僕とひらがな
黒板にスラスラと板書をする学校の先生やメンタルクリニックで僕に質問をしながら僕の話すことをカルテに書き込んでいく職員さんを見ていると、みんなよくこんなにもスラスラと文字が書けるものだと感心してしまう。というのも、僕はひらがなを思い出すのに数秒を要することがある。もちろんひらがなが書けるか書けないかで言ったら書ける。しかし、書き方を知っているのとそれを一瞬で思い出せるのは違う。少なくとも僕の中では両者の間には深い隔たりがある。
幼稚園でひらがなとカタカナをマスターしていた僕はしかし小学校に上がってもスラスラと文字を書くことに苦手意識があり、授業中にノートを取るなどの文字を写す作業はできても、日直日誌の記入など自分で考えた内容を紙に書くのはとても緊張した。それを同級生に見られようものなら恥ずかしさのあまり自分の手元を覆い隠し「字を書いているの見られるの苦手だから」と事情を話し目を背けてもらえるようにお願いしたこともあった。