上瀬谷を追うだがや3(上瀬谷ポテンシャル編)
上瀬谷の未来を考えよう会有志さんの『市長へ質問書』を掘ってみる②
今回は『質問書 2上瀬谷の自然について』掘っていきます。
市長回答の深掘り(上瀬谷を追うだがや1)はこちら
質問書の深掘り(上瀬谷を追うだがや2 樹木をきると人間が困る編)はこちら
1⃣上瀬谷のポテンシャル
横浜市は「上瀬谷のポテンシャルを生かした」計画にすると、連呼しつづけてきたのですが、上瀬谷通信施設跡地とはどのようなところなのでしょうか。
🔶上瀬谷のポテンシャルとは
上瀬谷通信施設跡地は、東京ドーム約52個分の広さ、電線や高い建物はなく、電気ガス水道は整備されておらず、営農地・球場のような施設以外はほぼ手つかずの自然があります。4つの川が流れ、和泉川・堀谷戸川の源流域に位置し、湧き水がいたるところに出ており湿地も広く、川と谷戸を利用して水田も多い。
人が自由に入れる場所も限られてきたため、神奈川県でここでしか自生が確認されていないオオアカバナ(トップ写真、絶滅危惧II類 →詳しくはタウンニュース)やオオジシギ(準絶滅危惧)の飛来が確認され、オオタカ(神奈川・繁殖期絶滅危惧II類)も生息しており、絶滅危惧種を含む動植物の楽園となっています。
(オオアカバナは横浜市がいつ造成を始めるかわからない状態なので、昨年に瀬谷環境ネットさんが瀬谷貉窪公園に移植したそうです。その後、自生場所は埋め立てられ、跡地内にも移植されましたが、このままでは造成のために跡地内からは無くなることになります。→詳しくはタウンニュース)
(⇧瀬谷環境ネットさんのブログ。これはオオジシギの初観察日。その他多くの生物の観察記録が丁寧にされています。見てるだけで楽しいです、実際に観るともっと興奮します。)
カヤネズミ(神奈川・準絶滅危惧)の目撃情報もありますが、市の調査では確認されませんでした。(保全目的の観察活動で写真を撮影できていないのに、開発するための調査で見つかるわけがありません。)
過去にはホタル・ホトケドジョウが確認されていましたが、相沢川・大門川がコンクリート3面張りにされ、跡地内では現在は生息していません。現在は跡地を源水域とする和泉川(跡地南東に隣接する瀬谷市民の森)でホタル・ホトケドジョウが生息しています。関連事業による和泉川の水源への影響も懸念され、跡地造成後もホタル・ホトケドジョウが瀬谷市民の森で生息を続けていけるかも不安に感じています。
🔶『水資源』の造成後の姿は
造成後の上瀬谷跡地について、深掘り1では『草原』、深掘り2では『樹木』に触れました。ここでは、『水資源』について簡単にまとめ直します。
🔷川・谷戸・水田
跡地全域と同様に、水田と谷戸も埋められて平らにならされます。(瀬谷環境ネットの方とお話して感じたのは、特に水田がなくなることは避けられないのだろうかということでした。動植物の住環境を考えると水田の有無は大きく、『造成後に自然の再創出』と横浜市がいくら連呼しても、水田がなくなるともう取り返しがつかなくなると感じます。)
相沢川・大門川を元の自然に近い形に戻してほしいという市民意見が多くありましたが、現在の計画は2川を切り回し(流れを変え)暗渠化(蓋)するというものです。
花博・跡地公園内の相沢川の地上化ですが、茶色の点線の切り回し暗渠部から取水して水空間を作るという(書いてて切ない)形になるそうです。
🔷湧き水
湧き水についても、残念ながら横浜市は非常にいい加減な考えなようで、『(造成・整地により湧き水はなくなっていくだろうから、)湧水を川へ引く導線を想定していない』ようです。
そして私の問い合わせまでは、相沢川の旧流(現・農業用水路になっているあたり)に注ぐ湧き水に関しては、把握していなかったようです。(上図は環境アセス資料ですが、当の湧水は図に載っていません。)この湧水に対しても「帯水層は遮断しないが、湧水の環境をどう維持するかは決まっていない。」と他の湧水と同じ回答でした。(詳しくは、深掘り1「川と湧き水と調整池」)ここでも、切り回しされる相沢川に湧水を合流させるという回答は得られませんでした。
造成後は、小さな湧水は枯れていくのかなとは思います。おそらく和泉川や堀谷戸川の源水の湧水量も減り、その代わり地表からの排水量が増え、川の水質は下がるでしょう。
しかし、完全に枯れるとも言い切れないのに、なぜ湧水を川へ流すように計画しないのでしょう。結局は、雨排水の一部として処理するにしても、まだ計画すらないと回答する横浜市…
2⃣上瀬谷関連・環境影響評価審査
🔶横浜市環境影響評価審査会
横浜市環境影響評価審査会は
