「知財戦略」は「世の中を巻き取る」ためのもの~クアルコムの方にお話を聞いて感じたこと
「知財戦略」
のお話をする機会が、ちょいちょいあります。
発明討議の際、たまに、以下のような話になることがあります。
「このアイデアで、ライセンスフィーが稼げるんじゃないか?」
ええ、まぁ、興味あったらやってください。
(僕はあまり興味ありません。)
発明塾で、知財戦略の討議をする際、僕が気にしているのは、以下の1点だけです。
「それで、世の中を巻き取れるのか?」
ご縁あって、かなり昔ですが、世界最大の通信用半導体企業 クアルコム の方にお話を伺う機会がありました。質問をお送りしたら、すぐに会っていただけるとのことでした。いつも通り何のコネもないので突撃アポですが、成功です。
私が質問したのは知財の話ですが、ご対応いただいたのは
「マーケティング」
ご担当の方です。
はい、クアルコムでは、
「知財戦略は、市場開発(マーケティング)戦略」
だということでしょう。
クアルコムの方が使っておられる言葉で、僕が非常に
「新鮮」
だなと思った言葉、それがこの
「巻き取る」
という言葉です。
「自社の技術を、早く普及させ、世の中を”早く”よりよくしていく」
という考え方を、一言で表したもの。
私はそう解釈しています。
クアルコムの知財戦略を取りあげた、以下のセミナーで、私は
「特許を、使わせる」
という戦略があります、というお話をしました。
発明塾では、もちろん、古典的な
「保護」
のための知財戦略の話もしますが、どちらかというと
「技術の価値を最大化する」
ための戦略として
「世の中を、どんどん巻き取っていくための知財戦略」
について、より多くの時間を割いて議論します。
これは、前職のナノテク Start-Up で掲げていた Mission が
「技術の価値を最大化する」
だったこととも、関係があります。技術者として、非常に関心があるところだからです。個別具体的な技術についても、興味があるものもありますが、どちらかというと
「仕組み」
作りの方が、より興味があります。
僕は、クアルコムの歴史を
「先見の明のある個人発明家(創業者のジェイコブス)が、知財戦略を駆使して、世の中を(早く)大きく変えた」
という物語として、読んでいます。
個人発明家、起業家、スタートアップの人たちには、必ず知っておいていただきたい物語です。
クアルコムの知財戦略については、以下論文で取りあげています。
当時は、時代が早すぎてあまり理解されなかったようですが、最近、この論文を読んだ上で、私のところへ知財戦略の相談に来られる例が、徐々に増えています。
ちなみに、クアルコムの方々が良く使う
「イネーブラー」
という言葉を、日本で知財戦略文脈で大々的に使い始めたのは、僕が最初だと記憶しています。
この言葉も最近、流行りはじめました。
時代が追い付いてきたようです。
以下の
「オープン・クローズド戦略」
に関するケーススタディーでも、クアルコムの戦略に触れています。
IPレバレッジで支援している
「Tech系スタートアップ」
の CEO、CTO の方には、ぜひ理解していただきたい内容です。
「守る」
ではなく
「巻き取る」
つまり
「価値を最大化する」
ために、
「知財戦略」
はあるのだと。
「自らの技術の価値を最大化するための武器」
が
「知財」
だと。
そういう話ができる、スタートアップ経営者の方は、今後も大歓迎です。
そういう方とは、ぜひ
「同じ目線」(インサイダーとして)
で、一緒に仕事がしたいですね。
楠浦 拝
P.S. 知財戦略は市場戦略である、というお話は、以下のオンライン講座でも触れています。古典的な知財戦略にも、この視点は内包されています。
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