暇だから作った。ただ、それだけ。by 神
あー、暇だなー。全知全能だとなんでもパッとできちゃうから、つまんないなー。まったく張り合いがなくて、退屈だ。
ぼくの名前は神と書いてしんと言う。まあ、実際、神様だ。今、中学二年生で、夏休みだ。いつも、自分の部屋でボーっとしながら、漫画を読んでいる。今も漫画を読み終わったところ。
どれ、また、観賞用に宇宙でも作って、遊ぶとするか。これも最近、飽きてきたなー。でも、これしか暇つぶし、思いつかんもんなー。
よいしょっと、まずは台を用意して、素粒子を台の上にぶちまけますっと。
「この素粒子をこねるのが面倒なんだよな。よし、天と地ができたぞ。次は、っと。光よ、有れ、か。よし、これで昼と夜ができたぞ。」
「最後に、人間だな。これをわざと不完全に作るのが面白いんだよね。ぼくと同じように全知全能にしたら、なんも争いが起きないもん。見ていて、今の自分の世界見てどうすんだよ、ってなるもんね。時間の速さは、こっちの1秒で、向こうは2000万年にしておこう。時間ダイヤルをセットしてと・・・。」
「しんちゃーん、ご飯よー」
母親が一階から私を呼んだ。昼ごはんか。夏休みともなると、家で昼ごはんになるが、どうせ、テレビのモーニングショーで見たものにピンときて、パッと出しただけだろう。たまには、苦労してくれよな。そうでないと、感謝の気持ちがわいてこないと言うもんだ。ほんと、全知全能っつうもんは、感謝の念を忘れさせるから良くないわ。
「はあ、食った、食った。昼から七面鳥の丸焼きなんて、ふつー、ないだろ。お、だいぶ、時が流れたな。よしよし、そこそこ知恵がついてきた頃かな。」
のぞいてみると、やってるやってる、争いを。所有権、国境、お金、宗教と、まあ、いつものパターンで争っているよ、こいつら。ごめんねー、不完全に作って。でも、こうでもしないと、俺がつまんなくて死んじゃうんだよ。実際、死なないけど。
あ、一人、達観した奴みーつけた。ふむふむ、へー、こいつの考えている事、当たってんじゃん。名前は篠田っつうのか。こいつ、やばいな。放置しておいたら、人間どもが賢くなって、争いごとをしなくなってしまうな。やばいやばい、ちょっと取り除かないと。神隠し、神隠しっと。
グーグルマップの黄色い人間の如く掴まれた篠田は神にひょいとつままれ、ゴミ箱に捨てられた。
その時、父親が部屋に入ってきて、言った。
「おい、しん、今からみんなで買い物に出かけるから、そんなもん片付けて早く下にこい。」
「ええ、せっかくここまで作ったのに。」
「そんなもん、いつでも作れるだろ。」
「ま、そうだけどー。実際作ると愛着わくんだよ。」
「いいから、いいから。下で待ってるぞ。」
「んー、はーい。」
ぼくは作った宇宙をボンっと畳んだ。ゴホゴホ、素粒子が部屋中に舞う。あとで、ダイソンで掃除しなきゃ。
「しん、まだかー」
「今、行くってー」