44.悪い子

 夜遅く、外食からの帰り。
 手を繋いでふらふらと歩いていると、いつも通る道へ渡る十字路の信号がちょうど赤に変わった。
「違う道から帰ろうよ」
「遠回りだよ?」
「たまにはね」
 笑って僕の手を引く彼女は、どこか楽しげに見える。
 暫く歩き信号と信号の間に来た時、車の通りがぴたりと止んだ。
 ふと見回すと、二つの信号は赤く光っている。
「これは渡るしかないでしょ」
 彼女はにやりと悪戯っぽく笑うと、歩道の端に足をかけた。
「たんたん悪い子だね」
「夜だからね」
「夜だと悪い子になるの?」
 車道を渡りながらにやにやと笑う彼女を追いかける。
「違うよ。夜は何しても良いんだよ」
 そんな事はない。

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