四次元を見事に表現した美しいパズルゲーム、GOROGOAを読み解く。【考察・感想】(ネタバレ有)
皆さんは「GOROGOA」というゲームを知っているだろうか。4分割された画面に存在する絵画のパネルを、時に並び替え、時に拡大し、時に組み合わせながら、少年を「GOROGOA」に導くゲームである。ゲームデザインや謎の解法が他に類を見ない作品であり、難易度も丁度よく、まさに傑作と言って差し支えない作品だ。文字を介さない美しいストーリーも評価が高い。2018年の日本ゲームデザイナーズ大賞を受賞しており、その実力は折り紙付きだ。
私自身この作品が好きで、考察記事などもちょくちょく読んでいるのだが、最近改めてプレイした際にある特徴に気がついたので、今回の記事ではその「気づき」に対して解説していこうと思う。
その前に、このゲームのストーリーを軽く説明しよう。
ここか先はネタバレ有りで解説していくので、気になっているなら今すぐプレイしてからここに帰ってきてほしい。大体1時間ぐらいで終わるし、Apple StoreでもDLできる。やったことの無い人にも分かるようには解説するが、できれば実際にプレイしてストーリーを肌で感じてから読んで欲しい………。
ちなみにこれから解説するストーリーが合っているかは分からない。言語で語られる部分が皆無なので、イラストを見ながら自分で考察していくしかないのだ。現に、私がこれから解説しようとしている物語は「自分の想像」と「考察記事」を融合させて納得する形に落とし込んだ内容となっている。
なので、私の解説を見る前に自分でストーリーを考察しながらプレイする事をオススメする。その行為により、この作品はより一層あなたの心に残るゲームとなるはずだ。
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ストーリー解説(筆者の考察)
少年はある日、『■■■■』を目撃した。
名前も生態も不明。そもそも生物なのかも分からないその『■■■■』を持っている辞書で調べると、『■■■■』と一緒に「五色の宝玉を捧げている二人の若者と老人」のイラストが記載してあった。
『■■■■』に魅入られた少年は「この宝玉を集めれば、もう一度『■■■■』に出会える。」と考え、宝玉集めの冒険に出た。
赤、緑、黄、青、紫……少年は道中立ち止まることはあったが、「人智を超えた謎の力(プレイヤーによる干渉)」により、自らが行動を起こさなくとも何故か道が開かれていき、迷うことなく五色の宝玉を集めることが出来た。
塔に昇り集めた宝玉を『■■■■』に捧げてもう一度姿を見ようとした瞬間、少年は『■■■■』の怒りを買い、手に入れた宝玉を全て剥奪され、さらには塔から突き落とされてしまう。
少年が集めた(集めさせられた)宝玉はまがい物であり、偽物を捧げられた『■■■■』は少年とその世界に対して罰を与えた。
塔から突き落とされた少年は足が不自由になり、その後の人生において常に杖を持ち歩く必要がある身体となった。
世界には隕石が降り注ぎ、街は壊滅状態となった。
しかし、少年は諦めなかった。
足が不自由になろうとも、街が破壊されようとも、『■■■■』をもう一度見るためだけに研究を続けていた。皆で写真を撮る時ですら本に没頭するほどに。
その後、少年は青年となり、熱心な研究者となった。本に囲まれながら勉強を続け、あらゆる分野に対しての知識を学び続けて、青年は『■■■■』を見るために必要な儀式の存在を知った。
青年は『■■■■』をもう一度見るために、修行の旅に出た。
山を登りながら聖水を浴び、砂漠では鐘の音を響かせ、森には数えきれないほどの蝋燭を灯した。
そして、『■■■■』が表れると予想される日がやってきた。
しかし、『■■■■』を見ることは叶わなかった。
青年は絶望に打ちひしがれ、修行道具を机ごと倒してしまう。
『■■■■』を見ることができなかった精神的ダメージは大きく、数十年もの間研究を再開することはなかったが、青年が老人となった頃、もう一度『■■■■』と向き合う準備が整った。
老人となった少年には、今まで積み重ねてきた研究の道筋を冷静に再確認することができた。
そして、少年は理解した。
宝玉は「物」ではない。
宝玉とは、人の生きた道、「人生」を表しているのだと。
赤色の宝玉は罰により足を奪われた少年の心に。