下記、横浜市環境影響評価制度の「市民や市長から意見を聴くなどの手続」の中に組み込まれた横浜市の諮問機関です。事業における環境へ与える影響を、公的に市税を投入し審査し、市長へ事業の環境影響について答申します。この答申に対しては、市長が最大限に尊重することが求められます。
上瀬谷の未来を考えよう会有志さんの『市長への質問書』ではところどころで横浜市環境影響評価審査会での議事内容が取り上げられているのですが、上瀬谷の環境のポテンシャルを踏まえたうえで、事業における環境へ与える影響を諮ることから、事業の全容や詳細が審査会へ開示されないと、この評価は意味のないものになることは明らかです。
上瀬谷関連事業について行われた環境影響評価審査内容や、市から募集された市民意見では、横浜花博や上瀬谷関連事業の掲げる理念と実際に行われる予定の開発内容に落差があると意見されています。
そこで、具体的に環境影響評価審査会で何が話し合われたのか、読み解いていきたいと思います。
🔶環境影響評価制度の進み方
とっても簡単に説明すると環境影響評価制度は下記のように進みます。
🔶上瀬谷関連事業
下記4つの環境影響評価審査会が開かれています。
①土地区画整理事業 4段階目:評価書まで終了
②(仮称)公園整備事業 2段階目:方法書まで終了後に、事業修正諮問中
③(仮称)都市高速鉄道上瀬谷ライン整備事業 2段階目:方法書まで終了
④2027年国際園芸博覧会 2段階目:方法書が縦覧中
*②公園整備事業は20ha面積が増える(テーマパークは減る)ために、事業内容等修正届出書によって、再諮問中です。
*③上瀬谷ライン事業はご存じの通り、事業者が決まらず完全にストップしており、そのため2020年年末で審査も止まっています。
*④2027横浜花博は配慮書審査は2021年4-5月のたった二回しか行われておらず、とっても簡単に終わっています。そして本年6/27まで方法書の説明会と意見募集が行われ、5月から諮問が始まりました。
🔶環境影響評価のターニングポイント
上瀬谷関連事業の環境影響評価における重要なターニングポイントについて書きたいと思います。
🔷瀬谷環境ネットさんの意見陳述
2021/10/27環境影響評価審査会で(上記オオアカバナやオオジシギを観測した)瀬谷環境ネットさんの意見陳述が行われました。
瀬谷環境ネットさんが大変なご苦労の中で普段から行われている保全活動による写真や記録を使って丁寧に説明をされ、どれほど貴重な自然が残されているのか一目瞭然の意見陳述であることが会議録でも読み取れます。
この意見陳述の以前と以後で、この審査は全く違うものになっています。
*その時の詳細を知りたい方は、令和3年第14回 横浜市環境影響評価審査会 会議録をご覧ください。目を疑うようなことが書かれています。
簡単に説明をしていきます。
まず前提として、土地区画整理事業の「準備書」と公園整備事業の「方法書」は、2021年6月28日から2021年12月21日という”完全に同期間・同じメンバー・同時に”審査されていました。
そして、土地区画整理事業の「準備書」はこの時点で3段階目の最終審査中であり、2021/10/27の瀬谷環境ネットさんの意見陳述は審査開始から”4カ月”経過していました。
前段の2回の審査(配慮書・方法書)とこの4カ月間、審査委員たちが何を審査していたのかと、青ざめるような発言が会議録に記載されています。
瀬谷環境ネットさんの意見陳述を受けて、このような発言が相次ぎ、これまでの審議に徒労感が噴出したことが読み取れます。
(この時の瀬谷環境ネットさんの資料でも相沢川から引かれた用水路と湧水による池を『遊水地』として情報提供しているが、情報提供を受けた市はこのあたりでの生物をコンクリート張の相沢川の底生動物と理解して環境アセス資料を作成しているようです。)
🔷市民意見を審査委員は読んでいなかった
ネット検索すれば、上瀬谷に大自然があることはある程度わかります。
横浜市は令和2年1-2月に「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画(素案)」に対する 市民意見募集を、令和2年12月ー令和3年1月に「公園基本計画(素案)」に関する市民意見募集もしています。
これは、環境影響評価についての意見募集ではないですが、HPで公開されているので委員はたどり着くことができる情報です。
おそらく、審査委員にとっては手元にある審査資料が全てであり、それは横浜市への信頼で成り立つ審査であるということなのでしょう。
しかし、とてもおかしなことがあります。
