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朗読LIVE 164 大きな手

手は、便利な道具である。
こんなに器用に動く手がなければ、今の繁栄はありえない。
利己的に暴力的に動く手でも、人のために働く時、力強く、優しい。
つるりとした白い手は確かに美しい(それはそれで努力した手である場合もあるが)。しかしどんな風に働いてきた手かは、その手に刻まれている。
たくさんのシワが刻まれた、そして、皮膚が薄くなってその皺すらよらなくなった祖母の手を思い出す。田舎の山の中にあるお墓への坂道を登ろうと、これが最後になるかもしれないからと、支える私の手にぐっと力を込めて体を持ち上げるその手。脚はあかんけど、手はえらい力やろ、と誇らしげに笑っていた。私には到底考えられない苦労をしてきた手、たくさんの人のために働いた手、記憶はどんどんと薄れていくけれど、あの時の手の強さは、体が覚えている。今はその中に入ってしまったあの山道の先に、ぼちぼち会いに行かなくちゃね。



大きな手 竹久夢二

朗読は、35秒あたりからです。


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杜埜 玖/KuU Morino
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