緑色の宝玉は崩壊した街を見つめる少年の心に。
黄色の宝玉は研究に没頭している青年の心に。
青色の宝玉は失意に沈む青年の心に。
紫色の宝玉は人生を振り返る老人の心に。
宝玉とは一生を掛けて手に入れるものだと理解した老人は、自らの人生のトラウマとなった場所に向かうこととなる。
『■■■■』の怒りにより破壊されていた塔は、少年が老人になるまでの間に修復されていた。
老人は確信していた。
ここに来れば、また『■■■■』を見ることが出来るのだと。
神の怒りを買い、足が不自由になり、街が破壊される全ての原因となった、人生の特異点であるあの塔に登り「自らの宝玉」つまり、「少年」から「老人」になるまでの「自らの人生」を捧げることによって、『■■■■』と出会うことができると。
そして、人生を『■■■■』に捧げた老人は
人生の最後に『■■■■』を見ることが許された。
その名は…………『GOROGOA』。
以上が、このゲームのストーリーを私なりに解釈したものだ。
この後は、このゲームがなぜ四次元構造だと考えられるかを記述していく。
そもそも四次元とは?(自己解釈多め)
そもそも四次元とは?という話になるので、私の見解をかなり要約して下に書いておく。かなりざっくりとした自己解釈が含まれているので、鵜呑みにしないように!
一説によると四次元とは現在の次元である「三次元」(XYZ軸の"3つの広がり"が存在する次元)に、別の広がりとなる1つの軸を加え(例えば「時間」など)、なおかつその空間を同時に認識できる次元の名称とされている…らしい。(詳しく知りたかったら検索してね)
GOROGOAは何故「四次元」なのか
先ほど書いた定義を元に考える。
複数の時間軸を同時に認識できる状態を四次元と呼ぶならば、このゲームは「四次元的なゲーム」だと言えるだろう。
ではなぜそう言えるのか?
私たちプレイヤーは、少年が『GOROGOA』に捧げた生涯の記憶を、「少年の(偽)宝玉集めの手助けをする」という形で覗き見ることができる。
少年、青年、老人…あらゆる時代の記憶をバラバラに見ることとなるのだ。
このゲーム特有のシステムである、四分割の画面を通じて…。
この四分割にされた画面デザインは非常によくできている。
純粋にパズルとして斬新さもあり難易度もそこそこ、何よりストーリーの見せ方を面白く複雑にすることに非常に役立っている。
例えばこの画面を見てほしい。
この画面では、
「偽の宝玉を集める少年(左上)」
「研究に没頭している青年(右下)」
「儀式を行ったが、GOROGOAを見ることができなかった青年(右上)」
という別の時代を生きる少年を一度に見ることができる。
次の画面はもっと登場人物が増えており、
「偽の宝玉を集める少年(左上)」
「罰を受け、塔から落とされている少年(左下回想)」
「儀式を行ったが、GOROGOAを見ることができなかった青年(左下)」
「トラウマを克服し、もう一度研究を見つめなおしている老人(右下)」「GOROGOAと会うための塔へ向かうために駅で電車を待っている老人(右上)」
という5人の同一人物を認識することができる。(うち1人は記憶の中だが…)
つまり、四分割にされた画面デザインをうまく利用することで、別の時代を生きる同一人物をプレイヤーに同時に認識させるという複雑なシステムとストーリーを成り立たせ、時間を軸とした四次元を見事に表現したゲームとなったのだと私は感じた。
このような作品が2017年末にリリースされていたということは驚くべきことだ。正直、GOROGOAと似ているゲームは?と聞かれてもすぐには思いつかないだろう。それほどまでに独特な作品なのだ。
斬新なゲームデザインと美しいビジュアル、良質なストーリーを持ち、さらに物語の魅せ方と構造がプレイヤーの体験とうまく絡み合い、語り継がれる傑作となった作品だと断言できる。
ちなみに私は、我々が干渉できるのは偽の宝玉を「そこにあったから」「なんとなく」集めている「自らの意思の無い」少年に対してのみであり、塔から落とされて以降の『GOROGOA』へと向かう行動が少年の「自らの自由意思」であり、本当に『GOROGOA』を見る資格を得られたのがプレイヤーの操作から離れてからの行動の結果というところが凄い好きなところだ。
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