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思い出のカレー3
3つになってしまったカレーの前で呆然としていると
一番左にあるカレーと目が合った
なぜか懐かしさがどんどん込み上げてくる
なぜだろう、、、
崩れたじゃがいも、、にんじん、、
鶏肉の切り方にも見覚えがあった、、、
「お母さん、、、、」
それは母のカレーだった
母の顔が浮かぶ、、、
厳しいが優しい母だった
「人様にご迷惑のかからぬよう、恥じない、正直な生き方をしなさい」
そんな昔ながらの母だった
母のカレーだ
真ん中のカレーはまだ野菜が煮えてないみたいだ、、、
豪快な切り方、大盛りの野菜たっぷりカレー、豚コマ肉もどっさり入っている、、
見覚えがあった、、、
少年野球の夏合宿に食べたカレーだ!!
懐かしいな、、、
みんなどうしてるんだろう、、、、
会いたいな、、、
子供の頃の友達の顔が浮かぶ
うまかったな〜〜あの日のカレー
一番右のカレー
かなり本格的なカレーだ
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これは、、、、、、
ジャスミンライス、、、ビリヤニ、、、、、
スパイスカレー、、、、
見覚えも記憶もなかった、、、、
右のカレーの前で立ち尽くしていると
頭上すぐ近くで声が響いた
「さあどっち!!」
俺は、天を振り見上げて言った
「ここには嫁のカレーはありません
左は母のカレー
真ん中は少年野球の合宿で食べたカレー
右は見覚えのない本格的なカレーです」
「よく見て」
俺は右のカレーに注視した
すると、そのカレーの香りが自分の体を包み込むように広がってきた
カレーのスパイシーな香りに、何かを掴みかけた
なんだろう、、、
このカレー、、、
、、、、、
、、、、
素敵な涼やかな声が耳の裏でこだました
「悟さん」
この声、、、、
スパイシーな香りの中に、さらにスパイシーな情熱が流れ込んできた
なんだ???
そしてそれは衝撃的な稲妻と共に思い出された
あやちゃんのカレーだ
、、、、、、
「嫁のカレーは?」
天は無の表情で俺に語りかけてきた
「嫁のカレー、、、、、、」
、、、、、、
しばし、天と俺は沈黙した、、、
続く。