仕事から帰ると、粉々になった茶碗がテーブルの上に置かれていた。
彼女はそもそも、食器の扱い方が荒い。以前にも使い勝手の良い皿や、母から貰った急須など様々な物を割られている。
その度に気を付けるように言っているのだが、数日経てば忘れてしまうのだ。
僕が元カノと住んでいた時に使っていた食器ばかりなので、そもそも大事に扱う気が無いのかもしれない。
彼女を見ると、眉尻が下がり俯いている。先ほど謝られてから、ずっとそのままだ。
「たんたんは可愛いかのう」
ふと彼女が呟く。
「ん? 可愛いよ?」
返事をするとにやりと笑い、顔を上げる。
「可愛いは正義であろう」
そういう事にしておこうか。
了
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