何が気に入らなかったのだろうか。
ちょっとだけ彼女の腹肉をつまみ、ちょっとだけ引っ張り、ちょっとだけ笑った。ただそれだけ。
「ねえ、痛いんですけど」
「え、どうした。紫になってるけど」
ええ、そうでしょうね。そうだと思いますよ。
僕の肩には弓なりに紫色の痣ができている。時折出来るこの痣は、だいたい肩や腕に発生した。
そこは、少しだけ。ほんの少しだけ太っている僕の、肉のついた柔らかい場所。そこに時にはいくつもの痣が出来ていた。
三日月のような痣には等間隔に小さな隙間があり、彼女の歯並びの良さを表している。
「たんたんが噛んだんでしょ」
「まあ、そうだったのね」
謝る気は無さそうだ。
了
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