【イギリスひとり旅】Vol.10 リヴァプールは鳴り止まない
朝になると、昨夜寝る前に寒気がして熱っぽかったのもすっかり治っていた。宿を出る前、Robが寂しいってジェスチャー混じりで言ってくれて、I miss you, too!って咄嗟に出てきた言葉を返す。最後は英国紳士風にドアマンの役を笑いながらやってくれた。またいつか会えると嬉しい。
朝露が葉について緑が光沢を帯びていた朝
Forget me notと文字が書かれたターコイズブルーのお店を過ぎて、Windermereの教会の前のベンチでしばし余韻に浸る。新しい出発の日。
電車を乗り継いで南に向かう。またチケットを買い損ねて車内で駅員さんから購入する。
Liverpool Lime Streetの駅を降りて
ついにビートルズの生まれた街へ
赤茶色の石造りの街並み
立派な建物ばかり、見惚れながら歩く。
Brian Epsteinの像を過ぎる。
ずいぶん歩き回って探して、1階がStroberry Fields Cafeって名前になってる宿泊先のユースホステルを見つけた。
すぐそこにCavern Clubがある。
荷物を預けるため地下のロッカールームへ、借りたカード鍵が反応せず、後から来た女性に開けてもらう。カナダからの大きなリュックを背負った気さくな方で、少し言葉を交わす。
リヴァプールの街を港の方へ歩いて行く
日本のアウトレットみたいな通りを過ぎる
なんだか身体が重くて眠い
雨が降って寒気がするくらい冷える
傘を差してベンチでTESCOのサンドウィッチ
Magical Mistery Tour
楽しみにしていた“The Beatles Magical Mistery Tour” の出発地へ。(バスでビートルズゆかりの地を巡っていくツアー)
雨宿りにすぐ横の建物に入ると、受付のお姉さんが店内bgmを口ずさんで書類を整理してる。
幸運にも、ちょうどツアーが始まる頃に晴れて、黄色と青のアイコニックなツアーバスがやってくる。バスガイドのお兄さんにどこから来たのってみんな聞かれて、ちょっとだけ話してから乗り込む。もちろんバスに流れる音楽は"Magical Mistery Tour"
ほとんど席が埋まっていたので、後方のピンクの服のおばあさんの横に乗らせてもらう。近くに住んでいるらしく、地元の方にも愛されてるみたい。南米からの参加者も。
バスが動き出してマージー川沿いを走り出す。雨上がりに輝く水面がひどく綺麗で見惚れていた。
バスガイドのナレーションは、”Liverpoolなまり”があるとかないとか以前に、話す速さに置いてかれた。頭もぼーっとして疲れてたのもあって、所々つまむようにしか聞き取れなかった。
それでも、巡った場所はとんでもなくて、リンゴ・スターの生まれた赤煉瓦の住宅街や、街中にあるジョージ・ハリスンの家、それから、ジョン・レノンの生家の前も通る。石造りの家々が緑に映える綺麗な通りだった。
ポール・マッカートニーの家にはバスを降りて家の前まで歩く。A Day In The Lifeの歌詞に登場する風景。今はもう他の方がお住まいらしく、一見すると普通の家である。しかし、本当に世界にただ一つこの場所なのである。ここで集まって音を鳴らしていたジョンとポールを想像してみる。
数日前にLondonのAbbey RoadにあるEMIスタジオの辺りを歩いたときを思い出す。(観光客立ち入り禁止だと知らず、スタジオ入りするミュージシャンの後ろに着いて間違えて入った思い出。) それと、LondonのSavile Rowにある“ルーフトップコンサート”があったアップル社のビルもしかと見上げて、
聴いてきた音楽の周りにどんどんくっきりとした輪郭が描かれて、そのとき音が鳴っていた街の色彩や匂いや温度感が加わり、人の気配まで感じられるようで、なんというか、やっとその音楽にしっくりと納得できたような、曲が初めて実世界に接地したような、とにかくわくわくした心持ちになった!猛烈に何か新しいものを作りたくなって、夢中になって何か始めたくなった。
Penny LaneやStrawberry Fieldsにも降りて、その度にバスではその曲が鳴り、乗客のみんなはノリノリで歌うのである。うろ覚えの歌詞はフィーリングで。あったかい気持ちになった。
ジョンとポールが初めて出会った教会を過ぎて、
もとの港へ戻る。
赤茶色の美しい建物と
通りを横切るカモメの群れ
マージー川の向こう岸の建物のシルエット
南京錠が大量についた金属柵の前にあるベンチ
夕陽が沈むのをじっと見ていた
Cavern Club
Cavern Clubのある通りへ
道沿いのどの飲食店もライブをしてるようで、
ロックが鳴り止まない。
ColdplayのYellowを耳にする。
4人の絵が描かれた建物に入る。地下へ続くレンガの通路、アーティストたちのCavernで演奏している写真が至る所に飾られる。
階段を降りていくと、"I Saw Her Standing There"が聴こえてくる。ちょうど観客が掛け声をあげてる。地下の隠れ家のような空間の奥に小さなステージ。石で組まれた壁と天井には手書きのサインがぎっしり
両サイドのショーウィンドウにはクイーンやアデルやB.B.Kingや、アーティストたちのサインやギターが展示されていて、ステージにはミュージシャンが入れ替わりにライブをしていく。そのほとんどがビートルズのカバー演奏。観客は飲みながら、会話しながら、好きな曲は思いっきり歌いながら過ごしてる。カバーならではの、その人の味やちょっとしたアレンジが聴いてて楽しい。同じ音楽を好きな人たちばかり、時空を越えて、こんなに狭い秘密基地にぎゅうぎゅうになって音を浴びて、乗って、ここにいるだけで気分が上がる。
ホステルに戻り、チェックインして部屋へ。
案内してくれた受付のお兄さん(歳下だとしても大人びてた)はカチューシャがかっこよく似合ってて、自分が持ってきたカチューシャをこっちも着けてみせるなどして。
かなり限界がきている身体を休ませる。
ドーミトリーの部屋に、自分と同い年くらいの女の子2人がスーツケースを転がして入ってくる。
“Hi, ya!!”
