18.手

 夜中に寒くてふと目が覚めた。ベッドサイドのテーブルに置かれた小さな扇風機がからからと回っている。
 扇風機を止めようとスイッチに右手を伸ばすが、ほんの少し足りずに指先が宙を掻いた。仕方がなく左手を伸ばそうと身をよじると、身体の自由が利かないことに気がつく。
 振り返ると、左手は何故か彼女の頭に乗せられており、その手首を両手でがっしりと固定されていた。
 手を引き抜こうとするがなかなか離してはもらえず、ため息混じりに指先だけで頭を撫でる。ふわりと口角が上がったように見えた。
 まだ寒いしタオルケットは彼女が身体に巻き付けているけど、暫く風に当たろうか。
 確か風邪薬は切れていた気がするけれど。

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