夜遅く、外食からの帰り。
手を繋いでふらふらと歩いていると、いつも通る道へ渡る十字路の信号がちょうど赤に変わった。
「違う道から帰ろうよ」
「遠回りだよ?」
「たまにはね」
笑って僕の手を引く彼女は、どこか楽しげに見える。
暫く歩き信号と信号の間に来た時、車の通りがぴたりと止んだ。
ふと見回すと、二つの信号は赤く光っている。
「これは渡るしかないでしょ」
彼女はにやりと悪戯っぽく笑うと、歩道の端に足をかけた。
「たんたん悪い子だね」
「夜だからね」
「夜だと悪い子になるの?」
車道を渡りながらにやにやと笑う彼女を追いかける。
「違うよ。夜は何しても良いんだよ」
そんな事はない。
了
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