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和菓子のちから
※こちらはWEBマガジン「She is」公募用に書いた小説です。テーマは「美は無限に」。
和菓子に魅せられたのはいつからだっただろう。
きっかけは思い出せないが、大学時代にパソコンの授業で「和菓子の四季」という名のアニメーションを作った形跡が残っているから、おそらくその頃には完全に夢中になっていたようである。
味はもちろん穏やかかつ健康的で美味しいのだが、私自身は和菓子の見た目に惹かれることが多い。ほんのり色づいた春、葛や寒天を使った涼の夏、栗を包み込む秋、雪の白さを思わせる冬。
季節感を反映して、職人がイメージをふくらませて作ったお菓子は、うつくしくていとおしい。口に入れてしまえばすぐ消えてしまう儚さがあるけれど、味を含めた記憶の余韻はいつまでも自分の中に残る。
近所のお店が作る愛嬌と若干のいじらしさも捨てがたいし、老舗の風格や洗練も素敵だ。そして最近はwagashi asobiさんや御菓子丸さんなど、新しさを感じさせる和菓子作りをする人たちもたくさんいる。
折に触れそれぞれ買い求め、その多様な美を楽しんでいる。
このように書くとすこぶる和菓子党のようだが、もちろん、洋菓子も大好きだ。ケーキもアイスクリームもプリンも夢のようなときめきをくれる。どちらか選べと言われても絶対選べないのが現状だ。
しかし、和菓子の「イメージを形にする力」は、ものすごく広くて深い。この間流行ったドラマも、あの名作映画も、音楽もゲームも全て和菓子で表現できる気がしている。
多様な世界観を具現化する力が、手のひらにおさまるほどの小さきものにあるというのは、なんだか愉快でもある。
今でも絵画をイメージした和菓子が山種美術館などで展開されているが、それはまだ和菓子が持つポテンシャルの、氷山の一角にすぎない。
「もっとできる!もっとやれる!」とつい松岡修造さんみたいに思ってしまう。
色々なジャンルと和菓子がつながりを持つことで、みんなにおなじみかつ憧れられる存在になってほしいと願う。いつか、そんな和菓子を提供するようなお店を訪れたいし、できればアイディアを提案できるようになってみたい。
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