レーザー冷却の仕組みが気になったので調べてみた
今年のノーベル物理学賞は光ピンセット
今年のノーベル物理学賞は
光ピンセットと極超短レーザーパルスに与えられた
原理はこちらが詳しい。ここから光ピンセットの概要とメリットを説明している部分を引用しておくと
光を回折限界に集束させることで,溶液中の微粒子などをその集光点に捕捉する光技術である.この光学系を光学顕微鏡に導入することで,研究対象となる微小物体を顕微鏡で観察しながら,非接触・非侵襲で捕捉し,三次元的に自由に動かすことが可能となる.
ここから、光ピンセットの原理を追っていくと「放射圧」というキーワードがでてくる。これは、光を電磁波と捉える電磁気学でも、光を粒子(光子)として捉える量子力学どちらの見方からも説明できる。
光が反射や屈折などにより,その進行方向を変化させた場合や,光の吸収・放出が起きた場合には,運動量保存の法則により,その反作用として光の放射圧(radiation pressure)が生じる
この「放射圧」を巧みにつかった物理現象の1つにレーザー冷却がある。
1997年のノーベル物理学賞は
レーザー光を用いて原子を冷却および捕捉する手法の開発に与えられている
太陽光を当てれば暖かくなるように、レーザーでエネルギーをあたえたら冷却どころか反対になりそうな。。という疑問を解消していく
ざっくりレーザー冷却の原理
前提
対象は気体原子の冷却であることに注意しておく。
※また簡単のため、1次元方向だけで考えていく。
予備知識
・一般に物質は、振動数によって光の吸収確率が異なる
・観測者の運動状態によって、振動数の感じ方がことなる(ドップラー効果)
論理の流れだけざっくり説明する。図と説明の番号を見比べてみるとわかりやすい
レーザー冷却の仕組み(下図参照)
1. 気体原子は振動数 ω_0 に吸収のピークを持っているとする
2. ω_0 より少し小さい振動数 ω' ( ω_0 > ω' )の光を両側から照射する
3. ここで原子は右に運動量Paで移動しているとする
4. すると 「ドップラー効果」 により
右側の光の振動数は⊿ωだけ大きく
左側の光の振動数は⊿ωだけ小さく変化する
5. 振動数の変化は光の吸収確率に変化をおよぼす
吸収線に近づく右側の光のほうが吸収され
左側の光が吸収されにくくなる
6. 吸収率の違いにより光子の運動量の変化がことなる(運動量保存;放射圧)
右側のほうがより多く運動量を原子にわたし(右から左)
左側のほうが少ない(左から右)
7. するとあたかも原子には右から左に力が加わったかのようになる
8. いま右に運動していたのに左に向かって力がかかったので
これはブレーキのように力がかかったことになる(減衰力)
以上、繰り返すとどんどんブレーキが働き、原子の運動量が小さくなり冷却される ※ただし限界値が存在する(ドップラー冷却限界 後述)
冷却の限界
以下の2つの要素のバランスで冷却の限界が決まる
・冷却 : 運動エネルギーを減衰させて冷却しようとする力(輻射圧)
・加熱 : 運動エネルギーを増加させて加熱しようとする力(光子の吸収)
詳細な計算は避けるがこの限界は
光強度が飽和強度より十分弱ければ
光強度にも波長にも原子の質量にも依存せず
単に冷却に用いる遷移の自然幅
によって決定される
参考
http://atom.c.u-tokyo.ac.jp/torii/papers/optronics200801.pdf
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/37-07-sougouhoukoku.pdf
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