愛嬌あふれる笑顔で挨拶してくれる。
2人はオーストラリアから来たらしい。1人はメルボルンから来ていて、もう1人は大学生で西海岸から来たらしく、2人とも地元がけっこう離れてる。どうやって知り合ったのか聞いたら、なんとドイツをそれぞれ旅行してたときに出会って仲良くなったらしい!旅先で出会って今も一緒に海外にいくほどの仲の良さに感動した。メルボルンから来た子は名前をLucyといって、お母さんが日本語学校の先生をしてるらしく!ちょっとだけ日本語を話してみせてくれた。リヴァプールの街が好きで、仕事を探しに来てるらしい。
疲れからかなり早い時間に寝入ってしまい、
夜中、日付が変わった頃に目が覚める。
ずんずん何かがずっと響いている。
窓から聴こえるのはやっぱり音楽で、
街の灯りに照らされた青暗い空に
Cavernの方から賑やかな声とベース音。
耳を澄ませると、No roots / Alice Marton
窓から飛んで行きたいのを抑えて、部屋で口パクに身体を揺らす。
翌朝、目を覚ますとニ段ベッドの上で寝ていたLucyがちょうどベッドの梯子を降りてきていて、おはようって、朝陽みたいな笑顔で声を掛けてくれる。
一階のStrawberry Fields Cafeで朝食を摂り、荷物をまたロッカーに預けて出発する。向こうのテーブルにLucyが座っていたので、お別れしに行く。応援してるって気持ちを英語で伝えたくて、でも日本語の“頑張って”をなんて訳したらいいかわからなかったので調べた。
朝早くからパソコンに向かって仕事探しを頑張っていて、簡単には行かなさそうって言ってた。元気を貰った不思議な巡り合わせに、出会ってくれてありがとうと一緒に、見つけた言葉を伝える。
“Wish you the best!”
The Beatles Story
きのう行けなかったThe Beatles Storyへ。
歴史を辿って、色々展示されてる。朝一ですいていたので1時間半くらいかけてゆっくり周る。
LyricノートやAll you need is loveのイラスト、当時のシングルレコード、サイン、Johnの使っていたピアノ、数々の写真の中の表情のひとつ、強い眼差し、昨年IMAXで見たRooftopでのあの背中、
“Each day is a seven day weekend with you”
隣接するカフェスペース
Flat Whiteというのを好奇心で頼む。店員さんはカフェラテにハートを描いてくれて、カップの横に4人のイラストの青い包みのチョコが添えられる。もちろん店内bgmはずっとビートルズ
この2日間の余韻に浸る。
壁際にはピアノが置かれていて、好きに弾いていいようで、こういうときに、流れてる曲のコードに合わせてアドリブで弾けたら、どれほど気持ち良いだろうかと、本気で悔しくなる。次に来るときまでにはきっと。
Liverpoolの街中で食べたホットドッグ
シャボン玉とベビーカーとカモメの鳴き声
こぼしたマスタードの黄色の名残が今でも
白いスニーカーに残ってる
Liverpool Lime Streetから来た道を戻って
国鉄でLondonへ向かう
駅の構内の一つが愛おしい
どのアングルをとっても英国らしく感じる
帰りの電車は満席で、売店の車両で数時間ずっと立っていた。
売店に来る人たち、色んなバックグラウンドをもっていそうで、ただやっぱり、子どもはどの子もすっごく生き生きした瞳や声色で。
ずっと立っているのが手持ち無沙汰すぎて、人気そうだった黄色のパッケージのスナックを買う。
差し込んだクレカが反応しなくて、何回か試してうまくいったとき、“Lovely♪”ってあいづちを打ってくれた駅員さん
道のり後半の車内は、今までの旅路を思い出していた。ほんとに、寝ても覚めてもイギリスにいて、もう英語で話すのも自然に受け入れられている。ここでのふつうを受け入れられてきたような
それからは“美しさ”のことを考えたりしていた。
旅日記より
美しいものの中には
深い望み, 祈り, 願い...が見えるのかな
長い間貫徹され、洗練された美しさは、ある普遍性をもってその土地のあらゆる場所に宿っている
旅立ちから上海の空港での思い出や、ロンドンでの最初の3日間、リヴァプールから戻ってからの1週間の日記は、また気が向いたときに少しずつ載せていきたいと思います。
もしこの極めて私的な文章まで読みに来てくださった方いましたら、大変嬉しいです。ありがとうございます。何か言い回しや写真のひとつでも面白いと感じて貰えていたら、さらに嬉しいです。
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