配慮書・方法書・準備書すべてにおいて、市民から意見募集(情報提供)をしており、これは審査を開始する前に募集されます。審査委員にも、審査期間の早めの時期に「市民意見の概要」が配布されています。
そして、審査委員が知らないと言ったことのほとんどがこの「意見概要」の中に記載されています。
市民はとっくの昔から「瀬谷の大自然を生かした整備を」求めていたわけです。残念ながら3度にわたる募集意見は、審査委員たちには読まれていないようです。
審査委員には今後は、市民からの意見をまず読み、環境影響評価をしていただきたいと切に願います。
🔶その後の環境影響評価審査会
瀬谷環境ネットさんの意見陳述前は、上瀬谷に"多種多様で美しい自然がある"とは審査委員にほとんど認識されておらず、あまり深く審議するような雰囲気がありませんでした。
意見陳述後は、もともと環境の専門家が多く委員をしているため、意見が活発かつ重たいものになっていきます。(こんな環境破壊に関わりたくないという気持ちが表れたような発言もありました。)
また、環境影響評価審査会は多くの事業を同時に審査しており、市や事業者が出す情報には更問が必要だという認識が委員には共有されたと思います。
瀬谷環境ネットさんは横浜を救ってくれたと私は思います。
しかしながら、残された日程が少なく、上瀬谷2事業はほとんど1から審査をやり直さないといけないような状態です。
委員の更問いにより、以下のこともわかっていきます。
審査中に、市(事業者)が「決定していない」「もっと環境配慮できるように検討中」と回答されるとそれ以上の審査が出来ず、審査会長が「アセス最終段階で決定していない計画を審査するという状況はおかしい」と苦言を言い、場を収めることも何度もありました。
🔶農道舗装・コンクリート擁壁は決定事項?!
🔷審査会で評価書に記載を求めた2つのこと
2021/11/29の審査会は最後の事業者質疑審査にもかかわらず、舗装道路計画の詳細が報告されておらず、上図のようなコンクリート擁壁がいたるところにできる可能性を示唆されました。(この擁壁の内側で営農すると…)
審査の最終段階において、農道舗装・コンクリート擁壁について環境影響が評価できていないことを委員たちは不安視し、せめてこれからでも農道舗装・コンクリート擁壁を減らせるかどうかについて質疑されました。
🔵記載要求①
事業者(市)が「地権者様の意向により盛土切土で平らにならすため、このようなコンクリート擁壁ができてしまう」といつものように地権者を盾にごまかしたために、評価書に「地権者が土地を平らにならすように求めた経緯がわかる詳細なやりとり」を記載するように、審査会から求められました。
🔵記載要求②
農道(市有地)は市の管理者が分かれており「それぞれの所管で舗装を回避できるか十分に話し合っていく」との市の言い訳に対して評価書に「農道の舗装を回避するように、各所管課で検討された詳細な経緯」も記載するように審査会から求められています。
この①②の要求は、土地区画整理事業・環境影響評価書を読む限りは、全く記載されておらず、近しい項目すら見つけられません。それどころか、農道の”舗装”に関しては評価書に記載がなく、「農業振興地区に農道を”整備”する」とされ、舗装の有無は記載はなく詳細な計画もありません。
市に問い合わせたところ、審査会の答申は市長意見にもそのまま記載されるので、市長意見の方で審査会の答申の該当箇所を教えてもらえました。
そして、それに対応する評価書の該当箇所も教えてもらいました。
🔷審査会で評価書に記載求めた結果、書かれたこと
🔵記載要求①
審査会の答申での「地権者が土地を平らにならすように求めた経緯がわかる詳細なやりとり」は下記の青い箇所になるそうです。
そしてその、可能な限り記載された評価書の該当箇所は下記の黄色の箇所になるそうです。
地権者が「土地を平らに」と要求した経緯や詳細は、見当たりません。
🔵記載要求②
審査会の答申での「農道の舗装を回避するように、各所管課で検討された詳細な経緯」は下記の青い箇所になるそうです。
「舗装を回避するための所管内での議論」という部分は答申の段階で見当たりません。市職員はここが該当するとよくわかったなと思います。
そしてその、可能な限り明らかにされた評価書の該当箇所は下記の黄色の箇所になるそうです。
「地権者とのプロセス」も明らかになっていませんが、生物生息環境も「整備が行えるよう、今後、地権者と調整を図っていきます」という、、、何もしません宣言みたいにしか読めないことが書いてあります。
🔷検討中のはずが、アスファルト舗装農道は決定事項に!
