ハスカップエキスの抗菌・免疫賦活作用

自然界の観察から色々なものが見いだされてきました。

例えば、植物は、動物と同じく、感染症(細菌、ウィルス、カビなどの真菌)があります。植物は感染源から動いて逃げることはできません。そこで自分たちを護るシステムを作り出しました。その防御システムを観察して人間が医学に応用してきた歴史になります。マラリアの治療薬キニーネもそうです。

 今回、感染症に対して漢方薬の原料(生薬)として有名なスイカズラ科(金銀花など)があり、ハスカップもスイカズラ科になり、ハスカップの源生地で有名な北海道厚真町では、梅干し替わりにおにぎりなどに使われてきた歴史をみますと、感染症に対する基礎研究が有望ではないかと考えて着手しました。

SDGs的な医療の実現に向けて


厚真産ハスカップエキスの抗菌・免疫賦活作用 

 2017年 北海道薬学大会

○中村峰夫1)、牧野利明2)、南 正明3)  1)中村薬局、2)名市大院薬、3)名市大院医

ハスカップLonicera caerulea var. emphyllocalyx は、果実を食用とする低木である。本植物は、生薬の金銀花(花蕾)や忍冬(茎や葉)の基原植物であるスイカズラL. japonicaと同属であることから、ハスカップにも清熱解毒作用がある可能性を考えた。そこで本研究では、咽頭炎や壊死性筋膜炎など多彩な病態を示すA群連鎖球菌Streptococcus pyogenesに対する厚真産ハスカップの果実、葉および茎の各MeOH抽出エキスの抗菌活性と、菌を接種したマウスでの延命活性、消化管免疫賦活活性を評価した。

厚真産ハスカップの果実、葉および茎の各エキスは、in vitroにおける菌の増殖を抑制し、それぞれ抗菌活性を示した。菌をマウス背部の皮下に接種し、各エキスを経口投与しながら飼育して延命率を評価したところ、果実エキスでは有意差は認められなかったが、葉および茎の各エキスで有意な延命作用が認められた。各エキスを含む培地でマウス培養大腸上皮細胞を培養した時、免疫賦活サイトカインの産生が誘導された。いずれにおいても、果実エキスと比較して葉エキスにおいて強い活性が認められた。

本研究の結果、ハスカップの果実だけでなく、葉においても新たな用途が見いだされた。


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