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朗読LIVE 110 木の祭り 新美南吉
大きな白いものか窓辺に来た。クロアゲハのアルビノかと思うような大きさ、優雅さ。網戸にぺたりと取り付いた姿は、チョウのそれではなかった。いつもはそこで、なんだ、蛾か、となり、何故か価値が下がってしまうのだが、その飛ぶ姿と白の輝きが目に残った。
朝になっても、まだ張り付いていた。夜に見たような白ではない。薄緑がかった、もう少し色味の薄い羽だった。それはそれで朝の光の中で儚げで壊れそうな繊細さだった。
その夜もまた別の個体が来た。別種の白を反射する小さな蛾も飛んできて、紙吹雪がキラキラと舞うような幻想的な窓辺になった。
子どもたちはモスラと言うが、恐らく、
オオミズアオというものらしい。
旅行から帰って調べたらすぐにヒットした。網戸に張り付いたのを裏から見ていたからかもしれないのだが、ピンクがかった縁取りは印象になかった。
大陸の近縁種は月や月の女神の名を持つらしい。蛾とカテゴライズした途端、価値が下がるような認識はよろしくない。美しいものは美しいと受け取れるように、分からないものはわからないままに感じたい。
木の祭り 新美南吉
朗読は1分5秒過ぎからです。
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