市曰く「現状の道は、ほぼ市有地(下図の赤い箇所)のところになるが、土地区画整理では全ての土地とともに全ての道を一度潰す。花博・公園の園路や、テーマパーク内の道は事業ごとに決めるので、土地区画整理で敷設するのは農業振興地区の農道のみであるが、どこに敷設するかはまだ決定していない。農道はアスファルト舗装となるのは決定事項である。」とのことです。
農道敷設の環境負荷は"事後"調査の対象ではあるそうですが、そもそもアスファルト舗装を回避できないのかどうかや、舗装による動植物の分断を回避する策も、アセスでは「検討中」でした。
その後の検討内容を開示すこともなく、市民の問い合わせには決定事項と言い渡す横浜市のやり方には疑問しかありません。
この2点の問い合わせだけ見ても、横浜市がどれほどこの環境アセスメントを軽視しているかよくわかります。
いずれにせよ、評価書には意見を受け付ける制度がなく、評価書に事後調査を行うと記載がないことは事後ですら行われることはありません。上瀬谷の地ならし(土地区画整理)の環境影響評価は手続き上は完了しました。
公園整備事業はまだ準備書の審査が残されており、花博は方法書の審査がこ始まっています。今後も注視して行きたいたいと思います。 ただ、環境アセスメントは「影響評価をし、是正を求めることが出来る」だけであり、事業そのものにNGを出すわけではありません。そして、今回わかったように、横浜市と事業者はいくらでも情報の取捨選択ができ、都合の悪い情報を伝えない・わかりにくく伝えることが可能です。
環境アセスメントを含む、大規模事業や公共事業を評価する全ての諮問会議は、マンパワーや期間が限られており、今のやり方では限界があります。
アセスであれば最後の諮問である準備書の段階で「詳細が決定していない、検討中」は論外ですし、各諮問で委員ばかりか審査長が重複しているのも是正しなくてはなりません。
しかし、それだけでは足りません。全ての諮問で事業の大きさによって期間を長くし、事業前後の変化を一覧にし、その詳細や妥当性を各項目ごとに必須資料とすることが必要です。 諮問会議で「委員にバレないように、審査を切り抜けよう!」と事業者と横浜市が結託できないように、必須資料が揃っている状態にするように皆様も、各委員も働きかけていただきたいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
『市長へ質問書』の深掘り(上瀬谷のポテンシャル編)以上となります。
💖Special Thanks💖
改めて、上瀬谷の未来を考えよう会有志さんありがとうございます。
今後も『市長への質問書』を深掘り続けたいと思います。
✨Change.org2027横浜国際園芸博覧会(花博)のために桜並木を切らないで!市民の意見を尊重し上瀬谷の開発見直しを
✨上瀬谷の未来を考えよう会有志さん『質問書への市(長)からの回答』
✨横浜市・上瀬谷整備・国際園芸博覧会推進室の皆様
そしてもちろん、✨瀬谷環境ネット様✨ 本当にありがとうございます💖
💖上瀬谷通信施設跡地の写真提供💖
✨トップ写真:オオアカバナ ななつ星さん撮影
✨マロツクさん(2枚)
💖引用元💖
令和3年度 横浜市環境影響評価審査会 開催記録
横浜市 旧上瀬谷通信施設地区 土地区画整理事業 環境影響評価書