61.届かない

 帰り支度を済ませ彼女へいつも通りの連絡をする。駅へ向かいながら何度も確認するが、一向に返信は来ない。夕飯を買うべきか相談する為、電車に乗っている間に連絡を取りたいのに。
 数分置きに何度もスタンプを送っていると、家の最寄り駅へ着いてしまった。改札を出てから電話をかけるも、呼び出し音は途切れない。呼び出しとリングオフを繰り返しながら家路を辿り、あっという間にマンションに着いてしまった。
 リビングに入ると彼女は頬を膨らませる。何度も送ったはずだと説明をするが、聞き入れてはくれない。
 確認をするため彼女が手に取った携帯の画面が、画面を開く前に光った。
「今きた」
 まさか届いてすらいないとは。

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