでは、とさえ思ってしまいます。


それに、ライダー映画に1番求めてる部分…新旧ライダーの穿った事をしない真っ直ぐな共闘、世代を超えた情熱溢れるエネルギッシュで力強い戦い。颯爽とネオサイクロン号に乗って駆けつける本郷猛。そして何より、これからの未来をタケルに託して朝日の下、風のように去りながら流れるレッツゴー!!ライダーキック2016。エンドロール後の「ライダーは、いつも君達の側にいる。」

少なくとも僕がずっと春映画に求めてたものはこれで全て満たされました。こういう仮面ライダーが、こういう映画が観たかった。珍品だ怪作だなんてとんでもない。往年のベテラン戦士がボロボロになりながらも、熱い想いと共に力強く奮い立つその様は前年に公開された僕の好きな映画シリーズでもある「ターミネーター 新起動:ジェニシス」に近しいものを感じました。(以前ツイートで同じような事を仰ってる方が居てとても感動した記憶があります)


あの日、新宿バルト9の初日舞台挨拶で起こった拍手。号泣した上映終了後。その記憶に嘘はつけません。誰が何と言おうと、これからも大好きな映画だとずっと主張し続けたい。そんな映画の1つです。


2023年公開「シン・仮面ライダー」


そして今年公開のシン・仮面ライダー。
主に目立った感想は既にnote記事にて書き記してあるので未見の方は此方を是非ご覧ください。

シン・仮面ライダーは庵野さんの解釈した仮面ライダーであり、それまでのライダー映画とは明らかに一線を画すタイプの映画なので、僕も最初はかなり戸惑ったものですが、結果的には思い出しても涙が出る思い入れの強い映画になれてよかった、と強く感じます。

個人的な思い出を述べると、シン・仮面ライダーは最終的に21回映画館で鑑賞しました。そのうち8~9回程は誰かしらを連れて一緒に観た、今迄にないほど思い出の多い映画になりました。

もしかしたら仮面ライダーの1つの作品でここまでの濃厚な思い出を味わう事はもう出来ないかもしれない。

そうだとしてもネガティブな感情になってしまうのではなく、この受け取った思い出を胸に生きていける、シン・エヴァやシン・仮面ライダーに対してはそこをひしひしと感じております。

最推しライダーはクウガなのですが、思い出の多さ、濃さ。そういう意味では1号ライダーも今や同じ立ち位置の存在なのかもしれませんね。



ありがとう、仮面ライダー1号。


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